住宅ローンが払えないときの選択肢|返済方法の変更・リースバック・任意売却を順番で判断する

住宅ローンが払えないときの選択肢というタイトルのアイキャッチ画像
編集部作成。

収入が減った、病気で働けない、想定外の支出が続いた。理由はさまざまですが、住宅ローンの返済が苦しくなったとき、最初にすべきことは決まっています。延滞する前に、返済中の金融機関へ相談することです。延滞が始まってからでは、選べる手段が急に少なくなります。ここでは公的機関が公表している制度をもとに、検討する順番と、それぞれの選択肢が何を残して何を失うのかを整理します。

この記事の要点

  • 順番は①延滞前に相談 → ②返済方法の変更 → ③リースバック → ④通常売却・任意売却 → ⑤競売。下に行くほど選択の余地が狭まります。
  • 住宅金融支援機構には返済方法変更のメニューがあり、要件に該当すれば返済期間の延長(最長15年)が可能です。
  • 現に失業中、または収入が20%以上減少した場合は、元金の支払いを一時休止し利息のみを支払う期間(最長3年)を設定できます。
  • 返済期間を延ばすと毎月の返済額は減りますが、返済期間が延びるため総返済額は増えます
  • リースバックは売却代金でローンを完済できることが前提です。残債が売却額を上回る場合は使えません。

検討する順番

選択肢はいくつもありますが、順番があります。上から順に、住み続けられる可能性が高く、失うものが少なくなっています。

住宅ローンが払えないときの検討順を示した図。延滞前の相談、返済方法の変更、リースバック、通常売却・任意売却、競売の5段階
公的機関が公表している制度と一般的な選択肢をもとに整理しています。
延滞してから動くと、選べる手段が減ります。返済方法の変更は「変更後も返済を継続できること」を前提とした制度です。延滞が積み上がるほど、その説明が難しくなります。また、延滞が続けば代位弁済や競売の手続きへ進み、売却の時期も価格も自分では決められなくなります。

返済方法の変更でできること

住宅金融支援機構は「タイプ別返済方法変更メニュー」を公表しています。返済が困難になった事情や、支出が一時的に増える事情に応じて、複数のタイプが用意されています。

住宅金融支援機構のAタイプの要件と、返済期間の延長や元金据置についてまとめた図。年収別の返済負担率の表を含む
住宅金融支援機構「タイプ別返済方法変更メニュー」に記載された内容をもとに作成しています。

Aタイプ(返済期間の延長などにより、返済額を減額)は、次の3つ全てにあてはまる方が対象とされています。

要件 内容
1 離職や病気等の事情により返済が困難となっている
2 年収が機構への年間総返済額の4倍以下/月収が世帯人員×64,000円以下/返済負担率が年収に応じた率を超え、かつ収入減少割合が20%以上、のいずれかに該当する
3 返済方法の変更により、今後の返済を継続できる

2つ目の要件にある返済負担率は、年収の区分ごとに定められています。

年収 300万円未満 300万円以上400万円未満 400万円以上700万円未満 700万円以上
返済負担率 30% 35% 40% 45%

要件に該当する場合、返済期間の延長(最長15年)ができます。さらに、現に失業中の方または収入が20%以上減少した方は、返済期間の延長に加えて、元金の支払いを一時休止し利息のみを支払う期間(最長3年)を設定できます。利息のみを支払う期間中は、金利を引き下げることができる場合があるとも案内されています。

住宅金融支援機構の公式サイトに掲載されたタイプ別返済方法変更メニューのページ。Aタイプの3つの要件と返済負担率の表が表示されている画面
出典:住宅金融支援機構「タイプ別返済方法変更メニュー」。Aタイプの要件、返済負担率、返済期間の延長の上限が記載されています。

Bタイプ(一定期間、返済額を減額)もあります。子どもの進学による教育費、入院による医療費など、一定期間の支出増加が見込まれる場合に、相談のうえ決めた期間内で返済額を減らせる仕組みです。

変更には注意点もあります。毎月の返済額は少なくなりますが、返済期間が延びるため総返済額は増えます。また機構は、返済方法変更の利用にあたり、変更中および変更期間終了後について返済の継続が可能であることを確認するとし、審査の結果、希望に添えない場合もあると案内しています。

