終身建物賃貸借とは?死亡まで続く借家が法律にある|貸主から解約できるのは2つの場合だけ

濃い紫の背景に、定期借家は期間満了で終了・終身建物賃貸借は死亡まで存続という2つの箱を横線でつないだ分岐図のアイキャッチ

先に要点

  • 借家契約には、定期借家のほかに終身建物賃貸借という型があります。賃借人の死亡に至るまで存続し、死亡した時に終了する契約で、根拠は高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成13年法律第26号)です。
  • 誰でも結べるわけではありません。事業者が都道府県知事の認可を受けていることが前提で、賃借人は60歳以上、同居者は配偶者か60歳以上の親族に限られます(52条)。
  • 事業者からの解約は、法が挙げる2つの場合に限られ、しかも都道府県知事の承認が要ります。借地借家法28条の正当事由の規定は適用されません(59条)。
  • 賃借人が亡くなっても、同居していた配偶者または60歳以上の親族が1か月以内に申し出れば、事業者は契約をしなければならないと定められています(63条)。

リースバックで最も重く残る不安は「いつまで住めるのか」です。多くの契約が定期借家で結ばれるため、期間が満了すれば終わり、再契約するかどうかは買主の判断に委ねられます。この不安に正面から答える制度が、別の法律に用意されています。リースバックそのものの制度ではありませんが、住み続ける仕組みを比べるうえで知っておく価値があります。

終身建物賃貸借とは何か

条文は「賃借人の死亡に至るまで存続し、かつ、賃借人が死亡した時に終了するもの」と定義しています。普通借家でも定期借家でもない、第三の型です。

(事業の認可及び借地借家法の特例)高齢者の居住の安定確保に関する法律第五十二条(抜粋)

自ら居住するため住宅を必要とする高齢者(六十歳以上の者であって、賃借人となる者以外に同居する者がないもの又は同居する者が配偶者若しくは六十歳以上の親族…であるものに限る。)又は当該高齢者と同居するその配偶者を賃借人とし、当該賃借人の終身にわたって住宅を賃貸する事業…を行おうとする者…は、当該終身賃貸事業について都道府県知事…の認可を受けた場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、借地借家法第三十条の規定にかかわらず、当該終身賃貸事業に係る建物の賃貸借…について、賃借人が死亡した時に終了する旨を定めることができる。

出典:e-Gov法令検索「高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成十三年法律第二十六号)」第52条(2026年10月9日に条文を取得)

e-Gov法令検索の高齢者の居住の安定確保に関する法律のページの画面。事業の認可及び借地借家法の特例の見出しで第五十二条が表示され、続いて第五十三条の事業認可申請書、第五十四条の認可の基準として終身建物賃貸借の定義が並んでいる
出典:e-Gov法令検索「高齢者の居住の安定確保に関する法律」第52条ほか(2026年10月9日に表示を確認)。

借地借家法30条は、同法の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものを無効とする条文です。「死亡したら終わる」という定めは本来そこに引っかかりますが、認可を受けた事業に限って特例が認められています。だからこそ、誰でも勝手に結べる契約ではありません。

認可の基準は54条にあり、権利金その他の借家権の設定の対価を受領しないこと、整備工事の完了前に敷金や前払金を一括で受け取らないことなどが並びます。住宅そのものにも基準があり、57条は段差のない床、浴室等の手すり、介助用の車椅子で移動できる幅の廊下といった構造・設備を求めています。

リースバックの定期借家と並べると差がはっきりする

リースバックで一般的な定期借家と、終身建物賃貸借を同じ項目で比べます。

比べる点 定期借家(リースバックで一般的) 終身建物賃貸借
終わり方 期間の満了で終了。更新はない 賃借人が死亡した時に終了
住み続けられるか 再契約に応じるかは貸主の判断 死亡に至るまで存続する
貸主からの解約 期間内の解約は特約の範囲 法が挙げる2つの場合に限られ、知事の承認が必要(59条)
借地借家法28条(正当事由) 定期借家では更新の問題が生じない 59条1項の解約申入れには適用しない(59条2項)
賃料の増減請求 特約があれば借地借家法32条より特約が優先 借賃改定の特約があるときは32条を適用しない(64条)
同居者の保護 契約の相手方でなければ原則として権利はない 配偶者または60歳以上の親族は申出により契約できる(63条)
年齢の制限 なし(事業者ごとの条件はある) 60歳以上。同居者も配偶者か60歳以上の親族に限る(52条)
事業者の要件 宅地建物取引業の免許 都道府県知事の認可(52条)

出典:高齢者の居住の安定確保に関する法律52条・59条・63条・64条、および借地借家法の条文から整理した表です(e-Gov法令検索で2026年10月9日に条文を取得)。定期借家側は一般的な契約の形で、個別の契約内容は事業者ごとに異なります。

定期借家の中途解約や賃料改定の扱いは、借地借家法38条7項の3条件と32条の増減請求と38条9項で詳しく扱っています。どちらの型でも「特約が優先する場面がある」点は共通で、違うのは終わり方と同居者の扱いです。

貸主から終わらせられる場面は2つしかない

終身建物賃貸借の強さは、解約の条文にはっきり出ています。

(認可事業者による終身建物賃貸借の解約の申入れ)同法第五十九条

終身建物賃貸借においては、認可事業者は、次の各号のいずれかに該当する場合に限り、都道府県知事の承認を受けて、当該終身建物賃貸借の解約の申入れをすることができる。

一 認可住宅の老朽、損傷、一部の滅失その他の事由により、家賃の価額その他の事情に照らし、当該認可住宅を…適切な規模、構造及び設備を有する賃貸住宅として維持し、又は当該賃貸住宅に回復するのに過分の費用を要するに至ったとき。

