リースバックの手続きの流れと書類|宅建業法37条が定める売買13項目・賃貸3項目を条文で確認

査定から決済まで5段階を横に並べ、重要事項説明と契約の2つを強調した図

リースバックの手続きが分かりにくいのは、1つの取引に見えて、実際には売買と賃貸という別々の契約が同時に動くからです。交付される書面も2種類あり、法律が書くべき事項をそれぞれ定めています。何を渡されるはずなのかを先に知っておけば、受け取った書面が足りているかどうかを自分で確かめられます。

先に要点

  • 動く契約は2本です。自宅の売買契約と、売った後に住み続けるための賃貸借契約。
  • 宅地建物取引業法37条は、売買について13号にわたる記載事項を、貸借について3つの事項を定めています。
  • 書面には宅地建物取引士の記名が必要です(同条3項)。
  • 登記申請書に添付する書面は原本の添付が原則で、住民票の写し等もコピーは不可と法務局が案内しています。

手続きは5つの段階に分かれる

会社によって名称は違いますが、順序はおおむね共通しています。売買と賃貸の条件が同時に固まる段階があるのが、通常の不動産売却との違いです。

1

査定

物件の情報を伝え、買い取り価格の見込みを出してもらいます。訪問による現地確認が入ることもあります。

2

条件の提示

買い取り価格だけでなく、賃料、契約の種類と期間、買戻しの可否と価格まで提示を受けます。ここが比較の材料になります。

3

重要事項説明

宅地建物取引業法35条に基づく説明です。宅地建物取引士が行います。

4

売買契約と賃貸借契約

2本の契約を結びます。37条書面はそれぞれについて交付されます。

5

決済・所有権移転登記・引渡し

代金の受領と同時に登記を申請します。住み続けるため物理的な引越しはありませんが、所有権は移ります。

段階2でどこまで数字が出てくるかが、その会社の姿勢を測る材料になります。買い取り価格だけ先に示して、賃料と契約期間を後から出す進め方は、比較が効かなくなります。

売買契約で交付される書面には何が書かれるか

宅地建物取引業法37条1項は、宅地建物取引業者が売買に関し契約を締結したときに、遅滞なく交付しなければならない書面の記載事項を列挙しています。

e-Gov法令検索に表示された宅地建物取引業法第37条の条文。売買の記載事項と貸借の記載事項が並んでいる
出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(昭和二十七年法律第百七十六号、令和8年4月1日施行の現行条文。2026年9月17日に表示を確認)。
号 記載事項 リースバックで見る点
一・二 当事者の氏名・住所、宅地または建物を特定するための表示 契約の相手方が誰かを確かめます
二の二 既存の建物のとき、構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項 中古住宅では記載の有無を見ます
三 代金の額、支払の時期および方法 一括か分割か、いつ入るか
四・五 引渡しの時期、移転登記の申請の時期 住み続ける場合でも登記は移ります
六 代金以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、額・時期・目的 事務手数料などがここに出ます
七 契約の解除に関する定めがあるときは、その内容 どんなときに解除されるか
八 損害賠償額の予定または違約金に関する定めがあるときは、その内容 途中でやめた場合の負担
九 金銭の貸借のあっせんに関する定めがある場合、成立しないときの措置 買戻しの資金を紹介される場合に効きます
十 天災その他不可抗力による損害の負担に関する定めがあるときは、その内容 災害時に誰が負担するか
十一 契約不適合責任または保証保険契約の締結その他の措置についての定めがあるときは、その内容 売主側の責任の範囲
十二 租税その他の公課の負担に関する定めがあるときは、その内容 固定資産税の精算方法

六号と八号は、リースバックでは特に効いてきます。名目が何であれ、代金以外に払う金銭は定めがあれば書面に書かれます。書面に無いのに請求される費用があれば、その場で根拠を尋ねる材料になります。

賃貸借契約の書面は3つの事項

同じ37条の2項は、貸借について交付する書面の記載事項を定めています。売買の書面より短く、次のとおりです。

一 前項第一号、第二号、第四号、第七号、第八号及び第十号に掲げる事項
二 借賃の額並びにその支払の時期及び方法
三 借賃以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、その額並びに当該金銭の授受の時期及び目的

