リースバックは周囲に知られる?登記は「何人も」600円で取れる。契約書の中身は121条3項で「正当な理由」が要る

濃い藍色の背景に「リースバックは周囲に知られるか」のラベルと「登記は何人も請求できる。書類の中身は『正当な理由』が要る」という見出し、不動産登記法第119条第1項と第121条第3項の要旨を並べた2枚のパネルを配置したアイキャッチ

先に要点

  • 所有権が移ったという事実は隠せない。不動産登記法第119条第1項が「何人も、登記官に対し、手数料を納付して」登記事項証明書の交付を請求できると定めているためである。
  • 手数料は法務省の一覧で、登記事項証明書が書面請求600円、オンライン請求・送付520円、オンライン請求・窓口交付490円(令和7年4月1日〜)。誰でもこの額で取れる。
  • いっぽう、申請書などの附属書類は同法第121条第3項により、正当な理由があるときに限り、理由があると認められる部分だけ閲覧が認められる。
  • 生命・身体に危害が及ぶおそれがある場合などには、同法第119条第6項により、申出をすれば住所に代わる事項を記載する扱いがある。
  • 登記以外で気づかれる経路は、売却前の内見、建物診断や補修の工事、郵便物の宛名、転売時の不動産広告の4つに整理できる。登記より先に人目につくのはこちらである。

登記は「何人も」請求できる

リースバックをすると、家の所有者が自分から買主の会社に変わります。その事実が第三者に分かるかどうかは、気持ちの問題ではなく制度の問題です。答えは条文に書かれています。

e-Gov法令検索の不動産登記法第百十九条の条文の画面。登記事項証明書の交付等という見出しの下に、何人も登記官に対し手数料を納付して登記記録に記録されている事項の全部または一部を証明した書面の交付を請求することができるという第一項から、住所が明らかにされることにより人の生命もしくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合の扱いを定めた第六項までが表示されている
出典:e-Gov法令検索「不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)」第119条(2026年10月8日に表示を確認)。

第百十九条 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の全部又は一部を証明した書面(以下「登記事項証明書」という。)の交付を請求することができる。

不動産登記法第119条第1項(e-Gov法令検索のAPIで取得した条文、2026年10月8日に確認)

「何人も」と書かれています。利害関係があることを示す必要も、理由を述べる必要もありません。第5項は、請求を「不動産の所在地を管轄する登記所以外の登記所の登記官に対してもすることができる」としており、近所の法務局まで出向く必要すらない設計です。

費用も公開されています。法務省が出している登記手数料の一覧(令和7年4月1日〜)は次のとおりです。

区分 請求の方法 手数料額
登記事項証明書(謄抄本) 書面請求 600円
登記事項証明書(謄抄本) オンライン請求・送付 520円
登記事項証明書(謄抄本) オンライン請求・窓口交付 490円
登記事項要約書の交付・登記簿等の閲覧 — 500円
地図等情報 書面請求 500円

表の時点:2026年10月8日。法務省「登記手数料について」(令和7年4月1日〜)の記載です。1通の枚数が50枚を超える場合、超える枚数50枚までごとに登記事項証明書は100円が加算されます。

つまり、知りたい人が600円を払えば所有者が変わったことは分かる、というのが出発点です。隠すことを前提に設計するのではなく、何が見えて何が見えないかを分けて考えるほうが現実的です。

見えるもの、見えにくいもの

同じ登記でも、公開の度合いは資料によって違います。第121条は附属書類について、図面と、それ以外とを書き分けています。

e-Gov法令検索の不動産登記法第百二十一条の条文の画面。登記簿の附属書類の写しの交付等という見出しの下に、政令で定める図面については何人も交付と閲覧を請求できるという第一項と第二項、それ以外の附属書類については正当な理由があるときに限り正当な理由があると認められる部分の閲覧を請求できるという第三項が表示されている
出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」第121条(2026年10月8日に表示を確認)。

3 何人も、正当な理由があるときは、登記官に対し、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して、登記簿の附属書類(第一項の図面を除く。)の全部又は一部(その正当な理由があると認められる部分に限る。)の閲覧を請求することができる。

不動産登記法第121条第3項(e-Gov法令検索のAPIで取得した条文、2026年10月8日に確認)

資料 誰が見られるか 根拠
登記記録(所有者・原因・日付) 何人も。理由は不要 第119条第1項
登記記録の概要を記載した書面 何人も。理由は不要 第119条第2項
地図・建物所在図など 何人も。理由は不要 第120条第1項・第2項
附属書類のうち政令で定める図面 何人も。理由は不要 第121条第1項・第2項
附属書類のうち上記の図面以外 正当な理由があるときに限り、理由があると認められる部分だけ 第121条第3項

