リースバックとは?いったいどんなサービスのことを指すでしょうか?今回は、リースバックの仕組み・種類をわかりやすく解説します。
リースバックとは?
リースバックとは
正式名称は「セール・アンド・リースバック(sale-and-leaseback)」のことで
- sale = 売却
- leaseback = リース契約で借り直す
ことを意味しています。
現在所有している車、不動産、機械設備などの固定資産をリース業者(リースバック業者)に売却して、その物件をリース契約で借り直すサービスのことを「リースバック(leaseback)」と呼ぶのです。
リースバックの対象になる固定資産
- 不動産
- 一戸建て
- 一棟マンション
- 区分マンション
- 一棟ビル
- 区分事務所
- 区分店舗
- 工場
- 倉庫
- 土地
- ホテル
- 駐車場
- 軽自動車
- 小型自動車
- 普通自動車
- 大型特殊自動車
- 小型特殊自動車
- バイク
- 航空機
- 列車
- ビジネスで利用する設備機器
- 情報機器
- 事務用機器
- 産業機械
- 工作機械
- 土木建設機械
- 医療機器
- 輸送用機器
- 商業用機器
- サービス機器
リースバックの現状
元々は、法人が自社ビルや機械設備をリースバック業者(リース業者)にリースバックすることが一般的な「リースバック」だったのですが、近年
- 持ち家・ご自宅・マイホームをリースバックする「不動産リースバック」
- 自家用車・マイカーをリースバックする「マイカーリースバック」
が台頭し、
個人の方が「マイホームやマイカーを使い続けたいけれども、一時的にお金が必要」という時の選択肢として「リースバック」が選ばれているのです。
リースバック業者も、以前は企業向けのリース業者がサービスの一環として「リースバック」を提供していたのですが、今では「不動産リースバックの専門業者」「マイカーリースバックの専門業者」と、個人の業種に特化したリースバック業者が増えてきています。
ニーズとしては
- 老後資金を確保したいけれども、愛着がある自宅に住み続けたい
- 病気になり一時的に資金が必要になった、ただし、将来的に自宅を買い戻したい
- 経営する会社の資金繰りがピンチなので、自宅を売却して資金調達したいが、家族には内緒なので住み続ける必要がある
→ 「不動産リースバック」を選択
- 当面の生活資金のために、マイカーを売却して資金を得たい、ただし車は必要
- 結婚資金が不足しているため、マイかーを売却して資金を集めたい、ただし愛着のあるマイカーは買い戻したい
→ 「マイカーリースバック」を選択
リースバックの仕組み
リースバックを利用するときには
- 売却
- リース(借りる)
2段階の契約が発生することになります。
売却
自分が保有している資産をリースバック業者に売却します。
売却した方は、売却先のリースバック業者から買取額を受け取ります。
リース(借りる)
売却した資産は、所有権はリースバック業者に移行します。
リースバック業者は、その資産を売却した方にリース契約で貸し付けます。
リースとは
を言います。
レンタルとリースの違いは、主に貸す期間の違いです。
- レンタル:短期(時間、日、週単位での貸出)
- リース:長期(半年~10年での貸出)
リースバックでは、比較的長期の貸し出しを前提として、リースバック業者は、資産を売却した方にそのまま商品を貸し出すのです。
契約後
- 自分が保有している資産をリースバック業者に売却
- 自分が保有していた資産をリースバック業者からリースで借りる
のですから、事実上、自分が保有していた資産は、手元にあるまま、そのまま使えます。
あくまでも、契約・金銭のやり取り・所有権の移転のみが行われるだけで、その資産自体の移動はないのです。
契約手続きと金銭の支払いが終われば、対象の資産をそのまま使って構わないのです。
ただし、リースバック後は、リース料の支払いが発生するため、リース料を支払わなければならなりません。
リース料の支払いが遅延してしまうと、リースされた資産は自分のものではないのですから、返却しなければならない状態になります。
これが「リースバック」の仕組みです。
リースバックのメリット
メリット1.売却時にまとまった資金が手に入る
リースバックは「売却して借りる」サービスですので、売却時にまとまった資金が手に入ります。
そのため、
- 資金繰りが苦しい会社の資金調達
- お金が必要な個人の方の資金調達
に利用されることが多いのです。
メリット2.手元に資産を残したまま、資金が得られる
リースバックの場合は「手元に資産を残したまま、資金が得られる」という特徴があります。
- ご自宅のリースバック → 自宅に住み続けながら、売却して資金を得る
- 自社ビルのリースバック → 自社ビルで営業したままで、売却して資金を得る
- マイカーのリースバック → マイカーを保有したままで、売却して資金を得る
ことができるのです。
単純に、自分が持っている資産との違いは「利用しながら、売却できて、資金調達ができること」と言えます。
メリット3.保有コストが不要になる
リースバックをすると所有権が自分から、リースバック業者に移行する形になります。
例えば
不動産リースバックの場合
- 固定資産税
- 火災保険料
- 地震保険料
- 修繕費用
マイカーリースバックの場合
- メンテナンス費
- 車検整備
- 自動車税
- 自動車保険料
などの所有者が支払っている費用は、リースバック業者が所有者として支払うことになります。(一部、そのまま負担をしなければならない費用もあります。)
保有コストの負担が減るメリットがあります。
メリット4.買戻しができる
リースバックの商品にもよりますが「買戻し(再購入)」できるものが多いです。
一旦は、お金が必要で売却したものの、必要なお金が手に入ったら、そのお金で売却した資産を買い戻して、所有権を取り戻すことができるのです。
愛着がある資産(自宅、マイカー)などは、他のもので補えない価値があるものが少なくありません。