宅地建物取引業法第37条第2項

二号の「借賃の額並びにその支払の時期及び方法」が、住み続けるコストそのものです。三号の「借賃以外の金銭」には、更新料や再契約料に相当するものが入り得ます。

ここで条文に出てこないものがあります。契約の種類(普通借家か定期借家か)と期間は、37条2項の列挙にありません。住み続けられる年数を左右する最重要の条件が、この書面の法定記載事項の外にあるということです。契約書本体で確かめる必要があります。詳しくは定期借家契約とはと普通借家と定期借家の違いを参照してください。

なお37条3項は、交付すべき書面を作成したときは宅地建物取引士に記名させなければならないと定めています。4項と5項では、相手方の承諾を得たうえで電磁的方法により提供できることも定められています。この場合は書面を交付したものとみなされます。

登記で用意する書類の考え方

所有権の移転登記は司法書士が代理するのが通常ですが、添付する書面のルールは法務局が公開しています。

法務局の「不動産登記の申請書様式について」のページ。登記申請書に添付する書面は原本の添付が原則という注意事項が赤字で書かれている
出典:法務局「不動産登記の申請書様式について」(更新日2026年1月7日。2026年9月17日に表示を確認)。

原本が原則

添付書面は原本の添付が原則で、住民票の写し等もコピーは不可と明記されています。

還付できるものとできないもの

申請人が原本を保管する必要があるものは還付を請求できますが、登記申請のためだけに作成した委任状や登記原因証明情報、印鑑証明書等は還付できません。

個人番号は載せない

個人番号の記載がない住民票の写し等を添付するよう案内されています。

還付を受けたい書類がある場合は、コピーに「原本に相違ありません。」と記載し、申請書に押印した人が署名(記名)押印したうえで、原本と一緒に提出します。2枚以上になるときは、各用紙のつづり目ごとに契印が必要です。

申請書はA4の用紙を使い、他の添付情報と一緒に左とじで提出します。紙質は長期間保存できる丈夫なものにするよう案内されています。書面申請とオンライン申請の2つの方法があることも同じページに書かれています。

段階ごとに確認しておくこと

段階 確かめること 根拠・参照先
条件提示 買い取り価格・賃料・契約の種類と期間・買戻しの可否と価格が同時に出ているか 同じ様式で複数社から取る
重要事項説明 宅地建物取引士が説明しているか 宅地建物取引業法35条
売買契約 代金以外の金銭、解除、違約金、公課の負担が書面にあるか 同法37条1項六号・七号・八号・十二号
賃貸借契約 借賃の額・時期・方法、借賃以外の金銭の定め 同法37条2項二号・三号
契約書本体 普通借家か定期借家か、期間は何年か、再契約の条件 37条2項の列挙外なので契約書で確認
登記 添付書面の原本、還付の要否 法務局の案内

相見積もりの取り方は同じ条件で出させる手順にまとめました。契約前の説明の範囲は重要事項説明をどこまで受けられるかで条文から確認できます。

この記事で確認できなかったこと

  • 査定から決済までの標準的な日数。会社によって案内が異なり、共通の基準はありません。
  • 司法書士報酬と登記費用の総額。事務所と物件によって変わります。
  • 賃貸借契約書に必ず盛り込まれる条項の一覧。法定の記載事項は37条2項のとおりですが、実際の条項は契約ごとです。
  • 電磁的方法による提供の実際の運用。国土交通省令で定めるものとされており、個別の会社の対応は確認していません。

よくある質問

契約は何本結びますか

売買契約と賃貸借契約の2本です。37条書面はそれぞれについて交付されます。

書面は誰が作りますか

宅地建物取引業者が交付します。作成したときは宅地建物取引士に記名させなければならないと37条3項が定めています。

賃料は書面に書かれますか

書かれます。37条2項二号が「借賃の額並びにその支払の時期及び方法」を記載事項としています。

契約期間は書面で分かりますか

37条2項の列挙に契約の種類と期間は含まれていません。賃貸借契約書の本体で確認してください。

登記の書類はコピーでよいですか

法務局は、登記申請書に添付する書面は原本の添付が原則で、住民票の写し等もコピーは不可と案内しています。

参照した一次情報

条文と案内は2026年9月17日に表示を確認したものです。法令と様式は改正されます。契約と登記の前に、リンク先の最新の記載と、宅地建物取引士・司法書士の説明を確認してください。

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