不動産リースバックをする際には、不動産リースバック業者の担当者が「現地調査」を行います。「現地調査」をもとに、不動産リースバックの売却額を決定するのですから、重要な作業の一つでもあります。今回は、現地調査の中身について解説します。
目次
不動産リースバックの現地調査とは?
不動産リースバックとは
を言います。
不動産会社的に言えば
というイメージです。
不動産リースバックでも、発生する「不動産売却」という部分で、必ず必要になる手続きが「現地調査」なのです。
「現地調査」は、何をするの?
厳密に言えば「現地調査」というのは、「物件調査」の一部です。
「物件調査」とは
であり
なのです。
不動産リースバックの場合は、買主が不動産リースバック業者になりますが、購入額(売主から見ての売却額)を確定させるためには「物件調査」の情報が必要になるのです。
「物件調査」の中に
- 現地調査
- 法務局調査
- 市役所調査
- 設備関係調査
- その他の特殊専門調査
- 現地照合の調査
- 市場調査
- 取引事例調査
があり、物件への訪問日に「現地調査」を含めて、同時に行われるケースが多いため、「現地調査」と呼ばれることが多いのです。
具体的な「現地調査」の内容は
- 建築図面や登記図面との照合
- 接道状況の確認
- 隣地との境界線の確認
- 隣地との高低差の確認
- 隣地との擁壁の種類
- 上下水道・ガスの種類と宅地内への引き込み状況の確認
- 建物の構造の確認
- 現地から200m以内の嫌悪施設の確認
- ゴミ置場の位置や処理の方法の確認
- 駅、学校、買い物の確認
- 用途地域の確認
- 建物の状況の確認
- 近隣での事件性の聞き込み
など
があります。
不動産リースバックの場合は、問い合わせ段階で、ある程度の「仮査定(買取の可否、買取価格、家賃)」を行ってくれますが、実際に「現地調査」という手順を踏まないと、正式な「査定結果」はでないのです。
「現地調査」をした上で
- いくらで買えるのか?
- いくらの家賃になるのか?
- 買戻し価格はいくらになるのか?
を、担当者が稟議書に起こして、上長、役員に決裁をもらって、最終的な「不動産リースバックの条件提示」となるのです。
不動産リースバックの現地調査の詳細
不動産近代流通センターの「現地調査チェックリスト」から、現地調査で行われるチェックを解説します。
売主の情報
- 氏名
- 住所
- 成年、未成年
- 男女
- 代理人
- 売主と登記名義人の関係(同じ・違う)
土地の所在等
- 所在地、地番、地目、地積
- 実測面積
- 指導免責
- 分筆登記の必要性
- 敷地所在図の必要性
土地の利用形態
- 建物の有無
- 建物所有者(所有者、借地権者、使用賃貸)
- 占有状況
- 借地権売買の場合の詳細
敷地の状況
- 境界標の位置
- 境界の有無
- 堀、柵の接面状況
- 対象物件から見た堀、柵の位置
- 越境物の有無
- 地勢(平地、低地、高台、ひな段、傾斜地、傾斜方位)
- 隣地高低差(同じ、○m高い・低い)
- 路線上部分(無し、有り、○m)
- 日照遮蔽物
- 駐車スペース
道路
- 方位
- 幅員
- セットバック
- 接面(間口)
- 道路と敷地の工程
- 舗装
- 公道・私道
- 私道の場合(所有形態、負担金)
- 道路以外の公共用地(水路など)との接面
生活関連施設(ライフライン)
- 水道(水道の種類、供給者名、井戸)
- 排水(排水の処理、雑排水の処理、雨水の処理、排水枡の位置、管理者名)
- ガス(ガスの種類、供給者名、施設所有者名)
- 電気(電圧、敷地内の電柱)
- その他通信設備等
- 買主に告知すべき事項(周辺環境、日照や通風など生活環境に影響を与える建物、心理的事項:反
- 社会的勢力の事務所・火葬場・葬儀場・墓地・刑務所、 土砂災害や河川の氾濫などの恐れ、建築
- 制限を及ぼす高圧線や災害時の危険性が認知された施設)
