国交省のリースバック文書は2つある|2022年の消費者向けガイドブックと、2026年10月1日施行の宅建業法ガイドライン

2022年の消費者向けガイドブックと2026年10月1日施行の宅建業法ガイドラインを2枚のカードで並べたアイキャッチ

リースバックについて国が出している文書は1つではありません。2022年に住宅局がまとめた消費者向けのガイドブックと、2026年10月1日に施行された宅地建物取引業法のガイドラインの2つです。読む相手も、違反したときの効き方も違います。どちらに何が書かれているのかを、国土交通省のページで分けて確認します。

先に結論

1つめは「住宅のリースバックに関するガイドブック」です。2022年6月24日に公表された消費者向けの文書で、特徴・利用例・トラブル例・利用する際のポイントをまとめたものです。

2つめは「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」です。宅建業者向けで、本文は令和8年10月1日施行と明記されています。

効き方が違います。ガイドブックは参考資料ですが、ガイドラインは違反すると指示・業務停止命令・免許取消し等の監督処分につながります。

ガイドラインの核心は、売買だけでなく賃貸借の内容も「相手方等の判断に重要な影響を及ぼす事項」に当たると明確にした点です。根拠条文は宅建業法第47条第1号です。

2つの文書の役割分担

同じ「リースバック」を扱っていても、所管する部署と読む相手が違います。ガイドブックは住宅局、ガイドラインは不動産・建設経済局の不動産業課が中心です。

表1 国土交通省がリースバックについて出している2つの文書(2026年10月2日に確認)
項目 ガイドブック ガイドライン
正式な名称 住宅のリースバックに関するガイドブック 住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方
公表・施行 令和4年6月24日に公表 本文は令和8年10月1日施行
読む相手 消費者 宅地建物取引業者
書かれている内容 リースバックの主な特徴、利用例、トラブルの例、利用する際のポイント 宅建業法の解釈の明確化、禁止される事実不告知の範囲、指導監督の方針
守らなかったとき 処分の根拠にはならない 指示・業務停止命令・免許取消し等の監督処分の対象
作られ方 有識者と不動産業界団体による検討会で3回議論 国土交通省が策定。概要はカラー形式と白黒形式の2種類が公開

ガイドブックは2022年に検討会3回を経てまとまった

ガイドブックは報道発表で公表されました。国土交通省は、リースバックを「住宅を売却して現金を得て、売却後は毎月賃料を支払うことで、住んでいた住宅に引き続き住むサービス」と定義しています。

背景として、高齢者世帯を中心に住み替えや建て替え資金の確保を目的としたリースバックの取引が徐々に増加傾向にあること、一方で契約内容や将来の収支計画について理解が不十分なまま契約を締結したことを理由としたトラブル事例も見られることが挙げられています。

図1 ガイドブックができるまでの検討会

2021年12月13日 第1回
議題はリースバックの現状について、消費者向けガイドブックについて、ガイドブックの周知方法について。配布資料にリースバックの流れと現状の資料が含まれています。
2022年1月26日 第2回
ガイドブックの位置づけと、作成に際しての検討内容を議論。検討内容の案は委員限りのため非公開とされています。
2022年3月14日 第3回
ガイドブック案と、検討会のとりまとめ内容案を議論。いずれも案の段階では非公開です。
2022年6月24日
報道発表でガイドブックを公表。別紙としてガイドブック本体、検討会での検討内容、ガイドブックについての3点が添付されています。

検討会の座長は佐藤貴美弁護士で、委員には弁護士、業界団体、学識経験者、消費生活相談の実務者が並んでいます。消費者側の視点を入れた構成になっているのが特徴です。

国土交通省の消費者向けリースバックガイドブック策定に係る検討会のページで、3回の検討会の日付と議題、配布資料、委員の一覧が表示されている画面キャプチャ
国土交通省「消費者向けリースバックガイドブック策定に係る検討会」。3回分の議題と配布資料、議事概要へのリンクが残っており、ガイドブックと検討内容のPDFもここからダウンロードできる。

ガイドラインは「賃貸借の内容も重要事項」と明確にした

2つめのガイドラインは、宅建業法の既存の規定をリースバック取引にどう当てはめるかを示したものです。新しい義務を作ったのではなく、既にある条文の解釈を明確化した、という組み立てです。

国土交通省が公開している概要には、策定の背景として、住み替えの円滑化や老後の資金需要で注目される一方、賃料・契約期間・違約金等の相談が高水準で推移していること、高齢者を狙った「押し買い」も発生していることが挙げられています。

