リースバックで困ったとき、いきなり弁護士に依頼するのが最短とは限りません。取引の苦情、法令違反の疑い、契約の一般的な不安、権利義務の争いでは、それぞれ別の窓口が法律で用意されています。費用がかからない順に使える窓口もあります。ここでは、どの状況でどこへ行くのかを、宅地建物取引業法の条文と、国民生活センター・法テラスの公表内容で整理します。弁護士費用の相場は事務所ごとに違い、公表された全国の数字が無いため書きません。
この記事の要点
- 相手が宅地建物取引業保証協会の社員なら、取引の苦情は協会が受け付けて調査する義務を負います(宅建業法64条の5第1項)。
- 取引で生じた債権については、協会の認証を受けたうえで弁済業務保証金から弁済を受ける道があります(64条の8第1項・2項)。
- 相手が協会の社員かどうかは、契約が成立するまでに説明される事項です(35条の2)。
- 法令違反の疑いは免許行政庁へ。国土交通大臣または都道府県知事は指示や1年以内の業務停止を命じることができます(65条)。
- 契約全般の不安は消費生活センター。消費者ホットライン188で最寄りの窓口につながります。
- 明渡し・買戻し・賃料のように権利義務そのものが争いになっている段階が、弁護士の出番です。費用面では法テラスの無料法律相談と立替制度があります。
相談先は「何を解決したいのか」で決まる
同じ「リースバックで困っている」でも、求めている結果は違います。説明が足りないので調べてほしいのか、業者の行為を行政に見てほしいのか、いま起きている請求や明渡しを止めたいのか。窓口はそれぞれ別です。
| 困っていること | まず行く先 | 根拠・位置づけ |
|---|---|---|
| 説明と違う、話が通じない | 宅地建物取引業保証協会(相手が社員の場合) | 苦情の解決。協会は相談に応じ、事情を調査し、社員に迅速な処理を求める義務を負う(宅建業法64条の5第1項) |
| 取引で損害が生じた | 同協会の認証を受けて弁済業務保証金から弁済を受ける | 宅建業法64条の8第1項・2項 |
| 法令違反ではないか | 免許行政庁(国土交通大臣または都道府県知事) | 指示処分・1年以内の業務停止(宅建業法65条1項・2項) |
| 契約の内容が不安、どこに聞けばよいか分からない | 消費生活センター(消費者ホットライン188) | 消費生活全般の苦情・問合せを専門の相談員が受け付ける |
| 明渡しを求められた、買戻しを断られた、賃料を上げられた | 弁護士 | 権利義務の主張と交渉・訴訟。法テラスの無料法律相談と費用の立替制度がある |
| 返済が行き詰まっている | まず金融機関、並行して弁護士・司法書士 | 返済条件の変更、任意売却など選べる手段が残っているかで変わる |
トラブルが起きやすい時点は契約の前後に偏っています。どの段階で何を確かめておけば避けられたのかはリースバックのトラブルは4つの時点に固まるにまとめました。同種の相談がどんな形で持ち込まれているかは、2026年8月に公表された3つの相談事例が具体的です。
取引の苦情には、法律上の受け皿がある
宅地建物取引業者の多くは、営業保証金を供託する代わりに宅地建物取引業保証協会の社員になっています。この協会には、取引の相手方からの苦情を受ける義務が条文で課されています。
宅地建物取引業法 第六十四条の五第一項(苦情の解決) 宅地建物取引業保証協会は、宅地建物取引業者の相手方等から社員の取り扱つた宅地建物取引業に係る取引に関する苦情について解決の申出があつたときは、その相談に応じ、申出人に必要な助言をし、当該苦情に係る事情を調査するとともに、当該社員に対し当該苦情の内容を通知してその迅速な処理を求めなければならない。
協会は必要があると認めるときは、社員に対して文書または口頭の説明や資料の提出を求めることができ(同条2項)、社員は正当な理由がある場合でなければこれを拒めません(同条3項)。当事者どうしで話が止まっているときに、第三者が事情を調べる仕組みがここにあります。
損害が生じている場合は、その先があります。協会の社員と宅地建物取引業に関し取引をした者は、その取引により生じた債権について、弁済業務保証金から弁済を受ける権利を持ちます(64条の8第1項)。ただし権利を実行するには、弁済を受けることができる額について協会の認証を受ける必要があります(同条2項)。自動的に支払われるものではありません。
この仕組みが使えるかどうかは、相手が協会の社員であるかによります。宅建業法35条の2は、契約が成立するまでの間に、協会の社員である旨と協会の名称・住所・事務所の所在地、供託所とその所在地を説明するようにしなければならないと定めています。契約書類の中にこの記載があるかを先に見てください。社員でなければ営業保証金を供託した供託所の説明になります。
法令違反の疑いは、免許を出した役所へ
宅地建物取引業者を監督するのは、免許を出した国土交通大臣または都道府県知事です。業務に関し取引の関係者に損害を与えたとき、またはそのおそれが大きいとき、取引の公正を害する行為をしたときなどには、必要な指示をすることができます(65条1項)。指示に従わない場合などには、1年以内の期間を定めて業務の全部または一部の停止を命じることができます(65条2項)。
ここに持ち込むのは「自分の損害を回復してほしい」ではなく「この業者の行為を見てほしい」という申し出です。免許番号と行政処分歴は国のサイトで確認できるので、相談の前に相手の免許がどこの誰から出ているかを調べておくと話が早く進みます。免許番号の読み方と、5年分の処分を検索する画面の場所は免許と行政処分歴の調べ方にまとめてあります。
どこに聞けばよいか分からない段階は、消費生活センター
まだ争いになっておらず、契約の内容や進め方に不安がある段階なら、消費生活センターが入口になります。国民生活センターは、消費生活センター等では消費生活全般に関する苦情や問合せを専門の相談員が受け付け、公正な立場で処理にあたっていると説明しています。

