リースバックで土地活用|「売って借り直す」と「売らずに建てて貸す」は別物。所有権が動くかで条文が変わる

「リースバックで土地活用」と検索すると、まったく違う二つの話が同じ言葉で出てきます。ひとつは土地を売って借り直す取引。もうひとつは、土地は売らずに自分で建物を建て、入居する事業者に貸す方式で、土地活用の業界ではこちらを「リースバック方式」と呼ぶことがあります。所有権が動くかどうかが正反対なので、効く条文も税の扱いも別物です。まずこの二つを切り分けます。

先に押さえる三点

土地を売って借り直す形では、所有権が買主に移り、自分は借地権者になります。建物の所有を目的とする土地の賃借権は借地権です(借地借家法2条1号)。

土地を売らずに建物を建てて貸す形では、所有権は動きません。その代わり、新たに建てた建物について固定資産税の納税義務者になります(地方税法343条1項)。

どちらの形でも、相続税が当然に減るわけではありません。小規模宅地等の特例は、相続開始の直前における宅地等の利用区分ごとに限度面積と減額割合が決まっています(国税庁タックスアンサーNo.4124)。

同じ「リースバック」でも、所有権が動くかどうかが違う

比べる点 土地を売って借り直す(セール・アンド・リースバック) 土地を売らずに建てて貸す(土地活用でいうリースバック方式)
土地の所有権 買主へ移る 動かない
建物を所有するのは もとの所有者のまま(土地だけを売る場合) もとの所有者。自分で建てる
手に入るお金 売却代金 賃料収入。建設資金を入居予定の事業者から預かる取り決めをすることがある
効く規定 借地借家法の借地(2条1号、3条、23条) 借地借家法の建物賃貸借(26条、28条、38条)
土地の固定資産税 所有権が移れば、翌年度以降の納税義務者は買主(地方税法343条1項) 引き続き自分。建てた建物の分も加わる
資金を返す義務 ない。売買の代金なので返済は生じない 預かった建設資金は契約に従って返す
このサイトが扱う範囲 扱う 直接は扱わない。土地活用の専門家に相談する領域

以下では、所有権が動くほうの形を条文で見ていきます。もう一方の方式は、建てる建物の企画と資金計画が中心になるため、専門の会社と税理士に当たってください。

土地を売って借り直すと、借地権の話になる

自宅のリースバックでは土地と建物をまとめて売り、建物を借り直します。これに対して、事業用の土地だけを売って借り直す場合は、建物は自分のまま残り、敷地だけを借りる形になります。借地借家法2条1号は、借地権を「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と定義しており、この形がそれに当たります。

借地権の存続期間は30年で、契約でこれより長い期間を定めたときはその期間になります(同法3条)。更新した場合は、最初の更新が20年、その後は10年です(同法4条)。事業用の建物の所有を目的とする場合には、更新のない類型として事業用定期借地権等が用意されています(同法23条)。存続期間を30年以上50年未満とするもの(1項)と、10年以上30年未満とするもの(2項)があり、いずれも契約は公正証書によってしなければなりません(同条3項)。

資料:借地借家法23条(事業用定期借地権等)。3項は契約を公正証書によってしなければならないと定めている
e-Gov法令検索で表示した借地借家法第23条の画面キャプチャ。事業用定期借地権等の存続期間と公正証書によることが書かれている

実際の取引例としては、2024年6月にJLLが発表した、キオクシアの四日市工場の土地65万9,281平方メートルをヒューリックが取得したセール・アンド・リースバックがあります。土地だけの売買で、売却後もキオクシアが工場用の敷地として使い続けるという構造です。詳細はこのニュースの分析にまとめました。

税の扱いは、土地と建物で分かれる

土地の譲渡と貸付けは、消費税法別表第二第1号により非課税です。したがって、土地だけを売る取引では売却代金に消費税がかかりません。土地を貸す場合の地代も原則として非課税です。一方、建物の譲渡は非課税の項目に挙がっていないため、建物を含めて売る場合は建物部分が課税の対象になります。