交通
- 鉄道(最寄り駅、運行状況、徒歩○分、距離○m)
- バス(運行状況、徒歩○分、距離○m)
- 上記以外の交通手段
住宅環境
- 最寄り商店(無し、有り、徒歩○分、名称)
- 住宅環境(眺望、景観、グレード、騒音、振動)
- 危険・影響を及ぼす施設など(無し、有り、内容、高圧線下)
- 利便施設(医療施設、学校、役所)
- 近隣地特記事項
土地の利用形態等(建物以外)
- 通行路(無し、有り、通行者の氏名、通行権の種類、通行料、通行権の承認)
- 埋設管(他人の埋設管の無し、有り、利用者名、利用者住所、埋設する権利の種類、利用料、埋設する権利の承継)
- その他(車置き場、資材置き場、耕作、占有者の権利、占有者の氏名、住所、占有者と売主との関係、明け渡しの承諾書)
敷地の状況等
- 造成地等(無し、有り、廃棄物などにによる埋立、沼地などの埋立、盛土、切土)
- 法地(無し、有り、○m高い・低い、幅、傾斜、敷地全体に占める割合)
- 擁壁(無し、有り、石垣・コンクリート・間知石、擁壁の高さ、擁壁はらみ、目地コンクリート亀裂、水抜き穴)
- その他(庭木・庭石・浸水歴・旧基礎・旧井戸・旧浄化槽の埋め戻し)
出典:株式会社大阪屋
ここまで徹底的に現地調査をするのです。
この現地調査リストを埋めることと、それ以外の情報として
役所調査:近隣の役所
- 道路調査(私道、公道、通行権の有無)
- 用途区域
- 建蔽率
- 容積率
- 防火規制
- 高度地区
- 日陰規制
- その他の条例などの確認
法務局調査:登記事項証明書の取得
- 所在
- 地番
- 地目
- 地積
- 所有権
- 抵当権
市場調査:近隣の不動産会社
- 周辺相場の確認
- 取引事例の確認
- 流通状況の確認
- 該当物件のヒアリング
売主へのヒアリング、建物内の調査
- 雨漏り(雨漏りの有無、雨漏りの箇所、現在の状況)
- シロアリ被害(シロアリ被害の有無、過去のシロアリ被害の状況、現在の状況)
- 腐食(有無)
- 給排水の故障(有無)
- 建物の傾き(有無)
- 増改築(有無、増改の日付、増改築をした業者名)
- 火災被害(有無、日付)
- 境界標の有無(有無、境界標のない箇所)
- 越境の有無(有無、場所、状況)
- 配管の状況(第三者敷地の利用、第三者の配管埋設)
- 地盤沈下、軟弱等(有無、状況)
- 付帯設備の名称(インターホン、ドアチャイム)
- 付帯設備の有無、備考
- 屋内照明器具
- 屋外照明器具
- 食器棚(造付)
- つり戸棚
- 床下収納
- 下駄箱
- 網戸
- 雨戸
- 戸・扉
- 畳・ふすま
- 障子
- TVアンテナ
- カーテンレール
- カーテン
- 物干し
- 住宅用火災警報器等
- 物置
- 庭木・庭石・灯ろう
- 門・塀・フェンス・垣根
- 車庫・カーポート
- 特定保守製品
- 駐車場
- 避難通路
不動産リースバックの現地調査の注意点
知っている情報は、誠実に包み隠さずにに話す
売主(不動産リースバックを利用する方)は、買主(不動産リースバック業者)に対して、目的不動産の品質について説明義務が発生しおます。
これは
民法で定められる信義誠実の原則(信頼を裏切らず誠実に行動しなければならないという原則)
に基づくものです。
通常の不動産売却とは違って、不動産リースバックの場合は
になるため、少しでも、疑念を持たれて、査定額を下げられないためには、誠実にウソをつかずに、知っていることを丁寧に話す必要があるのです。
とくに「瑕疵」は、なかなか言いにくい部分ですが、隠している方が査定に響く可能性がります。
- 物理的瑕疵:雨漏り、シロアリ、家の傾き、土地の土壌汚染
- 法律的瑕疵:法令等の制限
- 心理的瑕疵:自殺、事件、火災、自己
- 環境的瑕疵:近隣からの騒音、振動、異臭、日照障害
不動産リースバックの現地調査のよくある質問
現地調査によって、仮査定の条件と変わることはあるの?
