「セール・アンド・リースバック」という言い方に出会って、自宅のリースバックと同じものなのか迷った方へ。この言葉は宣伝用のキャッチコピーではなく、国税庁が税務の解説で実際に使っている用語です。そして税法には、この形の取引を売買として扱わず、金銭の貸付けがあったものとして扱う場面が書かれています。どういう条件でそうなるのかを、条文と国税庁の解説から確かめます。
先に結論
- セール・アンド・リースバックは、資産を売り、その資産を売った相手から借りて使い続ける取引の総称
- 法人税法第64条の2第2項と所得税法第67条の2第2項は、一連の取引が実質的に金銭の貸借であると認められるときは、売買はなかったものとすると定めている
- その前提になる「リース取引」は、中途解約ができないことと利益も費用も借りた側が負うことの2要件で判定される
- 支払総額が取得価額のおおむね90%を超えるかどうかが、2つ目の要件の目安になる
- 所有権が移転しない土地の賃貸借は、原則としてこの「リース取引」から除かれる
言葉の出どころは、広告ではなく税務の解説にある
国税庁のタックスアンサーNo.5702「リース取引についての取扱いの概要」には、法人が譲受人から譲渡人に対する法人税法上のリース取引による賃貸を条件に資産の売買を行った場合、という説明のあとに、括弧書きで「いわゆるセール・アンド・リースバック取引」と書かれています。つまりこの言葉は、税務の世界で先に定着していた呼び名です。

取引の形そのものは単純です。資産を売って代金を受け取り、同じ資産を買った相手から借りて、賃料を払いながら使い続ける。売買と賃貸が一組になっているところが特徴で、売った側は資産を手放しても使用は続けられ、買った側は資産を取得して賃料を受け取ります。

ここまでは、自宅を売って住み続ける形とよく似ています。違いが出るのは、この取引を税法がどう位置づけるかという点です。売買として扱うのか、それとも実質は資金の融通だったとみるのか。その分かれ目が条文に書かれています。
税法は「売買はなかったものとする」と書いている
e-Gov法令検索で法人税法第64条の2を確認すると、第2項にこうあります。譲受人から譲渡人に対する賃貸を条件に資産の売買を行った場合において、当該資産の種類、当該売買及び賃貸に至るまでの事情その他の状況に照らし、これら一連の取引が実質的に金銭の貸借であると認められるときは、当該資産の売買はなかつたものとし、かつ、当該譲受人から当該譲渡人に対する金銭の貸付けがあつたものとして、所得の金額を計算する。

注目したいのは、判断の材料として「資産の種類」「売買及び賃貸に至るまでの事情」「その他の状況」が並べられていることです。契約書の表題が売買契約書であることや、代金が実際に動いたことだけでは決まりません。そこに至った事情まで含めて、実質で見ると書かれています。
同じ規定は個人にもあります。所得税法第67条の2第2項は、居住者について同じ構造の文言を置いています。法人だけの話ではなく、個人が当事者の場合にも同じ考え方の条文が用意されているということです。ただし、これがそのまま自宅のリースバックに当てはまるかどうかは別の問題で、次の要件を見る必要があります。
前提になる「リース取引」の2要件
先ほどの規定は、賃貸が「リース取引に該当するものに限る」という条件つきです。ではリース取引とは何か。法人税法第64条の2第3項、所得税法第67条の2第3項に定義があり、次の2つの要件のどちらも満たすものとされています。

