リースバックの契約書を前にして、どこを見ればいいのか分からない。そう感じるのは自然なことです。リースバックは売買契約と賃貸借契約が同時に動く取引で、国土交通省自身が「売買と賃貸借が不可分一体という複雑な契約形態」だと書いています。この記事では、2026年10月1日に施行される国土交通省のガイドラインが「説明しないと違反になる」と挙げた事項を軸に、契約書と説明のどこを確かめるかを整理します。内容は2026年9月30日時点で公表されている資料に基づきます。
先に結論
- 国土交通省の「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(リースバックに関するガイドライン)」は、令和8年10月1日に施行されました。現在公表されている本文は令和8年10月付の「令和8年10月1日施行版」です。
- 宅建業者がリースバック取引の売買について、信義誠実の原則・書面の交付・業務に関する禁止事項の規定を守る義務を負うことが明確化されました。
- 事実不告知の禁止(宅建業法47条1号)について、「売買」に加え「賃貸借」の内容も重大な影響を及ぼす事項に当たると明確化されています。
- 禁止される主な不告知は、売買では買戻し特約等・契約解除・違約金、賃貸借では借賃の額と支払方法・契約期間と更新・修繕費用の負担区分です。
- 過失による不告知でも、法31条1項(信義誠実義務)に抵触するおそれがあるとされています。
- 違反が認められた宅建業者には、指示・業務停止命令・免許取消し等の監督処分で対処するとされています。
2026年10月1日、リースバックのガイドラインが施行される
この文書をまとめたのは国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課です。施行に合わせて差し替えられた現行の本文は8ページで、表紙に「令和8年10月1日施行版」と、発行時期として令和8年10月が記されています。
策定の背景として、同省は概要資料に次の3点を挙げています。
図1|国土交通省がガイドラインを作った理由(概要資料より)
現状
住み替え円滑化や老後の資金需要で注目される一方、賃料・契約期間・違約金等の相談が高水準で推移。高齢者を狙った「押し買い」も発生。
課題
売買と賃貸借が不可分一体という複雑な契約形態であり、売主である一般消費者にとって取引内容の理解が不十分なまま契約に至るケースがある。
対応
宅建業者から一般消費者への適切な情報の告知等によりリースバック取引の適正化を図るため、宅建業法の解釈を明確化。
このガイドラインは、あくまで「住宅のリースバック」限定の措置として位置づけられています。事業用不動産のセール・アンド・リースバックには当たりません。事業用の扱いはセール・アンド・リースバックとはで整理しています。
また同省は、今後このガイドラインの内容を含めた一般消費者向けの啓発資料を作成・公表する予定だとしています。

説明しないと違反になる6つの事項
ガイドラインの中心にあるのが、宅地建物取引業法47条1号(事実不告知の禁止)の当てはめです。国土交通省は、勧誘に際して相手方等の判断に重要な影響を及ぼす事項について故意に事実を告げない行為の禁止に関して、リースバック取引では「売買」に加え「賃貸借」の内容も相手方等の判断に重大な影響を及ぼす事項に該当すると明確化しました。
概要資料は、実際に起きたトラブルと対応させて、禁止される主な不告知事項を並べています。
| 区分 | 事実不告知が禁止される主な事項 | 対応するトラブル例 | 該当条項 |
|---|---|---|---|
| 売買 | 買戻し特約等に関する事項 | 「買戻し特約がなく断られた」等 | 宅地建物取引業法 第47条第1号 (事実不告知の禁止) |
| 契約解除・違約金に関する事項 | 「解約時に高額な違約金を請求された」等 | ||
| 賃貸借 | 借賃の額・支払方法 | 「家賃が高額で資金不足となった」等 | |
| 契約期間・更新に関する事項 等 | 「定期借家契約で退去を迫られた」等 | ||
| 修繕費用の負担区分 等 | 「修繕費が売主負担となっていた」等 |
この5行は、そのまま契約前のチェックリストとして使えます。説明が無かった項目があるなら、それは業者側の説明不足であって、こちらの確認不足ではありません。
国土交通省は、禁止事項のほかに「対応することが望ましい事項」として、売買価格・賃料の算定根拠や、売買代金と契約期間内の賃料合計額との対応関係を明示することを挙げています。いくらで売って、契約期間中に家賃をいくら払うのか。その2つを並べて見せてほしい、という要請です。
過失でも抵触のおそれ。31条1項の信義誠実義務
もう1つ重要なのが、故意でなくても問題になり得るという点です。概要資料には次の注記があります。
過失による不告知の場合も、法第31条第1項(信義誠実義務)に抵触するおそれがある旨も明確化
47条1号は「故意に事実を告げない行為」を禁じる規定なので、うっかり説明し忘れた場合は形式的には当たりません。そこに31条1項をかぶせることで、「知らなかった」「言い忘れた」で済ませられない構図になっています。
ガイドライン本文の目次には、31条関係、47条関係に加えて47条の2関係も置かれています。47条の2は断定的判断の提供や威迫といった不当な勧誘を禁じる規定です。概要資料も、業務に関する禁止事項として「事実不告知の禁止、拒絶後の勧誘継続、長時間勧誘等の『押し買い』に当たる不適正な勧誘の禁止等」を挙げています。