図2 ガイドラインが明確にした3つのこと

賃貸借も判断に重要

事実不告知の禁止について、リースバック取引では「売買」に加え「賃貸借」の内容も相手方等の判断に重要な影響を及ぼす事項に該当すると明確化しました。

押し買いも禁止の対象

拒絶後の勧誘継続や長時間勧誘等の「押し買い」に当たる不適正な勧誘の禁止が適用され、宅建業者は遵守義務を負うと明記されています。

過失でも抵触のおそれ

故意ではない過失による不告知の場合も、法第31条第1項の信義誠実義務に抵触するおそれがある旨が明確化されています。

表2 概要に挙げられている「トラブルに対応した禁止事項(例)」
区分 事実不告知が禁止される主な事項 対応するトラブル例
売買 買戻し特約等に関する事項 買戻し特約がなく断られた
契約解除・違約金に関する事項 解約時に高額な違約金を請求された
賃貸借 借賃の額・支払方法 家賃が高額で資金不足となった
契約期間・更新に関する事項等 定期借家契約で退去を迫られた
修繕費用の負担区分等 修繕費が売主負担となっていた

該当条項として挙げられているのは宅地建物取引業法第47条第1号(事実不告知の禁止)です。禁止事項のほかに「対応することが望ましい事項」として、売買価格・賃料の算定根拠や、売買代金と契約期間内の賃料合計額との相応関係を明示することも示されています。

国土交通省のリースバックガイドラインのページで、禁止事項の表と令和8年10月1日施行の表示が入った概要図が表示されている画面キャプチャ
国土交通省「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」。本文に「令和8年10月施行」と添えられ、概要図の中央に「令和8年10月1日 施行」と置かれている。

条文そのものの読み方はリースバックの重要事項説明はどこまで受けられる?に、ガイドラインの位置づけはリースバックに国のガイドラインができたにまとめています。

違反したときに何が起きるか

ガイドラインの3つめの柱は指導監督の徹底です。ここが、参考資料であるガイドブックとの決定的な違いになります。

図3 概要に書かれている指導監督の流れ

  1. 法令違反が認められた宅建業者に厳正に対処する。指示、業務停止命令、免許取消し等の監督処分等をもって対応すると書かれています。
  2. 相談情報を分析する。消費生活センター等に寄せられた相談情報を分析するとされています。
  3. 相談の多い会社名を行政庁に共有する。必要に応じ、相談の多い個社名等の情報を宅建業免許行政庁に共有するとあり、PIO-NETの活用が明記されています。
  4. 啓発資料が今後出る。概要の末尾に、本ガイドラインの内容を含めた「一般消費者向けの啓発資料」を作成・公表予定と書かれています。

PIO-NETは、全国の消費生活センター等に寄せられた相談情報を集めている仕組みです。個別の相談が、免許を出している行政庁に届く経路が明文で示されたことになります。相談を入れても意味がないと考えて黙っているより、記録に残したほうが働く設計です。相談先の選び方はリースバックのトラブルで何が起きているかで扱っています。

2つをどう使い分けるか

契約を検討している立場からは、順番があります。先に全体像をつかみ、次に業者の説明が足りているかを照らす、という使い方です。

図4 利用者から見た使い分け

検討を始めるとき

ガイドブックを読みます。リースバックの主な特徴、利用例、トラブルの例、利用する際のポイントが1冊にまとまっています。

説明を受けるとき

ガイドラインの禁止事項の表を手元に置きます。買戻し、違約金、家賃、契約期間、修繕費の5つが説明されたかを確かめられます。

説明が無かったとき

その項目は事実不告知の禁止に当たり得るものです。相談先は消費生活センターのほか、免許を出している行政庁になります。

ガイドラインは「あくまで『住宅のリースバック』限定の措置として」と注記されています。事業用不動産のセール・アンド・リースバックには当てはまりません。両者の違いはセール・アンド・リースバックとは?で扱っています。

よくある質問

国のガイドブックとガイドラインは同じものですか。
別のものです。ガイドブックは2022年6月24日公表の消費者向け資料、ガイドラインは宅建業者向けで本文が令和8年10月1日施行です。
ガイドラインに違反するとどうなりますか。
指示、業務停止命令、免許取消し等の監督処分等をもって厳正に対処すると、国土交通省の概要に書かれています。
何を説明されなかったら問題になりますか。
概要が例として挙げているのは、買戻し特約等、契約解除・違約金、借賃の額・支払方法、契約期間・更新、修繕費用の負担区分です。
うっかり言い忘れた場合も違反ですか。
事実不告知の禁止は故意を要件としますが、概要には過失による不告知の場合も法第31条第1項の信義誠実義務に抵触するおそれがある旨が書かれています。
ガイドブックはどこで手に入りますか。
国土交通省の報道発表資料のページと、検討会のページからPDFでダウンロードできます。
事業用の不動産にも適用されますか。
ガイドラインの概要には「あくまで『住宅のリースバック』限定の措置として」と明記されています。

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