2026年10月1日、国土交通省の「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」が施行されました。ガイドラインという名前ですが、中身は宅建業者が売主へ告げなければならない事項の一覧です。言わなければ宅建業法47条1号に抵触し、業務停止や免許取消し、さらには刑事罰まで届きます。売る側から見れば、これは「契約前に説明されるはずのこと」の目録でもあります。この記事では、ガイドライン本文に並んでいる項目を数え、何が新しくなったのかを整理します。掲載内容は2026年10月7日に国土交通省の公表資料で確認したものです。
先に結論
- ガイドラインの核心は、賃貸借の内容も「相手方等の判断に重要な影響を及ぼす事項」に当たると明示したことです。売買だけの話ではなくなりました。
- 事実不告知に当たる事項として、売買で5項目、賃貸借で15項目が列挙されています。ただし列挙以外は告げなくてよい、という意味ではないと本文が念を押しています。
- 違反すると、指示・業務停止命令・免許の取消しがあり得ます。47条1号違反は79条の2により拘禁刑もしくは罰金刑、またはその両方が科される可能性もあります。
- 「望ましい事項」として、売買価額と賃料の算定根拠の説明、売却代金が賃料の何か月分に相当するかの説明が挙げられています。これは義務ではありません。
- 背景にあるのは相談件数です。本文の注記によると令和4年度116件、令和5年度227件、令和6年度242件、令和7年度214件と推移しています。
対象は「売買と賃貸借が不可分一体」の取引
ガイドラインが対象にするのは、相手方等の居住の用に供されている宅地建物の売買とその賃貸借が契約関係として不可分一体になっており、かつその売買の買主が宅建業者であるもの、または売買を宅建業者が媒介もしくは代理するものです。本文はこの範囲を明記したうえで、注意書きを付けています。
売買と賃貸借の締結時期がずれていても、買主と貸主が同一でなくても、売却後も相手方等がその住宅を借りて住み続けることを目的とするものであれば対象に入る、というものです。契約を2本に分ければ外れる、という読み方はできません。
適用される条文と、その中身
信義を旨とし誠実に業務を行う義務。47条1号の列挙事項を過失により告げない場合でも、31条1項に抵触するおそれがあるとされています。
契約内容を記載した書面の交付義務。売買の買主である宅建業者にも、媒介等をする宅建業者にも適用されます。
判断に重要な影響を及ぼす事項について、故意に事実を告げない行為などの禁止。ガイドラインが具体的な項目を列挙したのはここです。
断定的判断の提供、判断に必要な時間を与えない、威迫するなど、勧誘の仕方そのものを禁じる規定です。
なお、リースバックの賃貸について宅建業者が媒介等をする場合には、その宅建業者に法35条(重要事項の説明等)をはじめ、賃貸の媒介等に通常適用される規定が適用されます。
売買で5項目、賃貸借で15項目が並んでいる
ガイドラインの中心は、47条1号の事実不告知に当たる事項の列挙です。売買と賃貸借に分けて書かれています。
| 区分 | 項目数 | 内容 |
|---|---|---|
| 売買に関する事項 | 5 | 代金以外に授受される金銭の額と目的/契約の解除に関する事項/損害賠償額の予定または違約金に関する事項/買戻し特約の有無と内容/その他相手方等が知らない場合に不利益となりうる事項 |
| 賃貸借に関する事項 | 15 | 当事者の氏名と住所/物件の表示/引渡しの時期/契約の解除/損害賠償額の予定または違約金/天災その他不可抗力による損害の負担/借賃の額と支払の時期・方法/借賃以外の金銭の授受/契約期間と更新/定期借家などの適用を受けるときはその旨/用途その他の利用制限/敷金その他の精算/管理の委託先/租税その他の公課の負担/第三者への譲渡の可能性と賃貸借への影響/修繕費用の負担区分など |
売る側の立場で読むと、この15項目は「売る前に必ず聞いておくこと」のリストになります。特に見落としやすいのが次の2つです。1つは「宅建業者が第三者に物件を譲渡する可能性及びその場合の賃貸借関係への影響」。もう1つは「修繕費用の負担区分」です。どちらも売買契約書には出てこず、賃貸借の条件として決まるため、売却の話ばかりしていると素通りします。

列挙の末尾には、どちらの区分にも「その他の相手方等が知らない場合に不利益となりうる事項」が置かれています。本文も、列挙した事項以外は告知を要しないという意味ではない、と明記しています。さらに、相手方等から関心や質問が寄せられた事項についても、業務上一般に要求される通常の注意を用いて可能な範囲で調査し、告知することが必要だとしています。
違反したときに何が起きるか
ガイドラインは、違反の帰結についても書いています。列挙された事項について事実と異なる説明を行うことや、故意に告げない行為は法47条1号に抵触し、監督官庁からの指示、業務停止命令、免許の取消しを受ける可能性があります。加えて、47条1号に違反した場合は法79条の2の規定により、拘禁刑もしくは罰金刑、またはこれらが同時に科される可能性があるとされています。
47条の2に当たる勧誘をした場合も、指示・業務停止命令・免許の取消しの対象です。禁止される勧誘は本文に10類型が並んでいます。
47条の2で禁じられている勧誘(本文の列挙)
- 利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供すること。
- 将来の環境や交通その他の利便について誤解させるべき断定的判断を提供すること。
- 正当な理由なく、契約を締結するかどうかを判断するために必要な時間を与えることを拒むこと。
- 勧誘に先立って、商号・名称、勧誘を行う者の氏名、勧誘の目的である旨を告げずに勧誘すること。
- 契約を締結しない旨の意思を表示したにもかかわらず、勧誘を継続すること。
