リースバックの契約が定期借家だと、期間が来れば終わります。そこで「死ぬまで住める終身建物賃貸借にしてもらえないか」という発想が出ますが、これは当事者の合意だけでは結べません。高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)第52条が、都道府県知事の認可を受けた事業者が、公正証書による等書面で契約するときに限って認めている制度だからです。さらに第57条は住宅そのものに基準を課しており、段差のない床や介助用の車椅子で移動できる幅の廊下が求められます。2026年10月23日にe-Gov法令検索で条文を確認しました。
先に要点
- 終身建物賃貸借は、第52条の認可を受けた「終身賃貸事業者」が公正証書による等書面で契約するときに限って結べる。認可は都道府県知事(機構・都道府県が事業者の場合は国土交通大臣)が出す。
- 対象の賃借人は60歳以上で、同居する者がないか、同居する者が配偶者または60歳以上の親族である場合に限られる。
- 認可の基準(第54条)は7区分。権利金その他の借家権の設定の対価を受領しないことが3号に入っている。
- 住宅側にも基準があり(第57条)、加齢対応構造等として段差のない床、浴室等の手すり、介助用の車椅子で移動できる幅の廊下などが国土交通省令で定められる。
- 仮入居を希望する申出があれば、終身建物賃貸借に先立って1年以内の定期建物賃貸借をすることが認可の基準になっている(第54条1号ただし書・2号)。
- 確認したのは令和7年10月1日施行の現行版(令和六年法律第四十三号による改正後)。
合意だけでは結べない。第52条が認可を条件にしている
借地借家法30条は、同法の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものを無効としています。「賃借人が死亡したら終わる」という定めも、本来はこれに引っかかります。それを例外として認めているのが高齢者住まい法第52条1項です。
条文は、終身にわたって住宅を賃貸する事業(終身賃貸事業)を行おうとする者が「当該終身賃貸事業について都道府県知事の認可を受けた場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、借地借家法第三十条の規定にかかわらず」、賃借人が死亡した時に終了する旨を定めることができる、としています。認可と書面の2つがそろって初めて成立する建て付けです。
| 条件 | 条文の内容 |
|---|---|
| 事業者 | 終身賃貸事業について都道府県知事の認可を受けた者(機構または都道府県が事業者の場合は国土交通大臣の認可) |
| 賃借人 | 自ら居住するため住宅を必要とする60歳以上の者で、賃借人となる者以外に同居する者がないもの、または同居する者が配偶者もしくは60歳以上の親族であるもの。その配偶者も賃借人になれる |
| 契約の方式 | 公正証書による等書面。契約の内容を記録した電磁的記録によってされたときは書面によってされたものとみなされる(第52条2項) |
| 効果 | 借地借家法第30条にかかわらず、賃借人が死亡した時に終了する旨を定められる |
リースバックの買主は不動産会社ですが、その会社が終身賃貸事業の認可を持っているとは限りません。認可は事業ごとに受けるもので、第56条は認可を受けた事業の変更にもあらためて認可を求めています。手続きの重い制度です。
認可の基準は7区分。3号で「権利金を受領しない」ことが要る
第54条は、都道府県知事が認可できる場合の基準を7つ並べています。事業者が満たすべき内容なので、利用する側はこの7つが満たされる前提で話が進んでいるかを確かめることになります。

| 号 | 基準の内容 |
|---|---|
| 1号 | 公正証書による等書面で契約し、賃借人の死亡に至るまで存続し、死亡した時に終了する賃貸借をすること。ただし仮入居のために先立って定期建物賃貸借(1年以内)をする場合はこの限りでない |
| 2号 | 賃借人となろうとする者から仮に入居する旨の申出があった場合は、終身建物賃貸借に先立って定期建物賃貸借をすること |
| 3号 | 賃貸の条件が、権利金その他の借家権の設定の対価を受領しないものであること、その他国土交通省令で定める基準に従い適正に定められること |
| 4号 | 賃貸住宅の整備をして事業を行う場合は、整備工事の完了前に敷金を受領せず、終身にわたって受領すべき家賃の全部または一部を前払金として一括して受領しないこと |
| 5号 | 前払金を受領する場合は、算定の基礎が書面で明示され、返還債務を負うことになる場合に備えて必要な保全措置が講じられること |
| 6号 | 賃貸住宅の管理の方法が国土交通省令で定める基準に適合すること |
