リースバックの契約は二通ある|売買契約書と賃貸借契約書に何が書かれるか

リースバックの契約は一通ではありません。自宅を売る売買契約と、売った家を借りる賃貸借契約の二通を、同じ日に結びます。それぞれ書かれる項目が違い、根拠になる法律も違います。どちらの書面に何が書かれるのかを条文で確かめ、二通のあいだで食い違いが起きやすい箇所を押さえます。

二通の書面で決まること

売買について、宅地建物取引業者が自ら当事者として契約を締結したときは、相手方に遅滞なく書面を交付しなければなりません(宅地建物取引業法37条1項)。代金の額と支払の時期、引渡しの時期、移転登記の申請の時期などが記載事項です。

賃貸借を定期建物賃貸借にするなら、公正証書による等書面で契約し、更新がない旨を記載した書面を事前に交付して説明しなければなりません(借地借家法38条1項・3項)。説明がなければ、更新がない旨の定めは無効です(同条5項)。

敷金は名目を問わず、賃料債務などを担保する目的で交付する金銭を指します(民法622条の2)。

買戻しを定めるなら、売買契約と同時にした特約かどうかで効力が変わります(民法579条)。買戻しの特約は期間が10年を超えられません(同法580条1項)。

売買契約の書面に書かれること

宅地建物取引業法37条1項は、宅地建物取引業者が自ら当事者として売買契約を締結したときに、相手方へ遅滞なく書面を交付するよう義務づけています。記載すべき事項は条文に列挙されており、リースバックの売主から見ると、この一覧が「売却の条件がどこまで決まっているか」の確認表になります。

資料:宅地建物取引業法37条(書面の交付)。1項に記載すべき事項が列挙されている
e-Gov法令検索で表示した宅地建物取引業法第37条の画面キャプチャ。書面に記載すべき事項が号ごとに並んでいる
37条1項の記載事項 リースバックで確かめること
代金の額並びにその支払の時期及び方法(3号) いくら、いつ、どうやって受け取るのか。諸費用を差し引く前の金額であることに注意する
宅地又は建物の引渡しの時期(4号) 賃貸借の開始日と食い違っていないか。空白の日が生じないか
移転登記の申請の時期(5号) 所有権が移る時期。買主が誰になるのかも登記で確かめられる
代金以外の金銭の授受に関する定め(6号) 敷金や前払い家賃を決済時に預ける場合、その額と時期と目的
契約の解除に関する定め(7号) どの場面で解除できるのか。手付解除の期限があるか
損害賠償額の予定又は違約金に関する定め(8号) やめた場合にいくら払うことになるのか
契約不適合責任に関する定め(11号) 売却後に不具合が見つかったときの責任。免責の特約があるか
租税その他の公課の負担に関する定め(12号) 固定資産税を日割りで清算するのか。印紙税をどちらが負担するのか
既存建物の構造耐力上主要な部分等の状況(2号の2) 当事者の双方が確認した事項として記載される

なお、宅地建物取引業者は、賃貸借についても、借りようとしている建物に関して契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして重要事項を説明させなければならないとされています(同法35条1項)。売買と賃貸借で説明の相手と対象が分かれる点を押さえてください。

賃貸借契約の書面で決まること

賃貸借は民法601条の契約で、使用および収益をさせることと、賃料を支払うことが要素です。そのうえで、建物の賃貸借には借地借家法が重なります。リースバックで決定的なのは、普通借家にするか定期建物賃貸借にするかです。

図:賃貸借契約書で確かめる二つの系統

住み続けられる年数に関わる条項

  • 契約の種類。定期建物賃貸借なら、公正証書による等書面と事前の説明書面が要る(借地借家法38条1項・3項)
  • 期間。1年以上なら、満了の1年前から6か月前までに終了の通知が要る(同条6項)
  • 再契約に応じる条件。更新の仕組みは定期建物賃貸借にはない
  • 賃借人からの中途解約。38条7項は居住用で床面積200平方メートル未満に限られる

