親の自宅をリースバックにして、介護費用に充てたいという相談があります。親に成年後見人が就いている場合、この売買は後見人の判断だけでは進められません。家庭裁判所の許可が先に要ります。
2026年10月14日にe-Gov法令検索で民法の条文を確認し、リースバックのどの部分が許可の対象になるのか、保佐・補助では扱いがどう変わるのかを整理しました。
居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が要ります。民法第859条の3は「成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない」と定めています。
リースバックは、この条文に2回当たります。自宅を売る行為が「売却」に、売ったあとに同じ家を借りる行為が「賃貸」に該当するためです。
順番を逆にできません。許可を得てから契約する形になります。契約してから許可を求める進め方は想定されていません。
保佐の場合は条文が変わります。民法第13条第1項第3号は「不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為」について、被保佐人が保佐人の同意を得なければならないとしています。
住まいを失う重さが制度の前提です。居住用不動産だけが特別に扱われているのは、本人の生活の基盤に直結するからです。
民法859条の3が挙げている4つの処分
条文は、許可が必要になる処分を具体的に並べています。売ることだけが対象ではありません。
| 処分 | リースバックでの場面 |
|---|---|
| 売却 | 自宅を買主へ売る部分がこれに当たる |
| 賃貸 | 売ったあと同じ家を借りて住み続ける部分がこれに当たる |
| 賃貸借の解除 | 住み続けていた賃貸借を途中でやめるときに当たる |
| 抵当権の設定 | 自宅を担保に入れて借りる場合に当たる |
| これらに準ずる処分 | 上の4つに準じる行為も対象に含まれる |
対象は「その居住の用に供する建物又はその敷地」です。建物だけでなく敷地も含まれるため、土地と建物の名義が分かれている場合も、居住に使っている限り両方が対象になります。

リースバックは売却と賃貸の両方が対象になる
通常の売却なら、許可の対象は「売却」の1点です。リースバックは売ったあとに同じ家を借りるので、売買契約と賃貸借契約の2つがセットになります。条文が「売却」と「賃貸」を並べて挙げている以上、どちらも許可の範囲に入ります。
この点は、リースバックを「売るだけの取引」と見てしまうと落とします。家庭裁判所へ説明するときは、売買の条件と賃貸借の条件の両方を示す必要があります。売買の価格だけが妥当でも、売ったあとの賃料が本人の収入で払えなければ、生活の基盤を確保したことになりません。条文が売却と賃貸を同じ列に並べているのは、住まいを手放す場面では両方がそろって初めて本人の利益を判断できるからだと読めます。
契約を先に結んでから許可を求める進め方は取れません。民法第859条の3は、処分をするには家庭裁判所の許可を得なければならないと定めています。
買主や仲介業者から「先に契約を」と促されても、後見人が就いているなら許可の審判が先です。日程を詰めるときは、この順番を前提に組んでください。
保佐・補助では条文が変わる
成年後見には後見・保佐・補助の3つの類型があります。居住用不動産の処分に許可が要るという規定は後見人についてのものですが、保佐でも不動産の処分には関与が必要です。
| 類型 | 条文 | 定めていること |
|---|---|---|
| 後見 | 第859条の3 | 居住用不動産の売却・賃貸・賃貸借の解除・抵当権の設定等に家庭裁判所の許可が要る |
| 保佐 | 第13条第1項第3号 | 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為には、保佐人の同意が要る |
| 保佐(その他の行為) | 第13条第2項 | 家庭裁判所は、請求により、同項各号以外の行為にも保佐人の同意を要する旨の審判ができる |
第13条第1項は、ほかにも「元本を領収し、又は利用すること」「借財又は保証をすること」「訴訟行為をすること」「相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること」「新築、改築、増築又は大修繕をすること」「第602条に定める期間を超える賃貸借をすること」などを並べています。不動産の売買は第3号に当たるため、被保佐人が自分で契約する場合でも保佐人の同意が必要です。
後見と保佐では、関与の形そのものが違います。後見では成年後見人が本人に代わって契約し、そのうえで家庭裁判所の許可が要ります。保佐では被保佐人本人が契約し、そこに保佐人の同意が加わります。誰が契約の当事者になるのかが変わるため、契約書の署名欄の作り方も変わります。
進め方の順番
許可が要ることが分かったら、実務の順番は決まります。買主探しと並行して進めると、条件が固まらないまま申立てをすることになり、かえって時間がかかります。
成年後見人が就いている場合のリースバックの順番
- 本人の住まいが「居住の用に供する建物又はその敷地」に当たるかを確認する。入院中・施設入所中でも、戻る予定があるなら居住用として扱われる余地がある。
- 売買の条件と、売ったあとの賃貸借の条件を両方まとめる。賃料、契約の種類、期間を決めておく。
- 家庭裁判所へ居住用不動産の処分についての許可を申し立てる。
- 許可の審判を得てから、売買契約と賃貸借契約を結ぶ。
- 登記と引渡しを進める。
本人に判断能力があるうちは、本人の意思で契約できます。
ただし、判断能力が不十分な状態での契約は、あとから争いになることがあります。
後見人でない家族には代理権がありません。名義人本人か、権限のある後見人が契約の当事者になります。
委任状だけで進めると、権限の有無が問題になります。
任意後見契約の内容によって、できる行為の範囲が変わります。
契約書に何が書かれているかを先に確認してください。
申立ての前に整理しておくこと
- 本人の住まいが居住用に当たるか。建物とその敷地の両方が対象になる。
- 売買の価格が妥当か。周辺の取引事例や公的な価格と並べて説明できる形にする。
- 売ったあとの賃料がいくらか。本人の収入と資産で払い続けられるかを示す。
- 賃貸借が普通借家か定期借家か。住み続けられる期間が変わる。
- 売却代金の使いみち。介護費用や施設費用など、本人の利益になる使い方を示す。
成年後見とリースバックについてよくある質問
成年後見人がいると自宅を売れませんか
売れないわけではありません。民法第859条の3により、家庭裁判所の許可を得れば処分できます。許可を得ずに行うことができないという定めで、禁止ではありません。
リースバックのどの部分に許可が要りますか
売買と賃貸借の両方です。条文は「売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分」を並べており、リースバックは売却と賃貸の2つに当たります。
敷地だけ、建物だけでも対象ですか
条文は「その居住の用に供する建物又はその敷地」としています。建物と敷地のどちらも対象です。名義が分かれていても、居住に使っている限り許可の対象になります。
保佐人の場合はどうなりますか
民法第13条第1項第3号により、不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為には保佐人の同意が必要です。家庭裁判所は第13条第2項の審判により、同項各号以外の行為についても同意を要する旨を定めることができます。
契約してから許可をもらうことはできますか
想定されていません。条文は処分をするには許可を得なければならないとしています。買主や仲介業者の都合で順番を入れ替えないでください。
本人が施設に入っている場合も居住用ですか
条文は「その居住の用に供する建物又はその敷地」とだけ定めており、入所中かどうかで一律に線を引いてはいません。戻る可能性や住民票の所在などを踏まえた判断になるため、申立ての前に家庭裁判所へ確認してください。
この記事で確認した一次情報
e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)第859条の3・第13条:laws.e-gov.go.jp
名義や同意が問題になる場面は共有名義の家はリースバックできるかで、売れる状態かどうかの確かめ方は家のリースバックは売れる状態かで決まるで扱っています。














