動産のセール・アンド・リースバック|機械・設備を売って借り直すとき、借地借家法は働かない

セール・アンド・リースバックは、自宅だけの話ではありません。機械や設備、車両といった動産を売って、同じものを借りて使い続ける形もあります。仕組みは同じに見えますが、法律の扱いは根本から違います。建物には借地借家法が働き、動産には働かないからです。この差が、使い続けられる期間と、第三者に対して権利を主張できるかどうかを分けます。

動産と不動産で違う四点

借地借家法は、建物の所有を目的とする地上権・土地の賃借権と、建物の賃貸借について特別の定めを置く法律です(同法1条)。機械や設備の賃貸借には適用されません。

そのため、動産の賃貸借には更新の仕組みも、正当事由の要求もありません。期間が終われば終わります。

賃貸借の存続期間は50年を超えることができません(民法604条1項)。建物の賃貸借についてはこの規定が適用されませんが(借地借家法29条2項)、動産には効きます。

動産には、借地借家法31条のような引渡しによる対抗力の仕組みがありません。動産に関する物権の譲渡は引渡しがなければ第三者に対抗できないとされ(民法178条)、第三者が即時取得する余地もあります(同法192条)。

同じ「売って借り直す」でも、効く法律が違う

自宅のリースバックで住み続けられる根拠は、借地借家法にあります。建物の引渡しを受けていれば、その後に建物を取得した者に対しても賃借権が効力を生じ(同法31条)、その規定は37条により強行規定とされています。更新には正当の事由が要り(同法28条)、期間の定め方にも制約があります。

機械や設備を売って借り直す場合、この保護はありません。契約は民法の売買と賃貸借だけで組み立てられ、書いていないことは決まっていないことになります。

比べる点 建物(自宅・店舗) 動産(機械・設備・車両など)
適用される法律 民法に加えて借地借家法(同法1条) 民法のみ
存続期間の上限 民法604条は適用されない(借地借家法29条2項) 50年を超えることができない(民法604条1項)。更新しても更新の時から50年まで(同条2項)
期間が終わったとき 普通借家なら更新の仕組みがある(借地借家法26条1項) 契約で定めたとおりに終わる。更新の仕組みはない
貸主が終わらせる条件 更新拒絶や解約申入れに正当の事由が要る(同法28条) 契約の定めによる
所有者が替わったとき 建物の引渡しがあれば新しい所有者にも賃借権を主張できる(同法31条。37条の強行規定) 同様の規定がない。動産に関する物権の譲渡は引渡しで対抗する(民法178条)
第三者の取得 登記で権利関係を確認できる 取引行為によって平穏・公然と占有を始めた者が善意無過失であれば即時取得しうる(民法192条)
賃料の増減請求 不相当になれば請求できる(借地借家法32条1項) 同様の規定がない。契約の定めによる

動産で「使い続けられるか」を決めるのは、契約書だけ

図:動産のセール・アンド・リースバックで、契約書に書かないと決まらないこと

期間と終わり方

  • 賃貸借の期間。50年を超えることはできない(民法604条1項)
  • 期間が終わったあとに続けられるか。更新の仕組みは法律にないため、再契約の条件を書いておく
  • 中途解約ができるか。できる場合の予告期間と違約金

物と権利のゆくえ

  • 貸主が第三者へ売ったときにどうなるか。動産には建物のような対抗力の規定がない
  • 買い戻せるか。買戻しの特約なら期間は10年を超えられない(民法580条1項)
  • 修繕と保険の負担。誰が費用を持つのかを条項にする
  • 期間の終わりに、物をどう返すのか。原状回復の範囲

動産のリースバックでは、賃料の見直しを求める法律上の根拠がありません。建物であれば、租税その他の負担の増減や近傍同種の建物の借賃との比較で不相当になったときに増減を請求できます(借地借家法32条1項)。動産にはこの規定がないため、賃料の改定は契約の条項がすべてです。

資料:民法604条(賃貸借の存続期間)。50年を超えることができず、更新しても更新の時から50年を超えられないと定められている
e-Gov法令検索で表示した民法第604条の画面キャプチャ。賃貸借の存続期間は五十年を超えることができないと書かれている