お金に関わる条項

  • 賃料の額と支払の時期。前払いか後払いか
  • 賃料の改定に関する特約。定期建物賃貸借で特約があると、32条の増減請求が適用されない(同条9項)
  • 敷金。名目を問わず担保の目的で交付する金銭は敷金として扱われ、明渡し後に未払債務を差し引いた残額が返る(民法622条の2)
  • 保証会社の加入料、火災保険・家財保険の費用
  • 原状回復の範囲と、造作の扱い(借地借家法33条は37条の強行規定に含まれていない)

二通のあいだで食い違いが起きやすいところ

売買契約と賃貸借契約は別々の書面なので、日付や金額の整合は自分で確かめる必要があります。

確かめる点 食い違うと何が起きるか
引渡しの時期と賃貸借の開始日 売買の引渡しが先で賃貸借の開始が後だと、その間の居住の根拠が曖昧になる
決済日と、敷金・前払い家賃の授受 売買代金から差し引かれるのか、別に振り込むのかで、手元に入る金額が変わる
買戻しの期限と賃貸借の期間 賃貸借が終わったあとに買戻しの期限が来る設計だと、住んでいない家を買い戻すことになる
賃料の改定条項と、売買代金の設定 売却価格を高くするほど賃料も高くなる。改定の特約があれば減額請求の根拠が無くなる
契約不適合責任の免責と、原状回復の範囲 売却時は免責でも、賃貸借の終了時に原状回復を求められる設計になっていることがある

買戻しを定めるなら、権利の形を書面で確かめてください。民法579条の買戻しの特約は、不動産の売主が売買契約と同時にした特約によるもので、買主が支払った代金および契約の費用を返還して売買の解除をする仕組みです。買戻しの期間は10年を超えることができず、定めたときは後から伸長できません(同法580条1項・2項)。売買契約と同時に登記すれば第三者に対抗できます(同法581条1項)。再売買の予約(同法556条)とは効力が違います。

署名の前にそろえておくもの

二通の書面を突き合わせるには、当日に初めて見る状態では間に合いません。事前に受け取っておくものを整理します。

受け取るもの 根拠・目的
定期建物賃貸借の事前説明書面 更新がなく期間の満了で終了する旨を記載した書面。交付と説明がなければ、更新がない旨の定めは無効(借地借家法38条3項・5項)
重要事項説明書 宅地建物取引士による説明。登記された権利の種類と内容、法令に基づく制限などが記載される(宅地建物取引業法35条1項)
売買契約書の案 37条1項の記載事項がそろっているかを事前に確認する
賃貸借契約書の案 期間、改定の特約、中途解約、原状回復の範囲を読む
登記事項証明書 抵当権の有無と所有者を自分で確かめる。何人も交付を請求できる(不動産登記法119条1項)

契約前に決めておく項目はリースバックで後悔しないために、申込から契約までの手順はリースバックの申込から入金までの流れ、契約の種類による違いは普通借家と定期借家の違いにまとめています。2026年10月1日から施行される国土交通省の解釈・運用の考え方はリースバックに国のガイドラインができたで扱いました。

よくある質問

リースバックの契約書は何通ですか

売買契約書と賃貸借契約書の二通が基本です。買戻しを定める場合は、その内容が売買契約書の特約として書かれるか、別の書面になります。

契約書はいつもらえますか

宅地建物取引業者が自ら当事者として売買契約を締結したときは、相手方に遅滞なく書面を交付しなければならないとされています(宅地建物取引業法37条1項)。定期建物賃貸借にする場合の事前説明書面は、契約の前に交付して説明する必要があります(借地借家法38条3項)。

敷金は必ず返ってきますか

民法622条の2は、賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたときなどに、受け取った敷金の額から賃借人の債務の額を控除した残額を返還しなければならないと定めています。未払いがあれば差し引かれます。

契約書に書いていない約束は有効ですか

口頭の合意も契約として成立しうるものですが、あとで内容を証明できません。とくに定期建物賃貸借では、更新がない旨の定めについて書面と説明が要件とされています(借地借家法38条1項・3項・5項)。条件は書面に残してもらってください。

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