マイホームを持っていて、資金が必要になる状況では「不動産リースバック」と「リバースモーゲージ」が選択肢に上がることが少なくありません。では、不動産リースバックとリバースモーゲージは何が違うのか?どちらを選ぶべきなのか?を比較しながら、丁寧に解説します。
目次
不動産リースバックとリバースモーゲージの仕組み
不動産リースバックとは
を言います。
です。
不動産リースバックの特徴
- 所有権は、リースバック業者に移る
- 住宅ローンの残債よりも、リースバック業者の買取査定が高くないと利用できない
- 利用時に、売却金額が手に入る
- 売却金額は、市場価格の5割~7割が相場
- 利用後は、賃貸契約で元自宅に住み続ける
- 利用後は、家賃の支払いが発生する
- 利用後は、所有権がなくなるため、固定資産税や保険料(火災保険・地震保険・家財保険)、修繕費の負担が不要になる
- 買戻し(再購入)ができる
リバースモーゲージとは
を言います。
となっています。
リバースモーゲージの特徴
- 所有権は、ご自身のまま
- 住宅ローンの残債よりも、銀行の不動産価値の査定額が高くないと利用できない
- 利用時に、借入金額が手に入る
- 借入可能金額(限度額)は、市場価格の7割~8割が相場
- 利用後も、引き続き、自宅に住み続ける
- 利用後は、「利払い型」の場合は、ローンの支払いが発生する
- 利用後は、「利払いなし型」の場合は、ローンの支払いが発生しない
- 利用後も、所有権が維持されるため、固定資産税や保険料(火災保険・地震保険・家財保険)、修繕費の負担がが必要になる
- 返済は、利用者の死亡時の一括返済で「担保の任意売却による返済」「配偶者による借り換え」「相続人による返済」が選べる
不動産リースバックとリバースモーゲージ比較
比較項目 | リースバック | リバースモーゲージ |
---|---|---|
利用者 | 持ち家を持っている方で、住宅ローンの残債よりも物件の評価額が高い方 | 持ち家を持っている方で、住宅ローンの残債よりも物件の評価額が高い方 一定の年齢以上の方 ※その他収入条件があるケースがある |
資金調達可能額 | 物件の評価額の5割~7割 | 物件の評価額の7割~8割 |
資金調達方法 | 売却時に一括受取 | 借入時に一括借入 カードローンで自由なタイミングで借入 年金タイプで毎月一定額を借入 |
契約期間 | 売却時のみ売買契約 その後は賃貸契約が2年ごとに更新 |
終身 |
物件の所有権 | 所有権なし リースバック業者に移行 |
所有権あり |
利用後の返済 | 家賃の支払いが発生 | ローンの利息返済が発生 死亡時に全額の一括返済が必要 |
利用後の選択肢 | 住み続ける 退去する 買い戻す(再購入する) |
死亡時に一括返済 担保の任意売却による返済 配偶者による借り換え 相続人による返済 |
審査 | 甘い | やや甘い リースバックよりは厳しい設定 |
資金使途 | 自由 | 自由 ※事業性資金、投資資金を除く |
提供主体 | リースバック業者(大手企業が多い) | 銀行 |
諸費用 | 事務手数料 不動産仲介手数料 登記費用 印紙税 |
事務手数料 担保管理料 登記費用 印紙税 |
利用後、負担する費用 | 家賃(リース料) | 利払い型の場合はローン返済 固定資産税 火災保険料、地震保険料、家財保険料 修繕費 |
価格下落リスク | なし | あり |
金利変動リスク | なし ※家賃の見直しリスクあり |
あり |
不動産リースバックとリバースモーゲージの大きな違い
違い1.所有権の違い
大きく分類すれば
- リースバック → 売却
- リバースモーゲージ → ローンによる借入
という違いがあります。
この違いがあるため、所有権については
- リースバック → 売却:所有権がなくなる(リースバック業者へ所有権が移る)
- リバースモーゲージ → ローンによる借入:所有権はそのまま
という特徴があります。