二 賃借人…が認可住宅に長期間にわたって居住せず、かつ、当面居住する見込みがないことにより、当該認可住宅を適正に管理することが困難となったとき。

2 借地借家法第二十八条の規定は、前項の解約の申入れについては、適用しない。

出典:e-Gov法令検索「高齢者の居住の安定確保に関する法律」第59条(2026年10月9日に条文を取得)

建物が傷んで回復に過分の費用がかかる場合と、賃借人が長期間住んでおらず管理が困難になった場合。この2つ以外では貸主から終わらせられません。しかも各号に当たるだけでは足りず、都道府県知事の承認が要ります。

賃借人の側からの解約は60条が4つの場合を挙げています。療養や老人ホームへの入所などやむを得ない事情で居住が困難になったとき、親族と同居するため住む必要がなくなったとき、事業者が是正命令に違反したときは、申入れの日から1か月の経過で終了します。4つ目は、解約の期日を申入れの日から6か月以上先に設定した場合で、この場合はその期日の到来で終了します。

61条は、59条と60条に反する特約で賃借人に不利なものを無効と定めています。契約書に「事業者はいつでも解約できる」と書いてあっても、その部分は効きません。定期借家では特約が広く効くのとは、設計思想が逆です。

残された家族はどうなるか

死亡で終了する契約である以上、同居していた家族の立場が問題になります。法は2段構えで手当てしています。

e-Gov法令検索の高齢者の居住の安定確保に関する法律のページの画面。同居配偶者等の継続居住の保護の見出しで第六十三条が表示され、賃借人の死亡があった場合に同居していた配偶者または六十歳以上の親族が死亡を知った日から一月を経過する日までの間に申出を行ったときは認可事業者は終身建物賃貸借の契約をしなければならないと書かれている
出典:e-Gov法令検索「高齢者の居住の安定確保に関する法律」第63条(2026年10月9日に表示を確認)。

図:賃借人が亡くなったあとの流れ

まず

同居していた人は、死亡があったことを知った日から1か月を経過する日までの間、引き続き住むことができます(62条1項)。その間の家賃は従前と同一です(62条2項)。

申し出る

同居していた配偶者、または60歳以上の親族は、同じ1か月の期間内に、引き続き居住する旨を事業者へ申し出ます(63条1項)。

結果

申出があったとき、事業者はその人と終身建物賃貸借の契約をしなければなりません。応じるかどうかの裁量はありません(63条1項)。

条件

新しい契約の条件は、従前の建物の賃貸借と同一とされます。前払家賃の額についても、算定の基礎が従前と同一であるものとされます(63条3項)。

申出をしなかった場合や、同居者が配偶者でも60歳以上の親族でもない場合は、この保護は働きません。1か月という期限は短く、死亡直後の混乱した時期に重なります。契約時に家族へ伝えておくべき事柄です。

リースバックを検討している人がどう使うか

注意したいのは、この制度がリースバックのために作られたものではないことです。対象は認可を受けた賃貸住宅で、構造や設備の基準もあります。自宅を売ってそのまま住み続けるリースバックで、買主が認可事業者として終身建物賃貸借を結んでくれるとは限りません。

図:問い合わせのときに確かめること

契約の型は何か

普通借家か、定期借家か、終身建物賃貸借か。終身建物賃貸借だと説明されたら、都道府県知事の認可を受けた事業かどうかを確認します。認可がなければこの型では結べません。

定期借家なら、再契約の条件を文書で

回数に制限があるか、年齢で打ち切られるか。口頭の「ずっと住めます」は契約条件ではありません。2026年10月1日施行のガイドラインにより、賃貸借の条件を告げないことは宅建業法上の問題になります。

同居している家族の立場

定期借家では、契約者でない同居者に独立した権利はないのが通常です。終身建物賃貸借の63条のような保護は、制度が違えば存在しません。

賃料の改定の定め

どちらの型でも特約が優先する場面があります。改定の条件が書かれているかを読み、書かれていなければ理由を聞いてください。

リースバックの契約前に何を確かめるかは2026年10月1日施行のガイドラインが義務づけた15項目にまとめています。終身建物賃貸借は選べないことのほうが多い制度ですが、「死亡まで存続する借家が法律に用意されている」という基準を知っていると、提示された定期借家の条件を評価しやすくなります。

よくある質問

終身建物賃貸借とは何ですか

賃借人の死亡に至るまで存続し、死亡した時に終了する建物の賃貸借です。高齢者の居住の安定確保に関する法律52条以下に定めがあり、公正証書による等書面で契約します。

誰でも結べますか

結べません。事業者が都道府県知事の認可を受けていることが前提で、賃借人は60歳以上、同居する人は配偶者または60歳以上の親族に限られます。

貸主から追い出されることはありますか

59条1項が挙げる2つの場合に限られ、さらに都道府県知事の承認が必要です。借地借家法28条の正当事由の規定は適用されません。

契約者が亡くなったら同居の家族は出ていくことになりますか

同居していた配偶者または60歳以上の親族が、死亡を知った日から1か月を経過する日までの間に申し出れば、事業者は契約をしなければならないと定められています(63条1項)。

リースバックでこの契約は使えますか

買主が認可事業者であり、住宅が法の基準に適合していることが前提です。一般的なリースバックは定期借家で結ばれることが多く、この型が選べるとは限りません。提示された契約の型を個別に確認してください。

家賃は上がりますか

借賃の改定に係る特約があるときは、借地借家法32条の規定を適用しないと64条が定めています。特約の内容がそのまま効くことになるため、改定の条件を契約前に読む必要があります。

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