転リースは、借りた物を、さらに別の人へ貸すことです。法律の言葉では転貸借といいます。リースバックと混同されやすいのは、どちらも「住んでいる人が所有者ではない」状態になるからですが、成り立ちがまったく違います。リースバックは自分の家を売ってから借りる形、転リースは他人の物を借りた人がもう一段貸す形です。ここでは、登場人物が3者になったときに誰が誰に何を負うのかを、民法と借地借家法、賃貸住宅管理業法で確かめます。
この記事の要点
- 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ転貸できません(民法612条1項)。違反して第三者に使用・収益させたときは、賃貸人は契約を解除できます(同条2項)。
- 適法に転貸されたとき、転借人は賃貸人に対して直接、債務を履行する義務を負います(民法613条1項)。賃料の前払いをもって賃貸人に対抗することはできません。
- 賃貸人と賃借人が合意で解除しても、それを転借人に対抗できません(613条3項)。ただし解除の当時に債務不履行による解除権があったときは別です。
- 建物の転貸借がある場合、期間満了や解約申入れで賃貸借が終了しても、賃貸人が転借人に通知しなければ終了を対抗できず、通知から6か月で転貸借が終了します(借地借家法34条)。
- サブリース(マスターリース)には賃貸住宅管理業法の規制があります。誇大広告の禁止(28条)、不当な勧誘等の禁止(29条)、締結前の書面交付と説明(30条)など。
- リースバックは所有者が自分の家を売ってから借りる取引で、転リースとは登場人物の並びが違います。
言葉の整理:誰が誰から借りているのか
転リースが分かりにくいのは、同じ建物について契約が2本あるからです。所有者と第一の借主の間の賃貸借、そして第一の借主と実際に住む人の間の転貸借です。
| 立場 | 転リース(転貸借) | リースバック |
|---|---|---|
| 建物の所有者 | もとからの所有者。自分では住んでいない | 買主(リースバック会社や提携企業)。もとの所有者から買った |
| 中間に立つ人 | 賃借人(転貸人)。借りたうえで第三者へ貸す | いない。所有者と借主の2者だけ |
| 実際に住む人 | 転借人。中間の人から借りている | もとの所有者。売ったあと借主になった |
| 契約の本数 | 賃貸借と転貸借の2本 | 売買と賃貸借の2本 |
| 住む人の前の立場 | もともと無関係の第三者 | その家の所有者だった |
「リースバック 転リース 違い」という探し方をされることがありますが、比べる軸は契約の本数ではなく、住んでいる人がもとの所有者かどうかです。リースバックの仕組みそのものはリースバックとは何かを国土交通省の定義から見る記事にまとめています。
転貸には承諾が要る
民法 第六百十二条(賃借権の譲渡及び転貸の制限) 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
承諾を得ずに転貸すると、賃貸人は契約を解除できます。住んでいるのが転借人だった場合、もとの賃貸借が解除されれば、その上に乗っている転貸借も維持できなくなります。住み始める前に、貸主がその建物の所有者なのか、それとも借りている人なのかを確かめる意味はここにあります。登記事項証明書で所有者を確認し、貸主と一致しないなら、転貸の承諾を得ているかを書面で確認します。
適法な転貸で何が起きるか
民法 第六百十三条(転貸の効果) 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。……3 賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。
賃貸人への直接の義務(613条1項前段)
意味転借人は、所有者から賃料を直接請求されうる立場になります。範囲は、中間の賃借人が負う債務の限度までです。
前払いは対抗できない(613条1項後段)
意味中間の人へ何か月分かをまとめて前払いしていても、所有者に対して「もう払った」とは言えません。二重払いの危険があります。
合意解除は対抗できない(613条3項)
意味所有者と中間の人が話し合いで賃貸借をやめても、それだけで転借人が追い出されることはありません。ただし、その時点で債務不履行による解除権が所有者にあったときは別です。
終了の通知(借地借家法34条)
意味建物の賃貸借が期間満了や解約申入れで終わるとき、所有者は転借人に通知しなければ終了を対抗できません。通知した日から6か月の経過で転貸借が終了します。この規定に反する転借人に不利な特約は無効です(37条)。
整理すると、転借人は所有者から直接請求されうる一方で、所有者と中間の人の都合だけで立場を失うことはないという組み立てです。守られている部分と危ない部分が、条文ごとに分かれています。
サブリースは法律で規制されている転リース
事業として行う転リースの代表がサブリースです。所有者とサブリース業者の間の契約をマスターリース契約(特定賃貸借契約)、業者と入居者の間の契約をサブリース契約(転貸借契約)と呼びます。

