リースバックの相談が断られるとき、理由のほとんどは「会社がその家を買えない」ことにあります。リースバックは売買と賃貸借を組み合わせた取引なので、まず売買が成立しなければ先に進みません。
売買を止める代表的な関門は3つです。共有名義、借地の上に建っている建物、そして売却代金で消せない住宅ローンです。前の2つは条文がはっきり決めています。
共有については民法251条1項が、各共有者は他の共有者の同意を得なければ共有物に変更を加えることができないと定めています。持分だけを売る話と、家そのものを売る話は別です。
借地上の建物については借地借家法19条1項が、地主が賃借権の譲渡を承諾しないとき、裁判所が借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができると定めています。承諾なしに勝手に進められるわけではありません。
共有名義の家は、ひとりでは売れない
夫婦の共有、相続で兄弟の共有になっている、といった家は珍しくありません。共有物をどう扱えるかは民法が決めています。

各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。(民法251条1項)
2項は、共有者が他の共有者を知ることができない場合や、その所在を知ることができない場合について、裁判所が「当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる」旨の裁判をできると定めています。連絡が取れない共有者がいるときの受け皿はありますが、裁判所の手続きが必要になります。
共有のときに確認する順番
誰が共有者か
登記事項証明書で持分と名義人を確認します。相続登記が済んでいない家は、法定相続人が共有者になっている可能性があります。
全員と連絡が取れるか
所在が分からない共有者がいる場合、民法251条2項の裁判の手続きが視野に入ります。時間がかかります。
住み続けるのは誰か
売ったあとに賃貸借の契約者になるのは誰かを決めておきます。共有者全員が住み続けるとは限りません。
「自分の持分だけ売る」という選択肢は理屈のうえではありますが、リースバックの目的には合いません。買った会社が持分だけを持っても、その家全体を貸すことはできないからです。
借地の上の建物は、地主の承諾が要る
土地は借りていて、建物だけを所有している家です。建物を売るには、土地の賃借権を買主へ引き継ぐ必要があります。

条文は、地主に不利となるおそれがないにもかかわらず承諾しない場合に、裁判所が承諾に代わる許可を与えることができるとしています。同時に「当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる」ともしています。承諾料のような負担が条件になり得る、ということです。
| 論点 | 条文が定めていること |
|---|---|
| 地主の承諾 | 建物の譲渡には賃借権の譲渡の承諾が必要になる |
| 承諾が得られないとき | 地主に不利となるおそれがなければ、裁判所が承諾に代わる許可を与えることができる(19条1項) |
| 裁判所が見るもの | 賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、譲渡または転貸を必要とする事情その他一切の事情(19条2項) |
| 条件が付く場合 | 借地条件の変更を命じられたり、許可が財産上の給付に係らしめられたりすることがある |
住宅ローンが残っている家は、完済できるかで決まる
3つめは残債です。住宅ローンが残っている家には抵当権が付いています。買主に所有権を移すには、この抵当権を消す必要があります。売却代金で完済できるかどうかが分かれ目です。
残債があるときに確かめること
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ローン残高はいくらか
金融機関の残高証明や返済予定表で確認します。複数のローンが付いている場合は合計で考えます。
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売却代金はいくらになりそうか
リースバックの買取価格は、賃料とのバランスで決まります。仕組みはリースバックの買取価格はどう決まる?で扱っています。
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足りない分を出せるか
売却代金が残債に届かない状態(オーバーローン)では、差額を自己資金で埋められるかが問われます。扱いはリースバックと抵当権で整理しています。
実際に、運営会社が公式に条件として書いている例もあります。当サイトで確認したところ、ハウス・リースバックは残債が売却価格を上回る場合は利用できないとしていました。詳しくはハウス・リースバックの条件を公式情報で確認をご覧ください。