民法だけで動く取引では、修繕と費用の分担も条項で決まる

借地借家法が働かないぶん、民法の一般の規定が前面に出ます。賃貸人は、賃貸物の使用および収益に必要な修繕をする義務を負います(民法606条1項)。賃借人の責めに帰すべき事由で修繕が必要になった場合は、この義務の対象外です。動産の場合、機械の保守や部品交換が誰の負担になるのかは、この規定を前提にして契約で具体化することになります。

契約で決める項目 民法の規定 書かなかったときに起きること
修繕の負担 賃貸人は使用および収益に必要な修繕をする義務を負う(606条1項) どこまでが「必要な修繕」かで争いになる。保守契約の範囲を条項にする
期間 50年を超えることができない(604条1項) 長期で使う前提の設備でも、上限がある
買戻し 買戻しの特約は期間10年以内、定めた期間は伸長できない(580条1項・2項) 再売買の予約とは効力が違う。どちらの形かを明記する
第三者への譲渡 動産に関する物権の譲渡は引渡しで対抗する(178条)。即時取得の余地がある(192条) 貸主が第三者へ売った場合に使用を続けられる保証がない
敷金にあたる金銭 名目を問わず担保の目的で交付する金銭は敷金として扱われる(622条の2) 返還の時期と差し引く範囲が曖昧になる

税務と会計は、動産でも不動産でも同じ枠組みで見る

税務では、一連の取引が実質的に金銭の貸借であると認められるときに、売買はなかったものとして扱う規定があります。判定の条件と、支払総額の目安についてはセール・アンド・リースバックとはで条文から確認しています。

会計では、2027年4月1日以後に開始する事業年度から新しいリース会計基準が適用されます。借手の側でリースを資産と負債に計上する扱いになるため、売却したからといって貸借対照表から資産が消えるとは限りません。詳細はリースバックの減価償却と会計処理にまとめました。

消費税については、動産の譲渡は非課税の項目に挙がっていないため課税の対象になります。土地の譲渡と貸付けが非課税とされているのは消費税法別表第二第1号で、動産はこれに当たりません。売却・家賃・買戻しの場面ごとの扱いはリースバックに消費税はかかるかで条文まで追えます。

自宅のリースバックを探している場合

このページは動産と不動産の違いを扱いました。自宅を売って住み続ける形を検討している場合は、見るところが変わります。住める年数を決めるのは賃貸借契約の種類で、定期建物賃貸借に更新はなく、期間の満了後に住み続けるには再契約の合意が必要です(借地借家法38条1項)。

制度の全体像はリースバックとは、契約の種類による違いは普通借家と定期借家の違いにあります。店舗や事務所など事業用の建物を扱う場合は店舗のリースバックとテナント契約、車を対象にする場合は車のリースバックと自宅のリースバックは別物で扱っています。

よくある質問

機械や設備でもリースバックはできますか

取引としては行われています。ただし、建物のように借地借家法の保護が働かないため、使い続けられる期間も、貸主が替わったときの扱いも、契約書に書かれたことがすべてになります。

動産の賃貸借に期間の上限はありますか

民法604条1項は、賃貸借の存続期間を50年を超えることができないとしています。契約でこれより長い期間を定めても50年になります。更新はできますが、更新の時から50年を超えることはできません(同条2項)。なお、建物の賃貸借についてはこの規定が適用されません(借地借家法29条2項)。

貸主が売った相手に、借りている権利を主張できますか

建物であれば、引渡しを受けていれば新しい所有者にも賃借権を主張できます(借地借家法31条)。動産には同じ規定がなく、動産に関する物権の譲渡は引渡しで対抗することとされています(民法178条)。また、取引行為によって平穏・公然と占有を始めた者が善意無過失であれば即時取得が成立しうるため(同法192条)、契約で手当てしておく必要があります。

賃料が高すぎると感じたら、減額を求められますか

建物であれば借地借家法32条1項の増減請求があります。動産にはこの規定がないため、契約に改定の条項がなければ、法律上の根拠はありません。

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