分譲マンションをリースバックに出すと、所有権は買主へ移ります。管理組合を構成するのは区分所有者なので、売った時点で組合員ではなくなり、総会での議決権も失います。ただし住み続ける以上、建物の使い方についての権利と義務は残ります。区分所有法は、その線引きを条文で置いています。ここでは、何を失い何が残るのかを条文で確かめます。管理費の金額や規約の中身はマンションごとに違うため、一般的な相場は書きません。
この記事の要点
- 管理組合を構成するのは区分所有者です(区分所有法3条)。売却して区分所有者でなくなれば、組合員ではなくなり議決権もありません。
- 区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する人は、会議の目的である事項に利害関係があるとき、集会に出席して意見を述べることができます(44条1項)。
- 集会を招集する者は、招集通知を発した後遅滞なく、日時・場所・目的・議案の要領を建物内の見やすい場所に掲示しなければなりません(44条2項)。
- 占有者は、建物等の使用方法について、区分所有者が規約や集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負います(46条2項)。
- 共用部分の負担は、規約に別段の定めがない限り持分に応じます(19条)。管理費・修繕積立金は本来は区分所有者の負担で、賃借人が払うかは賃貸借契約の書き方によります。
- マンション標準管理規約は令和7年10月17日に改正され、改正区分所有法は令和8年4月1日から施行されています。
管理組合の構成員は区分所有者
まず出発点の条文です。
建物の区分所有等に関する法律 第三条(区分所有者の団体) 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。

団体を構成するのは区分所有者です。加入や脱退を選べるものではなく、区分所有者になれば自動的に構成員となり、区分所有者でなくなれば自動的に外れます。リースバックで専有部分を売れば、その時点で組合員ではなくなります。総会の議決権も、役員に選ばれる資格も、同時に失います。
買主の側から見ると、規約と集会の決議は特定承継人に対しても効力を生じます(46条1項)。つまり買った人は、それまでの規約と決議をそのまま引き継ぎます。滞納されていた管理費がある場合の扱いも、この規定が関わります。
占有者として残るもの
組合員ではなくなっても、住み続ける以上、建物の使い方には関わります。区分所有法は「区分所有者以外の専有部分の占有者」を占有者と定義し(6条3項)、いくつかの規定を置いています。
同法 第四十四条(占有者の意見陳述権) 区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して意見を述べることができる。2 前項に規定する場合には、集会を招集する者は、第三十五条の規定により招集の通知を発した後遅滞なく、集会の日時、場所、会議の目的たる事項及び議案の要領を建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。
条件は2つです。区分所有者の承諾を得て占有していること、そして会議の目的である事項に利害関係があること。リースバックの賃借人は買主の承諾を得て住んでいるので、1つ目は満たします。2つ目は議題によります。ペットの飼育、駐車場の使い方、専有部分の使用方法に関する規約の変更などは、住んでいる人の利害に直接関わります。
ただし条文が認めているのは意見を述べることまでです。議決権はありません。集会の招集通知そのものも、区分所有者に対して発するものです(35条1項)。占有者は、44条2項の掲示で開催を知る形になります。掲示があるか、いつ出るかは、住み始めてから気にしておく価値があります。
| 項目 | 区分所有者だったとき | リースバック後(占有者) |
|---|---|---|
| 管理組合の構成員 | 自動的に構成員(3条) | 構成員ではない |
| 総会の議決権 | あり | なし |
| 集会への出席 | できる | 利害関係があるときは出席して意見を述べられる(44条1項) |
| 招集の通知 | 会日の1週間前までに通知(35条1項) | 通知の対象ではない。建物内の掲示で知る(44条2項) |
| 規約・決議の拘束 | 従う | 使用方法について同一の義務を負う(46条2項) |
| 共同の利益に反する行為 | してはならない(6条1項) | 同じく準用される(6条3項) |
| 役員になる資格 | 規約による | 区分所有者でないため対象外 |
逆に言えば、規約が変わったときに従う義務だけは残ります。46条2項は、占有者が建物やその敷地・附属施設の使用方法につき、区分所有者が規約または集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負うと定めています。自分が投票できない決議に拘束される形になるため、掲示に目を通しておく意味は小さくありません。
管理費と修繕積立金は誰が払うのか
区分所有法19条は、各共有者が規約に別段の定めがない限り持分に応じて共用部分の負担に任じると定めています。負担するのは共有者、つまり区分所有者です。売却後は買主が区分所有者なので、管理組合に対して管理費・修繕積立金を払う義務を負うのは買主です。
ただし実務では、賃貸借契約で家賃に含める形や、共益費として別に定める形があります。どちらになっているかは契約書の賃料の条項で決まるため、「管理費は自分が払うのか、家賃に入っているのか」を契約前に文字で確認してください。公表されている例では、固定資産税・都市計画税等の税金とその他修繕積立金等は買主が負担すると案内している会社があります(センチュリー21のリースバックで確認した記載)。
大規模修繕の一時金や、駐車場使用料の扱いも同じ考え方で確認します。所有者が変わったあとに総会で値上げが決まった場合、その負担が家賃に転嫁されるのかどうかも、契約書の賃料改定の条項次第です。改定の条項がどう効くかは定期借家契約とはにまとめました。