所有権の有無で発生すること
維持費用が違う
リースバックの場合は、所有権を手放して賃貸契約になるため
- 固定資産税
- 保険料(火災保険・地震保険・家財保険)
- 修繕費の負担
等が不要になります。
リバースモーゲージの場合は、所有権が維持されるので
- 固定資産税
- 保険料(火災保険・地震保険・家財保険)
- 修繕費の負担
等が必要になります。
ご家族、親戚、知人、ご近所にバレる可能性が違う
リースバックでも、住み続けているのですから、自分で言わない限りは、家族、親戚、知人、ご近所にリースバックをしたことがバレるリスクは、ほとんどありません。
しかしながら、所有権が移ってしまっているため、誰でも閲覧できる不動産登記情報を見れば、所有権がないことがバレてしまうのです。
リバースモーゲージの場合は、住み続けていて、かつ所有権も維持されているのですから、家族、親戚、知人、ご近所にバレる心配がありません。
気分が違う
- 不動産リースバック:「自宅とは言え、賃貸物件で借りている」
- リバースモーゲージ:「借金があるとは言え、マイホームであることに違いはない」
という違いがあります。
本人的には、マイホームを買うときは、人生最大の買い物であり、達成感や自信もあったかと思います。リースバックでは所有権を手放してしまうため、この自信などがなくなってしまうデメリットもあるのです。
リバースモーゲージであれば、借金があるとは言え、所有権は自分のものですから、マイホームと胸を張って言えるメリットがあります。
違い2.返済負担の違い
不動産リースバック利用後の費用負担
不動産リースバックの場合は、売却後に賃貸契約を締結することになるため
- 家賃(リース料)
が発生します。
家賃(リース料)の設定はリースバック業者によって異なりますが、相場は
です。
1,500万円で売却できた場合は
となります。
リバースモーゲージ利用後の費用負担
リバースモーゲージの場合は「利払いあり型」「利払いなし型」を選ぶことが可能です。
「利払いあり型」の場合は、毎月、利息分の返済が発生します。
相場は
です。
1,500万円、金利4.0%で借入できた場合は
となります。
「利払いなし型」を選んだ場合は、毎月の利息返済がなくなります。
その代わり「利払いあり型」と比較して
- 借入が可能額が大幅に少なくなる(3分の1~4分の1)
- 借入の審査条件が厳しくなる
というデメリットがあります。
違い2.利用対象条件の違い
不動産リースバックの場合は
- 年齢制限は、ほぼなし
- 年収制限なし
で利用できます。
クリアしなければならない条件としては
- リースバック業者の対象地域の物件であること
- 売却査定額が住宅ローン残高よりも大きいこと
- 売却査定額が一定以上の金額であること
の3点です。
基本的に不動産リースバックというのは「売却」ですので、売却する人の条件はほぼなく、売却する物件が一定条件をクリアしていれば、利用可能なサービスとなります。
リバースモーゲージの場合は
- 年齢制限あり
- 年収制限あり
という制限が厳しく
かつ物件としても
- リバースモーゲージの対象地域の物件であること
- 売却査定額が住宅ローン残高よりも大きいこと
- 売却査定額が一定以上の金額であること(リースバックよりも高額な査定額が必要)
という条件をクリアしなければなりません。とくに「利払いなし型」は、「利払いあり型」よりも条件が厳しくなります。
審査の厳しさは
- 「利払いなし型」のリバースモーゲージ
- 「利払いあり型」のリバースモーゲージ
- 不動産リースバック
という順番になるのです。
審査の通りやすいのは「不動産リースバック」です。
違い3.受け取れる金額の違い
不動産リースバックの場合は
市場価格の5割~7割
が買取価格の相場になります。
不動産リースバック業者からすれば
- 不動産を自由に使えなくなる
- 貸す人も決まってしまう
- 買戻しを希望されたら、応じなければならない
