リースバックはやめた方がいい?分かれ目は普通借家か定期借家か|借地借家法28条の正当の事由と、38条5項が定める「説明がなければ無効」

リースバックの賃貸借の型を示すアイキャッチ。結ぶ賃貸借はどちらかという問いから、更新がある普通借家と更新がない定期借家の2つに分かれる図と、引渡しがあれば登記なしで対抗(31条)・1年未満の期間は定めなしとみなす(29条)・賃貸人の解約申入れは6月で終了(27条)・やむを得ない事情は1月で解約(38条7項)という項目を並べている

リースバックを検索すると「やめた方がいい」という言い方がよく並びます。けれども、やめた方がいいかどうかは商品そのものではなく、その契約で結ぶ賃貸借がどちらの型かで決まります。借地借家法の条文を読むと、分かれ目がどこにあるのかがはっきりします。

結論:分かれ目は「普通借家か、定期借家か」の1行

普通借家なら、更新しない旨の通知には正当の事由が要ります(借地借家法28条)。賃借人に不利な特約は無効です(30条)。住み続ける前提が法律で支えられています。

定期借家なら、期間の満了で契約は終わります(38条1項)。更新はありません。ただし、賃貸人があらかじめ「更新がなく期間満了で終了する」と書いた書面を交付して説明しなかったときは、その定めは無効になります(38条3項・5項)。

売ったあとに買主が物件を第三者へ転売しても、建物の引渡しを受けていれば登記がなくても新しい所有者に賃借権を主張できます(31条)。ここは契約の型を問わず効きます。

「やめた方がいい」と言われる中身は3つに分かれる

言われている内容を並べると、法律で手当てがあるものと、交渉と確認でしか埋まらないものに分かれます。

「やめた方がいい」と言われる理由と、条文での手当て
言われていること 条文での手当て どこまで守られるか
数年で出ていくことになる 普通借家なら28条の正当の事由が必要。定期借家なら38条1項で期間満了により終了 契約の型しだい。定期借家なら法律では止められない
買主が転売したら追い出される 31条:建物の引渡しがあれば登記がなくても、その後に物権を取得した者に対し効力を生ずる 引渡しを受けていれば新所有者にも主張できる
家賃を一方的に上げられる 32条:租税負担の増減、価格の変動、近傍同種の借賃との比較で不相当となったとき、将来に向かって増減を請求できる 一方的に決められるのではなく請求の形。ただし一定期間増額しない特約があればその定めに従う
短い期間で区切られる 29条1項:期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす 普通借家では1年未満の区切りは期間の定めなしになる
売却価格が相場より安い 条文での手当てはない 相見積もりと査定根拠の確認でしか埋まらない

5つのうち、法律が直接支えているのは2つめと4つめです。1つめと5つめは、契約の中身と価格の交渉で決まります。「やめた方がいい」という評価の多くは、この2か所を確かめないまま契約した結果として語られています。

普通借家なら、更新しない通知に「正当の事由」が要る

普通借家の場合、賃貸人が更新を拒むには条件があります。借地借家法26条1項は、期間満了の1年前から6月前までの間に更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前と同一の条件で更新したものとみなすと定めています。ただしその期間は、定めがないものとされます。

建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

借地借家法第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)/e-Gov法令検索より引用(2026年10月13日取得)

考慮される事情は条文に列挙されています。双方が建物の使用を必要とする事情、従前の経過、利用状況、建物の現況、そして立退料の申出です。買主の側が「売りたいから」という理由だけで更新を拒めるわけではありません。

解約の申入れについても27条が、申入れの日から6月を経過することによって終了すると定めています。そして30条は、この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは無効とすると書いています。契約書に「更新しない」と書いてあっても、普通借家であればその特約は無効です。

e-Gov法令検索の借地借家法のページ。第二十六条(建物賃貸借契約の更新等)、第二十七条(解約による建物賃貸借の終了)、第二十八条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)、第二十九条(建物賃貸借の期間)、第三十条(強行規定)、第三十一条(建物賃貸借の対抗力)、第三十二条(借賃増減請求権)が順に表示されている
出典:e-Gov法令検索 借地借家法 第26条〜第32条(2026年10月13日に表示されていた内容)