当然、あります。
仮査定は、机上査定とも呼ばれ、机の前だけで取得できる情報のみで査定する「概算」です。
前述した通りで、「現地調査」では、様々な角度からチェックをするため
仮査定(机上査定)の段階では見つからなかったマイナスポイントがあった場合
のです。
理論上は、仮査定の買取額額よりも、現地調査をして価格が上がる可能性もあるのですが、多くの場合は、仮査定の買取額額よりも、正式な条件提示で買取額が下がってしまうことが多いのです。
現地調査によって、マイナスのポイントが見つかることが多いからです。
現地調査によって、プラスのポイントが見つかっても、仮査定を提示して、現地調査に進んでいるのですから、不動産リースバック業者は、あえて買取額を上げる必要はなく、仮査定と同額で条件提示することが多いのです。
現地調査の前に、掃除をして、きれいにしておく必要はあるの?
ありません。
不動産リースバックの場合は、「住み続ける」ことが前提となります。
また、退去した場合には「解体され、不動産リースバック業者が土地を売却する」というのが一般的な考え方です。
不動産リースバックの現地調査前にすべきこと
住宅ローン残高証明書の取得
不動産リースバックをする段階で、住宅ローンが残っている方の場合は、住宅ローン残高の残高証明書を取得しておくと良いでしょう。
不動産リースバック業者が買取をする場合には、その買取額で住宅ローンを完済し、抵当権を外すことになるため、正確な住宅ローンの残高(残債)を不動産リースバック業者から聞かれるのです。
そのときに住宅ローンの残高証明書があれば、話は早いので、査定がスムーズに進むことになります。
書類の有無の確認
「現地調査」では、いろいろとヒアリングがありますが、物件に関する情報を完全に把握できている方は、ほとんどいません。
売主側も知らない情報が多いのです。
そうなると、助けになるのは「建設時」「物件取得時」に入手した書類です。
戸建て物件の場合
- 土地の実測図
- 土地の境界が確認できる資料
- 越境の覚書(あれば)
- 建物の設計図書(確認申請図または竣工図等の建物図面)
- 建築確認申請書および建築確認済証
- 検査済証
マンションの場合
- 分譲時のパンフレット
- 管理規約
- 使用細則
査定にプラスになる書類
- 建物状況調査の結果報告書
- 既存住宅に係る建設住宅性能評価書
- 耐震診断結果報告書
- 瑕疵保険の保険付保証明書
- 建築士法第20条第2項に規定する証明書(構造計算書)の写し
- 耐震基準適合証明書の写し
- 住宅耐震改修証明書の写し
- 固定資産税減額証明書の写し
- 増改築等工事証明書の写し
などがあると、「現地調査」がスムーズにいきますし、不動産リースバック業者にとっての不明点がクリアになれば、安心して物件の売却に進めるのです。
リフォーム・修繕履歴の確認
戸建て物件の場合は、リフォームや修繕、メンテナンスをしている物件ほど、価値が上がります。
- いつ、どんな形でリフォームやシロアリ予防、外壁塗装などを行ったのか?
しっかりまとめておいて、伝えると良いでしょう。
土地の境界、利用履歴の確認
前述した通りで、不動産リースバックの現地調査では、「境界」に関するチェック項目が多く設定されています。
これは、隣地の方とのトラブルが多く発生するからです。その疑念を払しょくするためには、できるだけ正確に土地の利用歴、近隣との関係、境界・越境の扱いなどの情報を集めておく必要があります。
複数の不動産リースバック業者に依頼しておく
「現地調査」のときに、不動産リースバック業者の担当者とはじめて、顔合わせするかと思いますが、このときに
と、一言、言えるだけで
担当者は、内心
「他はどのくらいの提示をしているのだろうか、少しでも高く査定額を設定して、うちに決めたい。」
と思うはずです。
まとめ
不動産リースバックの現地調査とは
- 買主である不動産リースバック業者自身が不動産の査定を正確に行うために必要な作業
です。
不動産リースバックを利用する方が「現地調査」に対して、できることは少ないのですが、できるだけ自宅の情報を集めたうえで、誠実に答えることが重要です。
都合の悪い情報を隠していると、疑念を持たれないように誠実に対応しましょう。