買戻しをすることで、一旦手放した資産(自宅、マイカー)を再び自分のものにすることができるのです。
買戻しのチャンスがあることも、リースバックのメリットと言えます。
メリット5.資産のオフバランス化(スリム化)ができる
とくに法人の場合ですが
資産を保有していると賃借対照表(BS・バランスシート)が大きくなります。
リースバックを利用して、資産を売却すると賃借対照表(BS・バランスシート)から、リースバックした資産額がなくなり、サイズが小さくなります。
これを「資産のオフバランス化」と呼びます。
個人の場合は「資産のオフバランス化」をすることに大きな意味はありません。
しかし、法人の場合は「資産のオフバランス化」をすると
というメリットがあります。
銀行は融資の際に決算数値を見ながら、評価をしますが資産のオフバランス化をすることで
- 自己資本比率が上昇
- 自己資本利益率(ROE:Return on Equity)が上昇
- 総資産利益率(ROA:Return on Assets)が上昇
するため、融資が受けやすくなるのです。
リース料は、損益計算書(PL)に反映され、利益は少なくなってしまいますが、十分にそれ以上のメリットが出てくるのです。
メリット6.資金使途自由
リースバックと言っても、一旦はリースバック業者に売却しているので、売却したお金は何に使っても構いません。
メリット7.最短即日の資金化も可能
リースバックは、査定が完了すればすぐに契約手続きに移ることができるサービスです。
不動産の場合には、現地調査などが必要な分、2日~3日はかかってしまいますが、車の場合には、即日買取ということも可能になります。
ローンとは違って、利用する方の返済能力に関する審査がなく、かつ最短即日というスピードで資金調達ができるので、ローンなどが借りられない方にとってもメリットが大きいのです。
リースバックのデメリット
デメリット1.通常の売却よりは、売却額が安くなる
不動産、車、設備などの資産は、リースバックを利用せずに売却することも可能です。
「通常売却での売却価格」と「リースバックでの売却価格」を比較すると
となってしまいます。
商品によって異なりますが、
というのが相場です。
なぜかというと、購入するリースバック業者としては、購入して所有権を得たのにも関わらず、そのまま貸し出すしか選択肢がないため、制約のない通常購入よりも、自由度がないのです。
自由度がない分、安く買えないとメリットがないことになってしまいます。
- 自宅 → 不動産ポータルサイト
- 車 → 買取サイト
などに売却した方が高く売却できるのです。
ただし、通常売却の場合は、完全にその資産を手放さなければならないデメリットがあります。
デメリット2.リース料が発生する
リースバックでは「売却」して、お金を受け取っているのですから、所有権は「売却した方」から「リースバック業者」に移ります。
所有権を持っているリースバック業者から、リース契約で資産を借りることになるので
当然ですが、リース料(レンタル料)の支払いが遅延すれば、資産は所有権のあるリースバック業者に取り上げられてしまいます。
リースバックのよくある質問
Q.リースバックは、どんな資産でも利用できますか?
できません。
リースバックというのは、あくまでも「売却できること」が条件になってきます。
リースバック業者は、売却できることを前提にリースバックをして、仮に返済がされない場合は、売却して資金を回収する必要があるからです。
売却できない資産は、リースバックできない
ということになります。
売却できない資産とは?
不動産リースバックの場合
- 「住宅ローン > 売却額」という状態の物件
- 売値がつかない違法建築
- 田舎すぎる物件
- 地方の物件
マイカーリースバックの場合
- 「自動車ローン > 売却額」という状態の物件
- 初度登録年月(初度検査年月)より9年を経過する車両
- 走行距離が12万kmを超える車両
- 車検基準を満たしていない車両(車検が切れていてもお申し込み可)
- マイカーローンを滞納している場合(ローン残債があってもお申し込み可)
- 軽乗用、軽貨物、小型乗用、普通乗用、小型貨物、普通貨物以外の区分に該当する車両
などが挙げられます。
とくにローンが残っていて、かつローン残高が見込める売却額よりも多い場合は、債権者である金融機関が売却を了承しないため、リースバックも利用できないので注意が必要です。
また、売却額があまりに少額になるものも対象外になるケースがあります。
Q.リースバックは、誰も利用できますか?
であれば、リースバックは申し込める可能性が高いです。
18歳以上であれば、年齢制限はないものが多く、収入がなくても、利用できるリースバックは少なくありません。
- 一定金額以上で売却できる
- リースバック業者の対象の種類の固定資産である
という条件がクリアしていれば、利用する方自身の収入、返済能力や年齢などはあまり重要ではないのです。
Q.リース契約途中での中途解約は可能ですか?
リースバックによって異なります。
- 一般的なリースバックの場合 → 原則不可(中途解約金(規定損害金)を支払うことで解約可能)
- マイカーリースバックの場合 → 原則不可(中途解約金(規定損害金)を支払うことで解約可能)
- 不動産リースバックの場合 → 契約途中での退去が認められているケースがある
中途解約をする可能性がある場合は、リースバックの契約時に「中途解約の可否」「中途解約する場合の費用負担」について、確認しておくことが必要になります。
Q.リース契約終了後はどうなりますか?
リースバックのリース契約は、期間を決めて契約することが一般的です。
リース契約の契約期間が終了した場合には
- 返却する(不動産リースバックの場合は、退去する)
- 再契約する(再度、リース契約を締結する)
- 買い戻す
の3つの選択肢があります。
ただし、「買戻し」については、リースバックの種類やリースバック業者によって、できるものとできないものがあります。
「リースバックには、どんな種類がありますか?」
「リースバックのメリットデメリットを教えてください。」