全国共通の窓口が消費者ホットライン188です。土日祝日に都道府県等の消費生活センター等が開所していない場合は、国民生活センターに電話がつながります(一部地域や年末年始、建物点検日を除く)。IP電話など一部の電話からはつながりません。188に電話しても都道府県や政令市の窓口が話中でつながらない場合には、国民生活センターのバックアップ相談の電話番号がアナウンスされます。バックアップ相談の受付時間は平日10時から16時まで(土日祝日、年末年始を除く)で、電話番号は03-3446-0999です。来訪や文書での相談は受け付けていません。
弁護士に相談する段階
権利義務そのものが争いになっていて、相手に対して主張をぶつける必要がある段階が弁護士の出番です。リースバックでは次のような形になります。
明渡しを求められている
争点普通借家なら更新拒絶に正当の事由が要ります。定期借家なら、書面での契約と事前説明書面がそろっていたかで結論が変わります。
確かめる契約書の種類、事前説明書面の有無、終了通知が届いた日。
賃料の増額を通告された
争点借賃増減請求は将来に向かってのみ効力を持ちます。協議が調わない間は、請求を受けた側が相当と認める額を払えば足ります。
確かめる増額しない特約の有無、定期借家なら賃料改定の特約の有無。
買戻しを断られた
争点買戻しの約束がどの法的な形で結ばれていたか。再売買の予約なのか、民法の買戻し特約なのかで、行使できる期間も条件も変わります。
確かめる契約書のどの条項に書かれているか、行使の期限と価格の定め方。
家賃を滞納してしまった
争点滞納が続くと、正当の事由を要しない形で契約を終わらせられる場面に入ります。時間の余裕が最も少ない類型です。
確かめる滞納の月数、催告が届いているか、その期限。
それぞれの条文の中身は、定期借家契約とは、買戻し特約と再売買の予約の違い、家賃を滞納したときに何が変わるかに分けて書いています。契約前の説明でどこまでが義務だったかは重要事項説明の範囲で確認できます。
費用が心配なときの法テラス
日本司法支援センター(法テラス)は、経済的に困っている人を対象に、弁護士・司法書士との無料の法律相談と、費用の立替えを行っていると案内しています。制度の名称は民事法律扶助制度です。相談は全国各地にある法テラスの事務所や、法テラスと契約のある弁護士・司法書士の事務所などで受けられるとされています。

入口の電話は法テラス・サポートダイヤル 0570-078374 で、受付は平日9時から21時、土曜9時から17時と案内されています。利用できるかどうかには要件があるため、条件は法テラスの案内で確認してください。この記事で弁護士費用の相場を示すことはしません。着手金や報酬の決め方は事務所ごとに異なり、全国を通じた公表値が存在しないためです。
相談に行く前に用意するもの
どの窓口へ行く場合でも、聞かれることはほぼ同じです。先にそろえておくと、1回の相談で進む距離が変わります。
- 売買契約書と賃貸借契約書の両方
リースバックは契約が2つある取引です。片方だけでは判断できません。特約や別紙も含めて全部持って行きます。
- 重要事項説明書と、定期借家なら事前説明書面
更新の有無が争点になるときは、この2枚が結論を決めます。
- 相手から届いた書面と、その封筒
通知の日付が期間の起算点になります。封筒の消印も残しておきます。
- やりとりの記録
メール、SMS、通話の日時と担当者名。口頭の約束は、いつ誰が何と言ったかを時系列にした1枚があるだけで扱いが変わります。
- 登記事項証明書
いま誰が所有者になっているか、抵当権がどうなっているかを、相手の説明と突き合わせます。
- 支払いの記録
家賃の振込履歴。滞納が絡む場合は、いつからいくら足りていないかを自分の側で先に出しておきます。
よくある質問
弁護士に相談する前にできることはありますか
相手が宅地建物取引業保証協会の社員であれば、協会への苦情の申出は法律上の手続きとして用意されています(宅建業法64条の5第1項)。契約の内容についての一般的な不安であれば、消費者ホットライン188から消費生活センターにつながります。
業者が保証協会の社員かどうかはどこで分かりますか
契約が成立するまでの間に説明される事項です(宅建業法35条の2)。社員であれば協会の名称・住所・事務所の所在地と、供託所とその所在地が説明されます。社員でない場合は営業保証金を供託した供託所の説明になります。
行政に相談すれば損害を取り戻せますか
免許行政庁ができるのは指示や業務停止といった監督処分です(宅建業法65条)。金銭の回復は別の手続きになります。取引により生じた債権については、保証協会の認証を受けて弁済業務保証金から弁済を受ける道があります(64条の8)。
弁護士費用はいくらかかりますか
事務所ごとに決め方が異なり、全国を通じた公表値はありません。費用の負担が難しい場合は、法テラスの無料法律相談と費用の立替制度が案内されています。要件と手続きは法テラスの案内で確認してください。
まだ契約していませんが、相談してもよいですか
契約前のほうが取れる選択肢は多く残っています。条件を比べる段階なら、同じ内容で複数社に出す方法をリースバックの相見積もりにまとめています。
この記事で確認した一次情報
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(昭和二十七年法律第百七十六号)35条の2・64条の5・64条の8・65条:https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176
- 国民生活センター「全国の消費生活センター等」(消費者ホットライン188、バックアップ相談):https://www.kokusen.go.jp/map/
- 法テラス(日本司法支援センター)「無料法律相談・弁護士等費用の立替」:https://www.houterasu.or.jp/site/soudan-tatekae/
- 国土交通省 報道発表資料「住宅のリースバックに関するガイドブック」を公表しました(令和4年6月24日):https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000174.html