定期借家なら、期間満了で終わる。ただし説明がなければ無効

定期借家は、更新がないことを定められる契約です。38条1項は、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができるとしています。普通借家なら無効になる「更新しない」という定めが、この手続を踏んだときだけ有効になります。

そのかわり、賃貸人には重い手続が課されています。

3 第一項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。

5 建物の賃貸人が第三項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。

借地借家法第38条(定期建物賃貸借)第3項・第5項/e-Gov法令検索より引用(2026年10月13日取得)

ここが実務で効きます。契約書とは別に、更新がないことを記載した書面を交付して説明する必要があり、これを欠くと「更新がない」という定め自体が無効になります。説明を受けた覚えがないまま定期借家で契約した、という場合は、まずこの書面があるかどうかを確かめることになります。

e-Gov法令検索の借地借家法のページ。第三十八条(定期建物賃貸借)の第1項から第9項までが表示され、書面によって契約するときに限り更新がないこととする旨を定められること、賃貸人があらかじめ書面を交付して説明しなければならないこと、説明をしなかったときはその定めは無効であること、期間が1年以上の場合は満了の1年前から6月前までに終了の通知が必要であることが書かれている
出典:e-Gov法令検索 借地借家法 第38条(2026年10月13日に表示されていた内容)

期間が1年以上の定期借家では、終了の通知も要ります。38条6項は、期間の満了の1年前から6月前までの間(通知期間)に終了する旨の通知をしなければ、その終了を賃借人に対抗することができないと定めています。通知期間を過ぎてから通知した場合でも、その通知の日から6月を経過した後は終了を主張できます。

定期借家でも、賃借人から中途解約できる場合がある

見落とされやすいのが38条7項です。居住用の建物で、床面積が200平方メートル未満のものに限って、賃借人からの中途解約が認められています。

38条7項が認める賃借人からの中途解約

対象

居住の用に供する建物の賃貸借

床面積が200平方メートル未満のものに限る。建物の一部を賃貸借の目的とする場合は、その一部分の床面積で見る

事由

やむを得ない事情

転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったとき

効果

解約の申入れの日から1月で終了

賃借人から解約を申し入れることができ、申入れの日から1月を経過することによって終了する

特約

不利な特約は無効

38条8項は、前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは無効とすると定めている

戸建てやマンションの住戸であれば、多くは200平方メートル未満に収まります。定期借家で契約しても、転勤や療養で住み続けられなくなったときに、違約金なしで抜ける道が条文で用意されているということです。この規定に反する不利な特約は無効になります。

売ったあと買主が転売しても、住み続けられる根拠

リースバックで一番不安が残るのは、売った先の会社が物件を別の誰かに売ってしまう場面です。ここは31条が答えになります。

建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。

借地借家法第31条(建物賃貸借の対抗力)/e-Gov法令検索より引用(2026年10月13日取得)

リースバックでは、売った後もそのまま住み続けるので、建物の引渡しは済んでいる状態です。賃借権の登記をしていなくても、その後に所有権を取得した相手に対して賃貸借の効力を主張できます。転売そのものを止めることはできませんが、転売されたから出ていけという話にはなりません。