国土交通省のポータルサイトは、サブリース業者がオーナーになろうとする方に対して、家賃の見直しやマスターリース契約の解除の条件などのリスク・デメリットの説明を十分に行っていないケースが多く、契約内容を誤認したまま契約を締結してしまうことによるトラブルが多発しているとしたうえで、賃貸住宅管理業法により罰則規定も含めて規制が設けられていると説明しています。
- 誇大広告の禁止(法28条)
家賃、維持保全の実施方法、契約の解除に関する事項などについて、著しく事実に相違する表示や、実際より著しく優良・有利だと誤認させる表示をしてはならない。
- 不当な勧誘等の禁止(法29条)
締結の勧誘に際し、または解除を妨げるため、判断に影響を及ぼす重要な事項について故意に事実を告げず、または不実のことを告げてはならない。
- 締結前の書面交付と説明(法30条)
契約を締結するまでに、契約の内容と履行に関する事項について書面を交付して説明しなければならない。
- 締結時の書面交付(法31条)
対象となる賃貸住宅、支払う家賃その他の条件、維持保全の実施方法、契約期間、転借人の資格その他の転貸の条件、更新・解除の定めなどを記載した書面を遅滞なく交付する。
- 書類の閲覧(法32条)
業務や財産の状況を記載した書類を営業所または事務所に備え置き、閲覧させる。

条文上、特定賃貸借契約は「賃借人が当該賃貸住宅を第三者に転貸する事業を営むことを目的として締結されるもの」と定義されています(法2条4項)。事業として転貸することが前提なので、個人どうしの一回きりの又貸しはこの規制の対象ではありません。その場合は民法612条・613条と借地借家法34条だけが手がかりになります。
リースバックと並べて考えるとき
自宅を手放したくないが資金が要るという場面で、転リースが選択肢になることはありません。転リースは所有していない人が行う形だからです。所有者のまま貸すか、売って借りるかの選択であれば、比べる相手はリースバックと通常の賃貸経営になります。
ただし、リースバックの買主がその物件を第三者へ転売した場合や、買主が別の会社へ一括で貸す形をとった場合には、住んでいる人の相手方が変わることがあります。この場合でも、建物の引渡しを受けている借主は登記がなくても新しい所有者に賃借権を主張でき(借地借家法31条)、賃貸人の地位は譲受人に移ります(民法605条の2第1項)。相手が変わっても、借りている立場そのものが消えるわけではありません。物件を取得する側が何を引き継ぐのかは、賃貸人の地位と敷金返還債務の承継で条文ごとに追いました。
契約の種類によって住み続けられる年数が変わる点は、転貸借でも同じです。普通借家か定期借家かの見分け方は定期借家契約とはに、終了の場面ごとの扱いはリースバックの退去にまとめています。
よくある質問
転リースとリースバックの違いは何ですか
住んでいる人がもとの所有者かどうかです。リースバックは自分の家を売ってから借り直す形で、契約は売買と賃貸借の2本です。転リースは他人の物を借りた人がさらに貸す形で、契約は賃貸借と転貸借の2本になります。
大家さんの承諾なしに又貸ししてもよいですか
できません。賃借人は賃貸人の承諾を得なければ転貸できず(民法612条1項)、違反して第三者に使用・収益させたときは賃貸人が契約を解除できます(同条2項)。
転借人は誰に家賃を払うのですか
契約上は中間の賃借人(転貸人)ですが、適法な転貸であれば、転借人は賃貸人に対しても直接、債務を履行する義務を負います(民法613条1項)。賃料の前払いをもって賃貸人に対抗することはできません。
元の賃貸借が終わったら、すぐ出なければなりませんか
建物の転貸借がある場合、期間満了や解約申入れによる終了は、賃貸人が転借人に通知しなければ対抗できません。通知があった日から6か月を経過して転貸借が終了します(借地借家法34条)。
サブリース契約を持ちかけられました。何を確認すべきですか
賃貸住宅管理業法は、締結前に契約の内容と履行に関する事項について書面を交付して説明することを義務づけています(法30条)。家賃の見直しと契約解除の条件が説明されているかを、書面で確かめてください。
この記事で確認した一次情報
- e-Gov法令検索「民法」(明治二十九年法律第八十九号)605条の2・612条・613条:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- e-Gov法令検索「借地借家法」(平成三年法律第九十号)31条・34条・37条:https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090
- e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(令和二年法律第六十号)2条・28条・29条・30条・31条:https://laws.e-gov.go.jp/law/502AC0000000060
- 国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト 適正化のための措置(規制の内容・標準契約書等)」:https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/pm_portal/sublease.html