契約書を受け取ったら見る順番
ガイドラインが挙げた事項を、実際に書面を確かめる順番に並べ替えると次のようになります。
図2|リースバックの契約書で確かめる順番
- ①売買代金と賃料の対応関係/いくらで売り、契約期間中に家賃を合計いくら払うのか。国土交通省が「対応することが望ましい事項」として明示を求めている項目です。
- ②賃貸借契約の種類と期間/普通借家か定期借家か。定期借家なら期間満了で終わり、再契約は相手方の判断になります。トラブル例に「定期借家契約で退去を迫られた」が挙がっています。
- ③借賃の額と支払方法/月額いくらか、改定の条項があるか。家賃の改定については借地借家法32条と38条9項の関係が効きます。
- ④修繕費用の負担区分/どちらが直すのか。トラブル例に「修繕費が売主負担となっていた」が挙がっています。売った後も自分が直す契約になっていないかを確かめます。
- ⑤買戻しの条件/買戻しができるのか、価格はどう決まるのか、期限はあるのか。「買戻し特約がなく断られた」がトラブル例に入っています。
- ⑥契約解除と違約金/途中でやめたときにいくら払うのか。「解約時に高額な違約金を請求された」がトラブル例です。
②と③は、売った後に何年住めて、いくら払うのかを決める中心部分です。普通借家と定期借家の違いは更新・再契約の違いで、家賃の改定については借地借家法32条の増減請求と38条9項で扱っています。
住宅ローンが残っている家の場合は、売買が成立する前提として抵当権を外せるかどうかが先に来ます。リースバックと抵当権で順番を整理しています。
違反したらどうなるか。監督処分とPIO-NETの活用
ガイドラインは、実効性の担保についても書いています。概要資料の3つめの柱が「指導監督の徹底」です。
| 手段 | 内容 |
|---|---|
| 監督処分 | ガイドラインに基づき法違反が認められた宅建業者に対しては、指示・業務停止命令・免許取消し等の監督処分等をもって厳正に対処 |
| PIO-NETの活用 | 個社名を明示した消費生活センター等への相談情報を、宅建業免許行政庁(地方整備局等・都道府県)に共有 |
PIO-NETは全国の消費生活センターに寄せられた相談を集めた国民生活センターのデータベースです。消費生活センターへの相談が、免許を出している行政庁へ個社名つきで共有されるという運用になります。契約後に不審を感じた場合、消費生活センターへ相談することには業者への監督という意味も出てきます。

消費者向けには、令和4年6月に公表された「住宅のリースバックに関するガイドブック」もあります。こちらは実際の事例を踏まえて、リースバックの主な特徴、利用例およびトラブルの例、消費者が利用する際のポイントを整理したものです。契約前に一度目を通しておく価値があります。
契約そのものを取り消せるかどうかという別の論点は、消費者契約法4条が並べる勧誘の型と1年・5年の期限で扱っています。
リースバックの契約書についてよくある質問
- ガイドラインはいつから適用されますか。
- 令和8年10月1日施行です。本文をまとめたのは国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課で、現在公表されているのは令和8年10月付の施行版です。
- 説明を受けていない項目があったらどうなりますか。
- ガイドラインは、買戻し特約等・契約解除・違約金・借賃の額と支払方法・契約期間と更新・修繕費用の負担区分について、故意に告げないことが宅建業法47条1号の事実不告知に当たると整理しています。過失による不告知でも法31条1項の信義誠実義務に抵触するおそれがあるとされています。まずは業者に説明を求め、納得できなければ消費生活センターに相談してください。
- 賃貸借の説明も宅建業法の対象なのですか。
- ガイドラインは、リースバック取引においては「売買」に加え「賃貸借」の内容も相手方等の判断に重大な影響を及ぼす事項に該当する旨を明確化しました。売買部分だけを説明すれば足りるという整理ではありません。
- 売買代金と家賃の関係は教えてもらえますか。
- 国土交通省は「対応することが望ましい事項」として、売買価格・賃料の算定根拠や、売買代金と契約期間内の賃料合計額との対応関係を明示することを挙げています。禁止事項ではなく望ましい事項という位置づけですが、求める根拠にはなります。
- このガイドラインは事業用のセール・アンド・リースバックにも当てはまりますか。
- 概要資料は「あくまで『住宅のリースバック』限定の措置として」と明記しています。事業用資産のセール・アンド・リースバックは対象外です。
- 違反した業者はどうなりますか。
- 国土交通省は、ガイドラインに基づき法違反が認められた宅建業者に対して、指示・業務停止命令・免許取消し等の監督処分等をもって厳正に対処するとしています。あわせて、個社名を明示した消費生活センター等への相談情報を宅建業免許行政庁に共有するとされています。
この記事で確認した一次情報
- 国土交通省「『住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方』について」https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_fr3_000001_00034.html(2026年9月30日確認)
- 国土交通省 リースバックに関するガイドライン 本文(令和8年10月1日施行版・PDF)https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/002025410.pdf(2026年10月17日取得)
- 国土交通省 リースバックに関するガイドライン 概要(カラー形式・PDF)https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/002025411.pdf(2026年10月17日取得)
- 国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」(令和4年6月・PDF)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001489269.pdf(2026年9月30日確認)