という不利な要素が多いので、市場価格よりも安くなってしまうのです。
高値で売却するためには、複数の不動産リースバック業者で相見積もりすることが有効です。
リバースモーゲージの場合は
市場価格の7割~8割
が融資限度額となります。
銀行の場合は、担保にする不動産に掛け目という割合を掛けて、担保価値を算定するのですが、7割がだいたいの相場なのです。
- 「利払いなし型」のリバースモーゲージ:市場価格の7割
- 「利払いあり型」のリバースモーゲージ:市場価格の8割
というのが相場と考えて良いでしょう。
ただし、「利払いなし型」の場合は、今後の支払い利息も、この限度額に含まれてしまうので、実際に借りられる金額は「市場価格の2割」程度まで下がってしまうので注意が必要です。
違い4.資金使途の違い
不動産リースバックは「売却」ですので、売却して受け取ったお金を何に使っても自由です。
一方で、リバースモーゲージの場合は、あくまでも「融資」ですので、資金使途自由と書いてあっても、「投資資金」「事業性資金」はNGになっていることが多いのです。
- 不動産リースバックの資金使途:自由
- リバースモーゲージの資金使途:事業性資金、投資資金を除いて自由
という違いがあります。
違い5.金利上昇リスク、不動産価格の下落リスクの違い
不動産リースバックの場合は「売却」ですから、基本的には、売却時点の不動産価格をベースに「買取額」「家賃(リース料)」「買戻し額(再購入額)」が決まってきます。
変動要素が考えられるのは、定期借家契約の家賃が値上がりする可能性です。
リバースモーゲージの場合は
- 金利:変動金利
- 限度額:毎年の見直し
が入るため、利用途中で「ローン返済額が増える」「限度額が減ることで借りられなくなる」デメリットがあります。
不動産リースバックとリバースモーゲージのどちらを選ぶべきですか?
目的に応じて選ぶべき手法は変わってきます。
フォーカスして考えるべき事項は
リバースモーゲージのメリットデメリット
メリット
- 借入額が大きい
- 利払いなし型も選べる
デメリット
- 審査、利用条件が厳しい
- 所有権がある分、税金や保険のコストを負担する必要がある
- 金利上昇や不動産価格の下落リスクがある
リースバックのメリットデメリット
メリット
- 審査や利用条件が緩い
- 継続して住む、退去する、買い戻す、という選択肢がある
- 金利上昇や不動産価格の下落リスクがない
- 所有権がある分、税金や保険のコストを負担する必要がなくなる
デメリット
- 売却額が小さい
- 毎月の家賃(リース料)の負担が大きい
- 「買戻し(再購入)」をする場合は、買取額よりも高い金額を支払う必要がある
です。
どちらにも明確なメリットデメリットの違いがあるのですが
- 大きい金額の借り入れが必要な方
- 利用後の毎月のコスト負担を抑えたい方
→ リバースモーゲージがおすすめ
- リバースモーゲージの審査に通らない方
- 退去も選択肢に入っている方
- 金利上昇リスクや不動産価格の下落リスクが大きいと考える方
→ 不動産リースバックがおすすめ
と考えられます。
やはり、「利用条件や審査面の違い」が大きく、リバースモーゲージは、審査に通りにくいので、不動産リースバックを選ぶ方も多いようです。
また、リバースモーゲージの限度額や不動産リースバックの売却額には、業者によって、金融機関によって、大きな差が出てきます。
どちらを利用するにしても、
- リバースモーゲージ:1社~2社(提供している金融機関が少ないため、不動産リースバックより少ない)
- 不動産リースバック:2社~3社
というように複数の業者から見積もり・条件提示を受けたうえで、比較検討して、最良な選択肢を選ぶことをおすすめします。
「不動産リースバックとリバースモーゲージのメリットデメリットを教えてください。」
「私は、不動産リースバックとリバースモーゲージのどちらを選ぶべきですか?」