そのほかに引っかかりやすい点
上の3つ以外にも、売買が成立しにくくなる事情があります。いずれも「買った会社が将来その家をどう扱えるか」に関わります。
| 事情 | なぜ問題になるか |
|---|---|
| 建て替えができない土地 | 買った会社にとって将来の選択肢が狭く、価格が付きにくくなる。建て替えの可否はリースバックで建て替えはできる?で扱っている |
| 未登記の建物 | 所有権の移転登記ができず、買主が第三者に対して所有を示せない |
| 境界が確定していない | 隣地との範囲が定まらず、転売のときに問題が残る |
| 賃料を払い続けられる見込みが立たない | リースバックは売って終わりではなく、賃貸借が続く。支払が続かない設計では成立しない |
最後の1行は条文の話ではありませんが、実務では最も重い条件です。売却代金を受け取ったあと、毎月の賃料を何年払えるのかを先に計算しておく必要があります。
断られたときに次にすること
理由ごとの次の一手
共有が理由だった
共有者の同意を集める、または所在不明の共有者について民法251条2項の裁判を検討します。弁護士・司法書士への相談が前提になります。
借地が理由だった
地主との交渉が第一です。承諾が得られないときは借地借家法19条1項の裁判所の許可という道があります。
残債が理由だった
金額の問題なので、複数社から条件を取って買取価格を比べることに意味があります。手順は相見積もりの記事にまとめています。
複数社を同じ条件で比べる手順はリースバックの相見積もりで説明しています。断られた理由を「うちの家はダメ」と受け取らず、どの関門に当たったのかを切り分けてください。
よくある質問
- 共有名義でもリースバックはできますか。
- 共有者全員の同意が得られるかによります。民法251条1項は、各共有者は他の共有者の同意を得なければ共有物に変更を加えることができないと定めています。所在の分からない共有者がいる場合は、同条2項の裁判という手続きがあります。
- 借地の上の家はリースバックできませんか。
- 地主の承諾が得られれば進められます。承諾が得られない場合でも、借地借家法19条1項により、地主に不利となるおそれがないにもかかわらず承諾しないときは、裁判所が承諾に代わる許可を与えることができるとされています。
- 住宅ローンが残っていてもできますか。
- 売却代金で完済できるかが分かれ目です。抵当権を消さなければ所有権を移せないためです。会社によっては、残債が売却価格を上回る場合は利用できないと公式に明記しています。
- 1社に断られたら、もうできないということですか。
- そうとは限りません。買取価格の付け方は会社によって違うため、残債が理由なら他社で成立することがあります。一方で、共有者の同意や地主の承諾が理由の場合は、どの会社に持ち込んでも同じ関門に当たります。
- 共有の持分だけ売ることはできますか。
- 持分の処分と共有物の変更は別の話です。ただしリースバックは家全体を貸し借りする取引なので、持分だけの売却では目的を果たせません。
- 断られた理由を教えてもらえますか。
- 会社によります。理由が示されない場合でも、登記事項証明書と残高証明を手元でそろえれば、どの関門に当たっているかは自分で切り分けられます。
出典
- e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」第251条(共有物の変更)https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(1項の、他の共有者の同意を得なければ共有物に変更を加えることができないこと、形状または効用の著しい変更を伴わないものの除外、2項の、他の共有者を知ることができずまたは所在を知ることができないときの裁判)
- e-Gov法令検索「借地借家法(平成三年法律第九十号)」第19条(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090(1項の、借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず承諾しないときの、裁判所による承諾に代わる許可、借地条件の変更や財産上の給付、2項の、裁判所が考慮する賃借権の残存期間・従前の経過・必要とする事情その他一切の事情)
条文は2026年9月27日にe-Gov法令検索で確認したものです。引用は該当部分の抜粋です。個別の事案で手続きが使えるか、費用や期間がどの程度かかるかについては、弁護士・司法書士等の専門家にご確認ください。運営会社ごとの取扱いは各社の公式情報をご確認ください。