決まる場所が2つある
住んだあとの生活条件は、管理組合の総会で決まるものと、買主との賃貸借契約で決まるものに分かれます。どちらで決まるかによって、関われる度合いが変わります。
総会で決まり、自分は票を持たない
例管理費・修繕積立金の額、大規模修繕の実施と一時金、ペットや楽器の可否、駐車場の割当てと使用料、共用部分の使い方、規約の改正。
関われる範囲利害関係があれば集会で意見を述べられる(44条1項)。決議には従う義務がある(46条2項)。
賃貸借契約で決まり、署名前なら交渉できる
例家賃、契約の種類と期間、管理費を家賃に含めるか、賃料改定の条項、修繕の負担区分、中途解約の予告期間、原状回復の範囲。
関われる範囲契約の当事者なので、条項ごとに確認して交渉できる。署名後に変えるのは難しい。
売買契約で決まり、あとから戻せない
例売買代金、決済日、敷地利用権を含む対象物件の範囲、抵当権抹消の段取り、買戻しの約束の有無と形。
関われる範囲一度きり。決済が済めば所有権は移り、管理組合の構成員ではなくなる。
この並びで見ると、契約前にいちばん時間を使うべきなのは真ん中と下だと分かります。上は住み始めたあと、掲示を見て意見を述べる以外にできることが限られます。
規約は令和7年10月17日改正の標準管理規約が物差しになる
国土交通省は、マンションの管理規約を作成・改正する際のひな型として「マンション標準管理規約」を公表しています。単棟型・団地型・複合用途型の3種類があり、いずれもコメント付きのPDFで読めます。

同ページによれば、令和7年5月にマンション関係法が改正され、その中核となる改正区分所有法は令和8年4月1日から施行されます。国土交通省は区分所有法の改正等に合わせて標準管理規約を改正しており、今般の改正には総会の開催手続きや決議要件といった管理組合の運営上重要な内容が含まれるため、各マンションの管理規約も見直しが必要になると案内しています。
読者の立場で意味があるのは、これから住むマンションの規約が改正に合わせて見直される可能性がある、という点です。占有者は総会で票を持たないので、掲示を見る以外に改正の動きを知る手段がありません。賃貸借契約を結ぶ前に、管理規約の写しをもらって読んでおくと、あとから変わった部分が分かります。
リースバックに出す前に確認すること
- 管理規約と使用細則の写しをもらう
ペット、楽器、リフォーム、駐車場、置き配。住み方に直結する部分を先に読む。占有者は使用方法について同一の義務を負う(46条2項)。
- 管理費・修繕積立金の負担を契約書で確認する
家賃に含めるのか、別に払うのか。値上げが決まったときの扱いも含めて条項を見る。
- 大規模修繕の予定を管理組合の資料で確認する
工事期間中の生活への影響と、一時金の有無。区分所有者でなくなると、決定に関われない。
- 集会の掲示がどこに出るかを確かめる
44条2項の掲示が、実際にどの掲示板に出るのか。住み始めてからでは遅い。
- 買主が誰になるかを確認する
買主が区分所有者として組合に入る。管理費の滞納が起きれば、同じ建物に住む自分にも影響が及ぶ。
- 敷地利用権の扱いを確認する
専有部分と敷地利用権は分離して処分できないのが原則。売買契約書の対象物件の記載を見る。
物件の種類ごとの整理はマンションのリースバックに、売れる状態かどうかの前提は家のリースバックは、その家を売れる状態かで決まるにあります。複数社に同じ条件で出す手順はリースバックの相見積もりにまとめました。
よくある質問
リースバック後も管理組合の総会に出られますか
会議の目的である事項に利害関係があるときは、集会に出席して意見を述べることができます(区分所有法44条1項)。ただし議決権はありません。
総会の案内は届きますか
招集の通知は区分所有者に対して発するものです(35条1項)。占有者には、招集通知を発した後遅滞なく、日時・場所・目的・議案の要領が建物内の見やすい場所に掲示されます(44条2項)。
規約が変わったら従わなければなりませんか
建物やその敷地・附属施設の使用方法については、区分所有者が規約または集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負います(46条2項)。自分が投票していない決議でも、使用方法に関するものには従うことになります。
管理費や修繕積立金は自分が払うのですか
管理組合に対して負担するのは区分所有者です(19条)。売却後は買主がその立場になります。実際に誰が払う形にするかは賃貸借契約の定めによるため、家賃に含まれているのか別途なのかを契約書で確認してください。
役員が回ってくることはありますか
役員になる資格は区分所有者を前提としています。売却して区分所有者でなくなれば、役員の対象からも外れます。
この記事で確認した一次情報
- e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」(昭和三十七年法律第六十九号)3条・6条・19条・30条・35条・44条・46条:https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000069
- 国土交通省「マンション標準管理規約」(令和7年10月17日改正、改正区分所有法は令和8年4月1日施行):https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/mansionkiyaku.html
- 国土交通省「マンション管理」:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html
- センチュリー21「センチュリー21のリースバック よくあるご質問」(税金・修繕積立金の負担):https://www.century21.jp/sell/leaseback/faq