売却を検討する段階の3つの道

返済方法を変更しても続かない、あるいは要件に当てはまらない場合、売却が視野に入ります。ここで分かれ道になるのが「残債が売却額で消えるか」です。

選択肢 成立の条件 住み続けられるか 向いている状況
リースバック 売却代金でローンを完済できること。買主と賃貸借契約を結ぶ 賃貸として住み続けられる 引っ越しを避けたい。子の学区や仕事の都合を変えたくない
通常売却 売却代金でローンを完済できること 手放す 住み替えを前提に、価格を優先したい
任意売却 売却額が残債に届かない場合に、債権者の同意を得て売却する 手放す 残債が売却額を上回っている
確認1:残債と相場返済予定表で残債を、査定で売却相場を確認します。この差がどの道を選べるかを決めます。
確認2:家賃を払い続けられるかリースバックは売って終わりではありません。毎月の家賃が、これまでの返済額より高くなることもあります。
確認3:契約の種類賃貸借契約が定期借家か普通借家かで、住み続けられる期間の見通しが変わります。
確認4:買戻しの条件将来買い戻す可能性があるなら、価格と期限が契約書でどう定められているかを確認します。

リースバックは「住み続けられる」点だけが強調されがちですが、成立の前提はローンを完済できることです。残債が売却額を上回る場合、抵当権を外せないため、そのままでは売却できません。まず残債と相場の差を把握してください。

相談の前にそろえておく3つの数字

金融機関でも不動産会社でも、話が具体的に進むかどうかは、手元にある数字で決まります。感覚で「苦しい」と伝えるより、次の3つを出しておくほうが早く結論に近づきます。

1. 残債と毎月の返済額返済予定表に載っています。残りの回数、金利のタイプ、次回の見直し時期もあわせて確認します。
2. 手取り月収と固定費返済負担率の判断に使われます。世帯人員も要件に関わるため、家族構成とあわせて整理します。
3. 自宅の売却相場複数社の査定を取り、幅で把握します。残債との差が、選べる道を分けます。
あわせて確認滞納がすでにある場合は、その回数と金額。督促や催告の書面が届いていれば、日付も控えておきます。

この3つがそろっていれば、返済方法の変更で乗り切れる水準なのか、売却まで踏み込む必要があるのかは、おおよそ判断できます。逆に、数字を出さないまま業者に相談すると、提案が売却前提に偏りやすくなります。順番として、まず返済中の金融機関に相談し、変更の可否を確かめてから、売却の検討に移ってください。

やってはいけないこと

返済が苦しくなったときに、状況を悪化させやすい行動があります。

行動 何が起きるか
連絡を絶つ 延滞が積み上がり、返済方法変更の要件である「返済を継続できる」の説明が難しくなります
高金利の借入で穴埋めする 住宅ローンの返済と新たな返済が重なり、毎月の負担が増えます
相場を調べずに売る 売却額が残債に届かず、任意売却しか選べなくなることがあります
家賃を確認せずリースバックを決める 売却後の家賃が払えず、結局住み続けられなくなります

よくある質問

返済が苦しくなったら最初にどこへ相談しますか

返済中の金融機関です。住宅金融支援機構も、返済方法変更の相談先として、融資を申し込んだ金融機関を案内しています。

返済期間はどれくらい延ばせますか

住宅金融支援機構のAタイプでは、返済期間の延長は最長15年と記載されています。

元金の支払いを止められますか

現に失業中の方、または収入が20%以上減少した方は、元金の支払いを一時休止し利息のみを支払う期間(最長3年)を設定できると案内されています。

返済方法を変更すると総返済額はどうなりますか

毎月の返済額は少なくなりますが、返済期間が延びるため総返済額は増えると明記されています。

残債が売却額より多くてもリースバックできますか

原則できません。売却代金でローンを完済できることが前提になります。差額を自己資金などで埋められない場合は、任意売却の検討になります。

返済方法の変更は必ず認められますか

認められるとは限りません。住宅金融支援機構は、変更中および変更期間終了後の返済継続が可能であることを確認するとし、審査の結果、希望に添えない場合もあると案内しています。

参照した公的情報

民間金融機関の住宅ローンでは、変更できる内容や条件が異なります。個別の判断は、返済中の金融機関および専門家にご確認ください。

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