- 迷惑を覚えさせるような時間に電話し、または訪問すること。
- 深夜または長時間の勧誘その他、私生活や業務の平穏を害する方法で困惑させること。
- 契約を締結させ、または申込みの撤回・解除を妨げるために威迫すること。
- 申込みの撤回に際し、既に受領した預り金の返還を拒むこと。
- 手付を放棄しての契約解除に際し、正当な理由なく解除を拒み、または妨げること。
「望ましい事項」に書かれた2つが実務では効く
ガイドラインは、法に基づく義務として一律に整理するものではないとしたうえで、可能な範囲で対応することが望ましい事項を2つ挙げています。1つは売買価額および借賃の額の算定根拠に関する事項の説明。もう1つは借賃の額やその他借主が負担することとされた代金と、売却により相手方等が受領する代金との関係に関する説明で、本文はその例として「売却代金が賃料等の何か月分に相当するか等」と書いています。
この2つ目は、リースバックの損得を1行で表す指標です。売却代金を月額賃料で割れば、何か月住めば受け取った代金を払い戻す計算になるかが出ます。ガイドラインの背景説明にも、売主が契約後になって「賃料が高額で支払賃料の合計額が短期間で売却価格を超えることに気付いた」事例が挙げられています。この割り算を自分で先にやっておけば、その気づきを契約前に持てます。
| 売却代金 | 月額賃料 | 何か月分か | 年数に直すと |
|---|---|---|---|
| 1,500万円 | 10万円 | 150か月 | 12年6か月 |
| 1,500万円 | 15万円 | 100か月 | 8年4か月 |
| 2,000万円 | 15万円 | 約133か月 | 約11年1か月 |
| 2,000万円 | 20万円 | 100か月 | 8年4か月 |
表の数字は仕組みを示すための計算例で、実際の査定額や賃料ではありません。自分の見積書の金額で同じ割り算をしてください。ガイドラインは、相手方等の理解促進を図る観点から、告知事項を記載した書面を交付することが望ましいとも書いています。口頭だけで済まされたときは、書面を求める根拠になります。

背景説明には、売主が売買契約の解約を申し出たら高額な違約金を請求された事例も報告されていると書かれています。売買に関する告知事項に「損害賠償額の予定又は違約金に関する事項」が入っているのは、この種の相談が実際にあるためです。契約前に、解除したときにいくらかかるのかを数字で確かめてください。
よくある質問
- このガイドラインはいつから適用されますか。
- 2026年10月1日施行です。本文の表紙に「令和8年10月1日施行版」と記載され、作成は国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課です。
- 何が新しくなったのですか。
- リースバックでは売買の内容だけでなく賃貸借の内容も、相手方等の判断に重要な影響を及ぼす事項に該当すると明示された点です。そのうえで、告げなければ事実不告知に当たる事項が具体的に列挙されました。
- いくつの項目が列挙されていますか。
- 売買に関する事項が5項目、賃貸借に関する事項が15項目です。どちらにも末尾に「その他の相手方等が知らない場合に不利益となりうる事項」が置かれており、列挙以外は告げなくてよいという意味ではないと本文が明記しています。
- 違反するとどうなりますか。
- 監督官庁からの指示、業務停止命令、免許の取消しを受ける可能性があります。47条1号違反については、法79条の2により拘禁刑もしくは罰金刑、またはこれらが同時に科される可能性があるとされています。
- 売却代金が賃料の何か月分かは教えてもらえますか。
- 義務ではありませんが、ガイドラインは「対応することが望ましい事項」として、その説明を挙げています。説明がなければ、受け取る代金を月額賃料で割って自分で確かめてください。
- 契約を売買と賃貸借に分ければ対象外になりますか。
- なりません。本文は、売買と賃貸借の締結時期や、買主と貸主が同一でない場合であっても、売却後も引き続き居住の用に供することを目的とするものは対象になると明記しています。
この記事で確認した一次情報
- 国土交通省「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(リースバックに関するガイドライン)」掲載ページ https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_fr3_000001_00034.html(本文〔令和8年10月施行〕、概要のカラー形式・白黒形式の3点を公開)
- 国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課「リースバックに関するガイドライン」本文(令和8年10月1日施行版) https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/002025410.pdf(対象は居住用宅地建物の売買と賃貸借が不可分一体で買主が宅建業者であるものまたは宅建業者が媒介等するもの、適用は法31条・37条・47条1号・47条の2、事実不告知に該当する事項は売買5項目と賃貸借15項目、47条の2の禁止行為10類型、違反時は指示・業務停止命令・免許取消しと法79条の2の拘禁刑もしくは罰金刑、望ましい事項として売買価額と借賃の算定根拠の説明および売却代金が賃料の何か月分かの説明、相談件数は令和4年度116件・令和5年度227件・令和6年度242件・令和7年度214件)
掲載内容は2026年10月7日に国土交通省の公表資料で確認したものです。表の計算例は仕組みを示すためのもので、実際の査定額や賃料ではありません。個別の契約については、宅地建物取引士の説明と、必要に応じて専門家の確認を受けてください。