契約前に確かめる3点

賃貸借の型

契約書の表題と条項で、普通借家か定期借家かを確かめる。定期借家なら、更新がない旨を記載した書面を別に受け取っているか

期間と通知

期間が1年以上の定期借家なら、満了の1年前から6月前までに終了の通知が来る建て付けになっているか

家賃改定の特約

32条の増減請求を制限する特約があるか。一定期間増額しない特約があるなら、その期間はいつまでか

契約の型そのものの比べ方はリースバック業者の比較に、実際の業者の公表条件はセゾンファンデックスの条件やSBIスマイルの条件にまとめています。

やめた方がいいのはどんな場合か

条文から逆算すると、見送った方がよい形が絞れます。

条文から見た、契約を見送る判断になる場面
場面 なぜ問題か
定期借家なのに、更新がない旨の書面を渡されていない 38条3項の説明がない状態。5項により更新がない旨の定めは無効になるが、そもそも手続を踏まない相手と契約することになる
短い期間の定期借家で、ずっと住むつもりでいる 38条1項により期間満了で終了する。再契約は相手の判断で、法律上の更新ではない
家賃の改定条件が契約書に書かれていない 32条の増減請求は双方にある。一定期間増額しない特約の有無を先に確かめないと、入居後の負担が読めない
売却価格の根拠を示してもらえない 価格には条文の手当てがない。査定の根拠を出せない相手とは比較ができない
契約書以外の説明が口頭だけ 定期借家の説明も終了の通知も、条文は書面を前提にしている

逆に言えば、普通借家で、家賃改定の条件が書面にあり、売却価格の根拠を出してもらえるなら、「やめた方がいい」とされる理由の多くは当てはまりません。残った問題は価格が見合うかどうかで、それは他の選択肢と比べて決める話になります。住宅ローンが残っている場合の順番は住宅ローンが払えないときの選択肢に整理しています。

よくある質問

リースバックの賃貸借について条文で確認できること
質問 条文に書かれていること
何年で追い出されますか 普通借家なら、更新しない通知には28条の正当の事由が要ります。定期借家なら38条1項により期間の満了で終了します
「更新しない」と契約書にあれば必ず出ますか 普通借家では30条により賃借人に不利な特約は無効です。定期借家として有効にするには38条1項の書面と3項の説明が要ります
説明の書面をもらっていない場合は 38条5項により、契約の更新がないこととする旨の定めは無効とされます
買主が転売したらどうなりますか 31条により、建物の引渡しがあれば登記がなくても、その後に物権を取得した者に対し賃貸借の効力を生じます
家賃は上げられますか 32条は、租税負担の増減や近傍同種の借賃との比較で不相当となったときに、将来に向かって増減を請求できるとしています。一定期間増額しない特約があればその定めに従います
定期借家でも途中でやめられますか 居住用で床面積200平方メートル未満なら、転勤・療養・親族の介護その他のやむを得ない事情で生活の本拠として使用困難になったとき、38条7項により解約を申し入れられます。申入れの日から1月で終了します
1年未満の契約はできますか 普通借家では29条1項により、期間を1年未満とする建物の賃貸借は期間の定めがないものとみなされます。定期借家では38条1項により29条1項を適用しません

まとめ

リースバックをやめた方がいいかどうかは、結ぶ賃貸借が普通借家か定期借家かで大きく分かれます。普通借家なら、更新しない通知に正当の事由が要り(28条)、賃借人に不利な特約は無効です(30条)。定期借家なら、期間の満了で終わります(38条1項)。

定期借家には手続の縛りがあります。更新がなく期間満了で終了することを記載した書面を交付して説明しなければ、その定めは無効です(38条3項・5項)。期間が1年以上なら、満了の1年前から6月前までに終了の通知も必要です(38条6項)。居住用で床面積200平方メートル未満なら、やむを得ない事情による中途解約も認められています(38条7項)。

買主が転売する不安には31条が効きます。建物の引渡しを受けていれば、登記がなくても新しい所有者に賃借権を主張できます。条文で手当てがないのは売却価格だけで、ここは査定の根拠を出してもらって比べるしかありません。

出典:e-Gov法令検索 借地借家法(平成三年法律第九十号)第26条・第27条・第28条・第29条・第30条・第31条・第32条・第38条 https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090(2026年10月13日取得)

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