リースバックの重要事項説明はどこまで受けられる?宅建業法35条・37条を条文で確認

リースバックの重要事項説明と書かれたアイキャッチ画像。書類と印章のイラスト

リースバックの契約日、テーブルの上には売買と賃貸の書類が一緒に並びます。宅地建物取引士から説明を受けるとき、どこまでが法律で義務づけられた説明で、どこからがそうでないのかは、意外と分かりにくいところです。宅地建物取引業法の重要事項説明は「取得し、又は借りようとしている」人のための制度で、自宅を売る側は売買については説明を受ける立場に当たりません。一方で、売った家に住み続けるあなたは借主でもあります。ここでは条文をそのまま引きながら、どちらの立場で何を受け取れるのかを整理します。

この記事の要点

  • 重要事項説明(第35条)の相手方は「その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物」についての説明を受ける人です。
  • リースバックでは、自宅を売る側は買主ではないため、売買についての重要事項説明を受ける立場に当たりません。
  • ただし売った家に住み続けるので、賃貸については「借りようとしている」人として説明の対象になります。
  • 37条書面は、業者が自ら当事者として契約したときにその相手方(=売主であるあなた)にも交付されます。代金の額・支払時期・引渡し時期・移転登記の申請時期などが記載事項です。
  • 国土交通省はリースバックを「住宅を売却して現金を得て、売却後は毎月賃料を支払うことで、住んでいた住宅に引き続き住むサービス」と定義しています。
  • 同省は契約内容や将来の収支計画についての理解が不十分なまま契約したことを理由とするトラブル事例があるとして、令和4年6月24日にガイドブックを公表しました。

35条は「買う人・借りる人」のための条文

重要事項説明の根拠は宅地建物取引業法 第三十五条です。冒頭の一文に、誰に対する義務なのかが書かれています。

宅地建物取引業法 第三十五条第一項 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者……に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面……を交付して説明をさせなければならない。

e-Gov法令検索で宅地建物取引業法を表示した画面。昭和二十七年法律第百七十六号として条文が表示されている
出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(昭和二十七年法律第百七十六号)。

「取得し、又は借りようとしている」という限定がポイントです。手放す側の保護は、この条文の組み立てには入っていません。同じ構造は、クーリング・オフの規定でも同じです。宅建業者が自ら売主となる売買で買主を守る制度なので、リースバックにクーリング・オフは使えません

リースバックで同じ人が売主と借主を兼ねることを、売買の場面と賃貸の場面に分けて、35条と37条の書面がどう渡るかを整理した図
売買と賃貸で、受け取れる書面と説明の位置づけが変わる。

賃貸については、あなたが説明を受ける側

ここが実務上いちばん大事なところです。売った家に住み続ける以上、あなたは建物の賃貸借の借主になります。借りようとしている人として、重要事項説明の対象になります。

第35条第1項が列挙する事項のうち、賃貸で効いてくるものを挙げます。

説明事項(条文の表現) リースバックで確かめること
当該宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人……の氏名 買主となる業者が本当に所有者になるのか。抵当権が設定されるのか。
代金、交換差金及び借賃以外に授受される金銭の額及び当該金銭の授受の目的 敷金、礼金、保証委託料などの名目と金額。
契約の解除に関する事項 どんなときに賃貸借が終わるのか。業者側から終わらせられる条件は何か。
損害賠償額の予定又は違約金に関する事項 途中で退去した場合の負担。買戻しをやめた場合の扱い。
十一 支払金又は預り金を受領しようとする場合において……保全措置を講ずるかどうか、及びその措置の概要 預けた敷金がどう保全されるのか。

「契約の解除に関する事項」と「損害賠償額の予定又は違約金に関する事項」は、リースバックでいちばん後から問題になりやすい2つです。ここは説明事項として法定されているので、納得できるまで聞いてよい部分だと考えてください。更新のない契約かどうかについては定期借家契約とはで扱っています。

37条書面は売主にも渡る

一方、契約が成立したあとに交付される書面は、売主にも渡ります。宅地建物取引業法 第三十七条第一項は「宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に……遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない」と定めています。リースバック事業者が自ら買主になるなら、売主であるあなたが「その相手方」です。

記載事項(売買の場合)
代金又は交換差金の額並びにその支払の時期及び方法
宅地又は建物の引渡しの時期
移転登記の申請の時期
代金及び交換差金以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、その額並びに当該金銭の授受の時期及び目的
契約の解除に関する定めがあるときは、その内容
損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがあるときは、その内容
十一 種類若しくは品質に関して契約の内容に適合しない場合の担保責任……についての定めがあるときは、その内容
十二 当該宅地又は建物に係る租税その他の公課の負担に関する定めがあるときは、その内容

第十二号の公課の負担は、固定資産税の精算に直結します。引渡し日を境にどう按分するかは契約の定めしだいなので、この欄に書かれているかを確かめてください。計算のしかたはリースバックの固定資産税精算にまとめています。