| 判定の材料 | 条文・解説にあること | どこを見れば分かるか |
|---|---|---|
| 中途解約の可否 | 賃貸借に係る契約が、期間の中途において解除をすることができないものであること、又はこれに準ずるものであること | 契約書の解約条項。中途解約時に残りの賃料相当額を支払う定めがあるかどうかも含む |
| 経済的な利益 | 賃借人が資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受することができること | 使用に関する制約の有無。使い方を自分で決められるか |
| 費用の実質負担 | 資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされていること | 修繕・維持・公租公課の負担区分。契約書の特約欄に書かれていることが多い |
| 支払総額の水準 | 解除できない期間に支払う賃借料の合計額が、取得のために通常要する価額のおおむね100分の90に相当する金額を超えるとき、費用の実質負担に該当する | 賃料の月額×期間と、その資産の価額の比 |
| 土地の扱い | 所有権が移転しない土地の賃貸借その他政令で定めるものは、リース取引から除かれる | 建物と土地のどちらを、どういう条件で借りるのか |
4つ目の「おおむね90%」は、国税庁の解説にも法人税法施行令第131条の2第2項にも同じ水準で書かれています。賃料の総額が資産の値段に近づくほど、実質は買った側が資金を出しただけではないか、という見方に寄っていくという理屈です。逆にいえば、賃料が資産の価額に比べて小さければ、その分だけ判定は変わります。
5つ目の土地の扱いは見落としやすい点です。法人税法施行令第131条の2第1項は、土地の賃貸借のうち、賃貸借期間の終了時または中途に無償もしくは名目的な対価で賃借人に譲渡されるもの、あるいは著しく有利な価額で買い取る権利が与えられているもの、そのいずれにも該当しないものを、リース取引の範囲から除くとしています。買戻しの条件がどうなっているかで、扱いが変わる構造になっています。
自宅のリースバックとの関係をどう考えるか
ここまでが税法の話です。では、個人が自宅を売って住み続ける形は、この規定に当たるのでしょうか。当サイトでは個別の取引について税務上の判定はできません。条文が「資産の種類、売買及び賃貸に至るまでの事情その他の状況に照らし」と定めている以上、契約の中身を見ずに一般論で結論を出すことはできないからです。
そのうえで、比較の軸として整理できることはあります。以下は、法人が行う典型的なセール・アンド・リースバックと、個人の自宅リースバックで、着目される点がどう違うかを並べたものです。
| 見る点 | 法人の資産で語られるとき | 個人の自宅で語られるとき |
|---|---|---|
| 対象になる資産 | 機械設備、車両、店舗や事務所の建物など | 居住している家屋と、その敷地 |
| 関心の中心 | 売買として扱うか、金銭の貸付けとして扱うかという税務処理 | 売却代金の額、住み続けられる期間、家賃、買い戻せるかどうか |
| 賃貸借の形 | 解約できない期間が定められたリース契約 | 定期借家契約が使われることが多く、期間満了で終了する |
| 土地の扱い | 土地の賃貸借は原則としてリース取引から除かれる | 家屋と敷地が一体で動くため、条件の確認が要る |
| 確認する相手 | 顧問税理士、所轄の税務署 | 宅地建物取引業者からの重要事項説明、税務は税理士・税務署 |
並べてみると、同じ言葉で呼ばれていても、気にしている論点がそもそも違うことが分かります。法人の文脈では税務処理が中心にあり、個人の自宅では住み続けられる条件が中心にあります。セール・アンド・リースバックという言葉を見かけたときは、どちらの文脈の話なのかをまず確かめると、読み間違えずに済みます。
契約書一式を持って、所轄の税務署か税理士に確認する。条文の判定は事情まで含めて行われる。
賃貸借契約の種類、期間、更新の可否、賃料、原状回復の負担区分を契約書で確認する。
買戻しの定めがどういう形で置かれているかを確認する。価格と期限が決まっているかで意味が変わる。
よくある質問
セール・アンド・リースバックと、自宅のリースバックは同じものですか。
取引の形は同じ系統で、資産を売って同じ資産を借り続けるという構造は共通しています。ただし「セール・アンド・リースバック」という呼び方は税務の解説で使われてきた用語で、国税庁のタックスアンサーでは法人税の文脈で登場します。自宅のリースバックについて語るときは、住み続けられる条件のほうが主要な論点になります。
なぜ税法は、売買を「なかったもの」とすることがあるのですか。
法人税法第64条の2第2項と所得税法第67条の2第2項は、一連の取引が実質的に金銭の貸借であると認められるときに、売買はなかったものとし、譲受人から譲渡人への金銭の貸付けがあったものとして所得の金額を計算する、と定めています。形式ではなく実質で課税関係を決めるという考え方によるものです。
「おおむね90%」とは何の90%ですか。
解除をすることができないものとされている期間に賃借人が支払う賃借料の合計額が、その資産の取得のために通常要する価額のおおむね100分の90に相当する金額を超えるかどうか、という基準です。超える場合は、資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものに該当するとされます。
土地はリース取引に含まれないのですか。
所有権が移転しない土地の賃貸借その他政令で定めるものは、リース取引の範囲から除かれます。ただし、賃貸借期間の終了時または中途に無償もしくは名目的な対価で譲渡されるもの、あるいは著しく有利な価額で買い取る権利が与えられているものは、この除外に当たりません。買戻しに関する定めの内容によって結論が変わります。
自分の契約がどちらに当たるか、この記事で判断できますか。
できません。条文は資産の種類や取引に至るまでの事情その他の状況に照らして判断すると定めており、契約書の内容を見ずに結論を出すことはできません。税務上の扱いについては、契約書を持って所轄の税務署または税理士にご確認ください。
出典
- 国税庁タックスアンサー No.5702「リース取引についての取扱いの概要(平成20年4月1日以後契約分)」(令和7年4月1日現在法令等。2026年9月10日確認)
- e-Gov法令検索「法人税法(昭和四十年法律第三十四号)」(2026年9月10日に第64条の2を確認)
- e-Gov法令検索「所得税法(昭和四十年法律第三十三号)」(2026年9月10日に第67条の2を確認)
- e-Gov法令検索「法人税法施行令(昭和四十年政令第九十七号)」(2026年9月10日に第131条の2を確認)
条文の引用は該当項からの抜粋で、ただし書きや適用除外は省略しています。この記事は税務上の判定を行うものではありません。個別の取引の取扱いについては、所轄の税務署または税理士にご確認ください。