表の時点:2026年10月8日。不動産登記法第119条から第121条までの条文を読み取って整理したものです。

第119条第6項には別の配慮もあります。登記記録に記録されている者(自然人に限る)の住所が明らかにされることにより、人の生命もしくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合などとして法務省令で定める場合において、その者からの申出があったときは、住所に代わるものとして法務省令で定める事項を記載しなければならない、とされています。一般的な「知られたくない」とは次元が違う規定ですが、制度として住所の扱いに例外が置かれていることは知っておいてよい点です。

登記より先に人目につく4つの場面

実際に「近所の人が気づくかもしれない」と感じるのは、登記簿を見られることよりも、日常の動きのほうです。リースバックの流れに沿って並べると4つあります。

図:周囲の目に触れやすい場面

査定・内見で人が出入りする

買取価格を決める段階で、担当者が建物を見に来ます。複数社に出せばその回数も増えます。

建物の補修や設備の工事が入る

買主側が賃貸に出す前提で手を入れることがあります。外回りの工事は特に目立ちます。

郵便物の宛名が変わる

固定資産税の納税通知書は、1月1日時点の所有者に届きます。売却の翌年から宛先が変わります。

買主が転売するときに広告が出る

投資用物件として市場に出れば、住所と間取りが公開されます。住んだまま売りに出される形です。

このうち、自分でコントロールできるのは最初の2つです。査定の社数と日程をまとめる、工事の要否を契約前に確認する、といった調整の余地があります。後半の2つは契約内容と買主の方針で決まります。

買主が第三者へ転売した場合でも、住み続ける権利そのものは消えません。借地借家法第31条により、建物の引渡しを受けていれば新しい所有者に賃借権を主張できます。ただし「転売されない」という保証とは別の話です。詳しくはリースバックした家が転売されたら住み続けられる?借地借家法31条の引渡しと民法605条の2をご覧ください。

住み続けている限り、見た目は変わらない

リースバックの特徴は、所有者が変わっても住人が変わらないことです。表札、郵便受け、車庫の使い方、町内会との関わりは、そのまま続きます。住民票の住所も変わりません。

図:売却の前後で変わるもの・変わらないもの

変わる

登記記録の所有者。固定資産税の納税義務者。家賃の支払いが発生すること。建物の修繕について貸主と相談が必要になること。

変わらない

住所と住民票。表札と郵便受けの名前。日々の生活。近隣との関係。

条件しだい

工事の有無、転売されるかどうか、賃貸借の期間。いずれも契約で決まる部分です。

固定資産税については、売却した年の精算方法を契約で決めるのが通例です。日割りの考え方はリースバックの固定資産税精算|日割り計算と売却後の納税に整理しています。

なお、2026年10月1日から、リースバックを扱う宅地建物取引業者には賃貸借の条件について説明すべき項目が定められました。契約前に確かめられることが増えています。詳細はリースバックのガイドラインは何を義務づけた?2026年10月1日施行、賃貸借15項目が宅建業法47条1号の対象ににまとめました。

よくある質問

リースバックしたことは近所に分かりますか

所有者が変わった事実は、登記事項証明書を取れば誰でも確認できます。不動産登記法第119条第1項が「何人も」請求できると定めているためです。ただし、取るには手数料と手間がかかるため、何もきっかけがなく調べられるとは限りません。

登記事項証明書はいくらで取れますか

法務省の一覧(令和7年4月1日〜)では、書面請求が600円、オンライン請求・送付が520円、オンライン請求・窓口交付が490円です。

売買価格や契約書の中身まで見られますか

附属書類のうち政令で定める図面以外は、不動産登記法第121条第3項により、正当な理由があるときに限り、理由があると認められる部分だけが閲覧の対象になります。誰でも中身を見られるわけではありません。

住所を知られたくない事情があります

不動産登記法第119条第6項は、住所が明らかにされることにより人の生命もしくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合などとして法務省令で定める場合に、本人の申出があれば住所に代わる事項を記載すると定めています。該当するかどうかは法務局にご相談ください。

家族に知られずに進められますか

所有者が単独名義であっても、査定や内見で人が出入りします。共有名義であれば共有者の関与が避けられません。同居の家族に伏せたまま進めることは、現実には難しいと考えたほうが安全です。

この記事で参照した一次情報

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