| 7号 | 基本方針(市町村・都道府県の高齢者居住安定確保計画がある場合はそれも含む)に照らして適切なものであること |
3号の「権利金その他の借家権の設定の対価を受領しない」は、リースバックの実務で効きます。家賃とは別に一時金を取る設計にすると、認可の基準から外れます。4号・5号の前払金の扱いも、終身分の家賃を一括で前払いさせる売り方を制限しています。
住宅側の基準で、普通の持ち家は引っかかりやすい
利用する側にとっていちばん現実的な壁は第57条です。認可事業者が終身賃貸事業の用に供する賃貸住宅は、2つの基準に適合しなければなりません。

第57条1項が求める住宅の基準
ここがリースバックで引っかかる
2号の加齢対応構造等は、バリアフリー改修をしていない一般の戸建てやマンションでは満たさないことがあります。段差のない床と、介助用の車椅子で移動できる幅の廊下の2つは、後から直すと工事の規模が大きくなります。
つまり「自宅をリースバックして、そのまま終身建物賃貸借に切り替える」という使い方は、住宅の構造の段階で成立しないことがあります。この記事では、国土交通省令が定める具体的な数値(廊下の幅など)までは確認していません。該当しそうなら、都道府県の担当窓口で基準を確認してください。
先に定期借家で入る道が条文に書かれている
第54条1号のただし書と2号は、仮入居のしくみを認可の基準として定めています。賃借人となろうとする者から仮に入居する旨の申出があった場合は、終身建物賃貸借に先立って定期建物賃貸借をすることが求められます。この定期建物賃貸借は1年以内の期間を定めたものに限られます。
リースバックの文脈では、最初に定期借家で入り、条件が整った段階で終身建物賃貸借に移る、という順序が制度上は想定されていることになります。ただし移れるかどうかは認可と住宅の基準しだいです。定期借家そのものの読み方は定期借家契約とは?に、終身建物賃貸借の終わり方は終身建物賃貸借とは?にまとめています。
| 項目 | 一般的なリースバックの賃貸借 | 終身建物賃貸借 |
|---|---|---|
| 結ぶのに要るもの | 当事者の合意(定期借家なら書面による説明) | 都道府県知事の認可+公正証書による等書面 |
| 賃借人の年齢 | 条文上の制限なし | 60歳以上 |
| 同居できる人 | 契約による | 配偶者または60歳以上の親族 |
| 住宅の基準 | 条文上の基準なし | 加齢対応構造等の基準に適合すること |
| 権利金 | 契約による | 受領しないことが認可の基準 |
| 終わり方 | 普通借家は正当事由、定期借家は期間満了 | 賃借人が死亡した時 |
終身建物賃貸借についてよくある質問
リースバックの契約を終身建物賃貸借にしてもらえますか
買主が終身賃貸事業について都道府県知事の認可を受けていなければ結べません。高齢者住まい法第52条1項が、認可を受けた場合に公正証書による等書面で契約するときに限って認めている制度だからです。
何歳から使えますか
60歳以上です。条文は「自ら居住するため住宅を必要とする高齢者(六十歳以上の者であって、賃借人となる者以外に同居する者がないもの又は同居する者が配偶者若しくは六十歳以上の親族であるものに限る。)」と定義しています。その配偶者も賃借人になれます。
家にバリアフリーの工事が要りますか
第57条1項2号が、加齢対応構造等として段差のない床、浴室等の手すり、介助用の車椅子で移動できる幅の廊下などを国土交通省令の基準に適合させることを求めています。具体的な数値は国土交通省令で定められるため、都道府県の窓口で確認してください。
家賃を全額前払いできますか
賃貸住宅の整備をして事業を行う場合は、整備工事の完了前に敷金を受領せず、終身にわたって受領すべき家賃の全部または一部を前払金として一括して受領しないことが認可の基準です(第54条4号)。前払金を受領する場合は算定の基礎の書面明示と保全措置が要ります(5号)。
先に普通に借りてから切り替えられますか
仮に入居する旨の申出があった場合は、終身建物賃貸借に先立って1年以内の定期建物賃貸借をすることが認可の基準に入っています(第54条1号ただし書・2号)。制度としては仮入居の段階が想定されています。
この記事が参照した一次情報
- e-Gov法令検索「高齢者の居住の安定確保に関する法律 第52条(事業の認可及び借地借家法の特例)」(2026年10月23日に表示、令和7年10月1日施行版)
- e-Gov法令検索「同法 第54条(認可の基準)」(2026年10月23日に表示)
- e-Gov法令検索「同法 第57条(賃貸住宅の基準等)」(2026年10月23日に表示。第56条の事業の変更、第58条以下の解約の規定を含む)














