車のリースバックは、いま乗っている自動車を業者に売り、そのままリース契約で借りて乗り続ける仕組みです。まとまった現金が入り、車も手放さずに済む。説明だけを聞くと良いことばかりに思えますが、実際には車検証の「所有者」が自分から相手に移るという一点で、できることが大きく変わります。ここでは道路運送車両法の条文と、国民生活センターがカーリースについて公表している注意喚起をもとに、判断の材料を整理します。
この記事の要点
- リースバックすると車検証の所有者はリース会社になります。使用者は自分のままですが、売る・譲るといった処分はできなくなります。
- 道路運送車両法 第5条は「登録を受けた自動車の所有権の得喪は、登録を受けなければ、第三者に対抗することができない」と定めています。名義の移転は形式ではなく効力の問題です。
- 所有者が変わったときは、新所有者が15日以内に移転登録を申請しなければなりません(第13条)。
- ローン返済中の車は、そのままではリースバックできません。所有権留保が付いていると、車検証の所有者は信販会社や販売店だからです。
- 国民生活センターは2025年9月17日、カーリースについて「原則として中途解約ができず」「多くの場合走行距離等、利用に関する制約がある」と注意を呼びかけています。
- 同センターには「9年後、車が自分のものになると勧誘されカーリース契約をしたが実際は違った」という相談が寄せられています。
所有者が移るということの意味
自動車の所有関係は、車検証の「所有者」欄と「使用者」欄で表されます。リースバックでは、この2つが分かれた状態になります。

道路運送車両法は、登録の効力について次のように定めています。
道路運送車両法 第五条 登録を受けた自動車の所有権の得喪は、登録を受けなければ、第三者に対抗することができない。
売買で所有権が移ったなら、移転登録をしなければ第三者に対して主張できません。そして第十三条第一項は「新規登録を受けた自動車について所有者の変更があつたときは、新所有者は、その事由があつた日から十五日以内に、国土交通大臣の行う移転登録の申請をしなければならない」としています。

実務では、契約後に車検証が新しくなります。手元に届いた車検証の所有者欄を必ず確認してください。ここが変わっていれば、その車はもう自分のものではありません。
ローン返済中の車はそのままでは出せない
「車 リースバック ローン中」で調べる人が多いのですが、答えははっきりしています。ローンに所有権留保が付いている場合、車検証の所有者は信販会社や販売店です。自分は所有者ではないので、単独では売却できません。
所有者欄に自分以外の名前が入っていれば所有権留保が付いています。使用者欄が自分でも、処分の権限はありません。
残債を払い終えたうえで、所有権解除の手続きをして名義を自分に移します。ここまでやって初めて売却できる状態になります。
売却代金で残債を精算する形を提案されることがありますが、条件は業者ごとに違います。精算後に手元に残る額を必ず数字で確認してください。
差額は自分で用意することになります。この状態でリースバックを重ねると、負担だけが増える結果になりかねません。
国民生活センターが挙げている相談事例
リースバック後の状態は、契約としてはカーリースです。国民生活センターは2025年9月17日に「カーリースに関する消費者トラブルにご注意!-カーリースってどんな契約?特徴と注意点-」を公表し、相談件数がここ数年増加傾向にあるとしています。