第十一号の担保責任も見落とせません。売主は個人でも、契約で担保責任をどう定めるかによって、引渡し後に負担が残ることがあります。「定めがあるときは、その内容」という書き方なので、定めがない場合は書面に現れません。書面に何も書かれていないことが、そのまま安全を意味するわけではない点に注意してください。

第三十七条第三項は、この書面を作成したときに宅地建物取引士の記名を求めています。記名がない書面を受け取ったら、その場で確認したほうがいいです。

国土交通省が問題視していること

国土交通省は令和4年6月24日に「住宅のリースバックに関するガイドブック」を公表しました。報道発表には、公表に至った背景がはっきり書かれています。

国土交通省の報道発表資料、住宅のリースバックに関するガイドブックを公表しましたのページ画面。リースバックの定義と公表の背景が表示されている
出典:国土交通省「『住宅のリースバックに関するガイドブック』を公表しました」(令和4年6月24日)。

報道発表では、リースバックを「住宅を売却して現金を得て、売却後は毎月賃料を支払うことで、住んでいた住宅に引き続き住むサービス」と定義したうえで、次のように述べています。「このような取引は、多様なライフスタイルの実現や既存住宅流通市場の活性化、空き家の発生防止等につながるものとして期待される一方で、契約内容や将来の収支計画について、消費者の理解が不十分なままでリースバック契約を締結したこと等を理由としたトラブル事例も見られます」。

問題として名指しされているのは「契約内容」と「将来の収支計画」の2つです。契約内容は35条・37条の書面で追えます。将来の収支計画は書面に出てきません。何年住むつもりで、その間に家賃を総額いくら払うのか。買戻しをするなら、そのときいくら必要なのか。この2つは自分で計算しないと誰も出してくれません。

署名の前に確かめる6点

1. 書面の表題と根拠条文

受け取った紙が売買のものか賃貸のものかを分けます。重要事項説明書には宅地建物取引士の記名があります。

2. 賃貸借の終了条件

第35条第1項第8号の「契約の解除に関する事項」。業者側から終わらせられる条件を具体的に聞きます。

3. 違約金の定め

同項第9号。途中退去や買戻しの取りやめで、いくら負担するのかを金額で確認します。

4. 移転登記の申請時期

第37条第1項第5号。代金の受け取りと登記のどちらが先かは、資金繰りに直結します。

5. 公課の負担

同項第12号。固定資産税をいつから業者が負担するのかを書面で確かめます。

6. 家賃の総額を自分で計算する

月額 × 想定居住年数。買戻しを考えるなら、その価格も加えて比べます。買取価格との関係は別記事で扱っています。

買取価格と家賃はトレードオフの関係にあります。買取価格を高くすれば家賃も上がるのが基本なので、リースバックの買取価格はどう決まる?とあわせて読むと、どこで折り合いを付けるかが見えてきます。複数社に同じ条件で出させる方法はリースバックの相見積もりにまとめています。

よくある質問

売主にも重要事項説明はありますか

売買については、条文上の説明の相手方は「取得し、又は借りようとしている」人です。自宅を売る側は買主ではないため、売買についての重要事項説明を受ける立場には当たりません。ただし賃貸については借主として説明の対象になります。

重要事項説明を受けなくても契約は有効ですか

説明義務は宅地建物取引業者に課された義務です。本記事は条文の建て付けを整理するもので、個別の契約の有効性についての判断は示していません。説明に不安がある場合は、契約前に専門家へ相談してください。

37条書面はいつもらえますか

第三十七条第一項は「遅滞なく」交付するとしています。契約の成立後です。契約前に内容を確認したい場合は、案文の提示を求めることになります。

書面は紙でなければいけませんか

第三十七条第四項・第五項は、相手方の承諾を得て電磁的方法により提供できると定めています。この場合、書面を交付したものとみなされます。

宅建業者ではない相手とのリースバックはどうなりますか

宅地建物取引業法は宅地建物取引業者に義務を課す法律です。相手が宅建業者でない場合、この法律にもとづく説明義務や書面交付義務は生じません。相手が免許を持っているかは事前に確認できます。方法は業者の免許と行政処分歴の調べ方にまとめています。

ガイドブックはどこで読めますか

国土交通省の報道発表資料のページに、別紙としてPDFが添付されています。「【別紙1】住宅のリースバックに関するガイドブック」がガイドブック本体です。

説明の途中で質問してもいいですか

問題ありません。重要事項説明は宅地建物取引士が行うもので、内容を理解してもらうための手続きです。とくに解除と違約金の条項は、後から争いになりやすい部分です。その場で数字を確認してください。

参照した法令・公的資料

この記事は条文と公表資料の内容を整理したものです。個別の契約についての判断は、弁護士や消費生活センターなどへご相談ください。

不動産リースバックランキングはこちら

不動産リースバック無料相談・無料査定。ご相談ください。