場面 消費税 根拠
土地を売る 非課税 消費税法別表第二第1号
土地を貸す 原則として非課税。1か月未満の貸付けや駐車場などの施設の利用に伴う場合は除く 同号、国税庁タックスアンサーNo.6201
建物を売る 課税。非課税の項目に挙がっていない 消費税法6条・別表第二
事業用の建物を貸す 課税。住宅の貸付けの非課税は事業用に及ばない 消費税法別表第二第13号
売買契約書 印紙税。軽減後の税額は契約金額の区分ごとに示されている 国税庁タックスアンサーNo.7108

「土地活用は相続税対策になる」という説明は、そのまま当てはまるとは限りません。国税庁タックスアンサーNo.4124の小規模宅地等の特例は、相続開始の直前における宅地等の利用区分ごとに限度面積と減額割合を定めています。貸付事業用宅地等は200平方メートルまで50パーセント、特定事業用宅地等は400平方メートルまで80パーセント、特定居住用宅地等は330平方メートルまで80パーセントです。貸付事業用宅地等がある場合は、限度面積の計算式そのものが変わります。売ってしまえば、その宅地は相続財産に含まれません。

どちらの形でも、契約で決まる部分が大きい

図:二つの形で、あとから効いてくる条件

土地を売って借り直す場合

  • 借地権の種類。普通の借地権か、事業用定期借地権か(借地借家法3条・23条)
  • 存続期間と、期間が終わったあとの扱い
  • 地代の改定に関する条項
  • 建物をどうするか。期間満了時の収去か、買取りの取り決めか
  • 買戻しを定めるなら、その期間(民法580条は買戻しの期間を10年以内としている)

土地を売らずに建てて貸す場合

  • 賃貸借が普通借家か定期建物賃貸借か(借地借家法26条・38条)
  • 賃料の改定に関する特約。定期建物賃貸借で特約があると32条が適用されない(同法38条9項)
  • 入居する事業者が撤退した場合の扱い
  • 預かった建設資金の返し方
  • 建てた建物の固定資産税(地方税法343条1項、賦課期日は1月1日で同法359条)

どちらも長期の契約になります。相手の事業が続く前提で組むため、契約が終わったときに何が残るのかを先に確かめてください。事業用の建物を借りる側の視点は店舗のリースバックとテナント契約で扱っています。

自宅のリースバックを探している場合

ここまでは土地の話でした。自宅を売って住み続ける形を探している場合は、確認する順番が変わります。住める年数を決めるのは賃貸借契約の種類で、定期建物賃貸借なら更新はなく、期間の満了後は再契約の合意が必要です(借地借家法38条1項)。

制度の全体像はリースバックとは、立場ごとの入口はリースバック物件とは、各社の公表条件を同じ項目で並べた一覧はリースバック業者の比較にあります。

よくある質問

土地だけをリースバックすることはできますか

取引としては行われています。2024年6月のJLLの発表では、工場の土地65万9,281平方メートルを対象としたセール・アンド・リースバックが公表されています。建物を自分で所有したまま敷地だけを借りる形になるため、借地権の規定が働きます(借地借家法2条1号)。

土地を貸すと消費税はかかりますか

土地の貸付けは原則として非課税です(消費税法別表第二第1号)。ただし、1か月未満の貸付けや、駐車場などの施設の利用に伴って土地が使用される場合は非課税取引に当たりません(国税庁タックスアンサーNo.6201)。

事業用定期借地権は口頭で決められますか

できません。借地借家法23条3項は、同条1項・2項に規定する借地権の設定を目的とする契約を公正証書によってしなければならないと定めています。

土地活用にすれば相続税は減りますか

当然には減りません。小規模宅地等の特例は利用区分ごとに限度面積と減額割合が決まっており、貸付事業用宅地等は200平方メートルまで50パーセントです(国税庁タックスアンサーNo.4124)。貸付事業用宅地等がある場合は限度面積の計算式が変わります。個別の試算は税理士に確認してください。

自宅のリースバックとは何が違いますか

自宅のリースバックは土地と建物をまとめて売り、建物を借り直す形です。効くのは借地借家法の建物賃貸借の規定です。土地だけを売って借り直す場合は借地の規定になり、存続期間も更新の仕組みも別になります。

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