公表資料には、次のような相談事例が挙げられています。
| 相談事例 | どこで食い違ったか |
|---|---|
| ローンと同じと言われ契約したが走行距離制限や中途解約料があるカーリース契約だった | ローンは購入、リースは賃貸借。契約の種類そのものの誤解 |
| 契約期間内にカーリースの解約を申し出たら突然解約料を請求された | 中途解約が原則できない仕組みを把握していなかった |
| カーリース契約満了後、残価を支払わないと車を受け取れないと言われた | 契約満了時の条件(残価精算の有無)の確認不足 |
| 9年後、車が自分のものになると勧誘されカーリース契約をしたが実際は違った | 払い終われば自分のものになる、という思い込み |
同センターはカーリースの仕組みについて、「カーリース契約は、リース会社が消費者に期間を設けて車を貸し出す形で提供するもの」であり「車の所有者はリース会社になります」と説明したうえで、「原則として中途解約ができず、解約できる場合でも解約料等が生じる、多くの場合走行距離等、利用に関する制約がある等の特徴があります」としています。
4つ目の相談事例が、リースバックでいちばん起きやすい誤解です。もともと自分の車だったので、「払い続ければまた自分のものに戻る」と考えてしまいます。しかしリースは賃貸借です。契約が終わったときにどうなるのかは、契約書の条項でしか決まりません。「戻ってくる」と言われたら、その根拠が契約書のどこに書いてあるかを指し示してもらってください。
デメリットを金額と条件で並べる
| 確認する点 | なぜ効くのか | 契約前に聞くこと |
|---|---|---|
| リース料の総額 | 受け取る売却代金より、支払う総額のほうが大きくなるのが通常 | 月額 × 契約月数はいくらか。売却代金との差はいくらか |
| 中途解約の可否と解約料 | 原則として中途解約ができないとされている | 解約できる場合の条件と、そのときの金額の計算式 |
| 走行距離の制限 | 多くの場合、利用に関する制約がある | 年間の上限距離と、超えたときの精算単価 |
| 契約満了時の扱い | 返却か、残価の精算か、再リースかで結果が変わる | 満了時の選択肢と、それぞれの金額 |
| 事故・故障時の負担 | 所有者が自分ではないため、修理や保険の扱いが変わる | 誰が保険を掛け、誰が修理費を負担するのか |
| 名義変更の時期 | 移転登録は新所有者が15日以内に申請する | いつ車検証が変わるのか。自動車税の負担はどう分けるのか |
比較の基本は住宅のリースバックと同じです。受け取る一時金と、その後に払い続ける総額を並べる。住宅の場合の考え方はリースバックの買取価格はどう決まる?にまとめています。売却額を高くすればリース料も上がるという関係は、車でも変わりません。
また、複数の業者から同じ条件で見積もりを取ることも有効です。手順はリースバックの相見積もりで扱っています。条件をそろえないと、月額の安さだけが目立って総額の差が見えなくなります。
それでも車のリースバックが向く場面
車を手放すと仕事にならない。しかし現金が要る。この2つが同時にあるときに、選択肢としては成立します。
国民生活センターの説明では、税金や点検整備費用等が月々のリース代金に含まれているのがカーリースの特徴とされています。支出を平準化したい場合には合います。
走行距離が多い、車を長く乗り続けたい、いずれ売って乗り換えるつもりがある。いずれもリースの制約と衝突します。
金利を払ってでも借入で済むなら、そのほうが車は自分のものとして残ります。担保のある借入と比べてから決めてください。
自宅を持っているなら、住宅のリースバックや不動産を担保にした借入と比べるほうが、条件は良くなることがあります。判断の順番については住宅ローンが払えないときの選択肢で、返済方法の変更から順に見ていく考え方を整理しています。
よくある質問
ローン中の車でもリースバックできますか
そのままではできません。所有権留保が付いていると、車検証の所有者は信販会社や販売店であり、自分は売却の権限を持ちません。残債を精算して所有権解除をしてからになります。売却代金で残債を精算する提案を受けた場合は、精算後に手元に残る金額を必ず確認してください。
リースバックした車は最後に自分のものになりますか
契約の内容によります。リースは賃貸借なので、払い終わったら自動的に自分のものになるという性質のものではありません。国民生活センターには「9年後、車が自分のものになると勧誘されカーリース契約をしたが実際は違った」という相談事例が寄せられています。契約書の条項で確認してください。
途中でやめられますか
国民生活センターは、カーリースについて「原則として中途解約ができず、解約できる場合でも解約料等が生じる」としています。解約料の計算式を契約前に確認してください。
走行距離の制限はありますか
同センターの説明では「多くの場合走行距離等、利用に関する制約がある」とされています。年間の上限と、超えた場合の精算単価を契約前に聞いてください。
名義はいつ変わりますか
道路運送車両法 第十三条第一項は、所有者の変更があった日から15日以内に新所有者が移転登録を申請しなければならないと定めています。実際に車検証が届く時期は手続きの進み方によります。
自動車税は誰が払いますか
所有関係と契約の定めによります。カーリースでは税金がリース料に含まれる形が一般的とされていますが、切り替えの年度をどう按分するかは契約で決まります。書面で確認してください。
車のリースバックと住宅のリースバックは同じ仕組みですか
売って借り直すという骨格は同じです。違うのは、住宅には宅地建物取引業法にもとづく重要事項説明などの手続きがある点です。住宅の場合にどこまで説明を受けられるかはリースバックの重要事項説明にまとめています。
参照した法令・公的資料
- e-Gov法令検索「道路運送車両法」(昭和二十六年法律第百八十五号)第五条・第十三条
- 国民生活センター「カーリースに関する消費者トラブルにご注意!-カーリースってどんな契約?特徴と注意点-」(2025年9月17日公表)
契約の条件は事業者ごとに異なります。困ったときは消費者ホットライン188、または最寄りの消費生活センターへ相談してください。






