リースバックで定期借家契約を結ぶと、更新がない代わりに期間が終われば出ていくことになります。では、その終わりはいつ知らされるのか。借地借家法は、期間が1年以上の定期借家について、貸主が決まった期間内に通知をしなければ終了を借主に対抗できないと定めています。2026年10月22日にe-Gov法令検索で条文を引き、通知の期限と、遅れた場合に何が起きるのかを整理します。
先に要点
- 期間が1年以上の定期借家では、貸主は期間の満了の1年前から6月前までの間に、期間満了で終了する旨を借主へ通知しなければならない(借地借家法第38条第6項)。
- この通知をしなければ、貸主は終了を借主に対抗することができない。通知期間は6か月あり、その間に通知がなければ、期間が過ぎても出ていけとは言えない。
- 通知期間を過ぎてから通知した場合は、その通知の日から6月を経過した後は対抗できるようになる。つまり遅れた分だけ退去が先送りになる。
- 第6項・第7項に反する特約で借主に不利なものは無効(第38条第8項)。契約書で通知を省く取り決めがあっても効かない。
通知がなければ、期間が終わっても終了を主張できない
定期借家は契約の更新がない賃貸借です。ただし、期間が1年以上の場合は、終わりが近づいたことを貸主から知らせる仕組みが条文に置かれています。

第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。(借地借家法第38条第6項本文)
「対抗することができない」は、終了したことを借主に主張できないという意味です。契約期間そのものは満了していても、通知がなければ貸主は明渡しを求められません。リースバックで住み続ける側から見ると、通知が来るまでは期間満了だけを理由に退去を迫られることはないということになります。
通知期間は「満了の1年前から6月前まで」の6か月間
通知を出してよい窓は、期間の満了日から逆算して決まります。早すぎても遅すぎても、条文が定める通知期間からは外れます。
期間3年の定期借家で、満了日が2029年3月31日の場合
期間が1年未満の定期借家には、この通知の定めがありません。第6項は「期間が一年以上である場合には」と条件を付けているためです。リースバックの契約期間が2年や3年なら対象になり、半年や11か月なら対象外という線引きです。
期間2年で満了日が2028年3月31日なら、通知期間は2027年4月1日から2027年9月30日までになります。期間が何年であっても、通知期間の長さは6か月で変わりません。契約期間が長いほど満了日は先になりますが、通知が来る窓の幅は同じです。
通知の方法は条文に書かれていない
第6項が定めているのは「通知をしなければ」という要件だけで、通知の方法は示されていません。第1項の契約や第3項の説明については書面や電磁的記録の形式が定められているのに対し、第6項の通知には形式の定めがないという違いがあります。
形式が決まっていないということは、口頭でも通知として成り立ちうる一方で、いつ通知があったかを後から確かめにくくなるということでもあります。通知の日が明渡しを求められる時点の起算点になる場合があるため、受け取った側も日付の分かる形で記録しておくほうが確実です。郵便の消印やメールの受信日時が残っていれば、通知期間内だったのか経過後だったのかを後から示せます。
通知が遅れたら、その日から6か月で対抗できるようになる
第6項にはただし書があります。通知期間を過ぎてしまった場合でも、貸主が通知をすれば、その通知の日から6月を経過した後は終了を対抗できます。
| 通知の時期 | 終了を対抗できる時点 |
|---|---|
| 通知期間内(満了の1年前〜6月前) | 期間の満了日 |
| 通知期間の経過後 | 通知の日から6月を経過した後 |
| 通知がない | 対抗できない |
満了の3か月前に通知が来た場合なら、満了日ではなく、通知の日から6か月後が明渡しを求められる時点になります。満了日を過ぎてから通知が来た場合も同じ計算です。通知が遅れるほど、住み続けられる期間は後ろにずれます。
「通知は不要」と書いた特約は効かない。
第38条第8項は、第6項・第7項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは無効とすると定めています。契約書に「期間満了の通知は行わない」「通知がなくても期間満了により当然に終了する」といった条項があっても、借主に不利な内容であれば効力を持ちません。契約前の説明については定期借家契約とは?で扱っています。

契約の入口にある3つの要件も確認しておく
通知は契約の出口の話です。入口の側にも条文上の要件があり、こちらを欠くと「更新がない」という定め自体が成り立ちません。
| 項 | 内容 |
|---|---|
| 第1項 | 公正証書による等書面によって契約をするときに限り、契約の更新がないこととする旨を定められる |
| 第2項 | 契約が電磁的記録によってされたときは、書面によってされたものとみなす |
| 第3項 | 賃貸人はあらかじめ、更新がなく期間の満了により終了することを記載した書面を交付して説明しなければならない |
| 第4項 | 賃借人の承諾を得れば、書面の交付に代えて電磁的方法で提供できる |
| 第5項 | 第3項の説明をしなかったときは、更新がないこととする旨の定めは無効 |
第3項の説明は、契約書とは別の書面で行う必要があります。これを欠くと第5項により「更新がない」という定めが無効になり、更新のある普通借家として扱われることになります。説明の有無がなぜ分かれ目になるのかはリースバックはやめた方がいい?で整理しています。
借主の側から終わらせることもできる
第38条第7項は、居住用で床面積200平方メートル未満の定期借家について、転勤・療養・親族の介護その他のやむを得ない事情により自己の生活の本拠として使用することが困難となったときに、借主から解約の申入れができると定めています。この場合、賃貸借は解約の申入れの日から1月を経過することによって終了します。
第8項が無効としているのは「第6項・第7項に反する特約で借主に不利なもの」なので、この解約権を奪う特約も効きません。中途解約の条件はリースバックの定期借家は途中で解約できる?で扱っています。
契約前後に確認する順番
定期借家の終わりに備える手順
よくある質問
通知が来なければ住み続けられますか
借地借家法第38条第6項は、通知をしなければ貸主は終了を借主に対抗することができないと定めています。期間が1年以上の定期借家であれば、通知がない限り期間満了だけを理由に明渡しを求められません。
通知はいつ来るのが正しいのですか
期間の満了の1年前から6月前までの間です。条文はこの6か月間を「通知期間」と呼んでいます。
通知が遅れたらどうなりますか
通知期間の経過後に通知があった場合は、その通知の日から6月を経過した後に終了を対抗できるようになります。満了日ではなく、通知の日が起算点になります。
契約期間が1年未満のときはどうなりますか
第6項は「期間が一年以上である場合には」と条件を付けているため、1年未満の定期借家には通知の定めが適用されません。
通知を不要とする特約は有効ですか
借主に不利なものであれば無効です。第38条第8項が、第6項・第7項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものを無効としています。
出典
- e-Gov法令検索 借地借家法 — 第38条(第1項の書面要件、第2項の電磁的記録、第3項の事前説明、第4項の電磁的方法、第5項の無効、第6項の通知期間と対抗できない効果およびただし書の6月、第7項の借主からの解約申入れと1月、第8項の不利な特約の無効)














