リースバックニュース分析|穴吹興産の2024年6月調査。満足度より、契約の種類の内訳と利回りを見る

穴吹興産が2024年6月に実施し、同年7月30日に発表したリースバックの調査は、利用者側の数字が公表されている数少ない資料です。満足度だけでなく、賃貸借契約の種類の内訳や、家賃と売却価格から求めた都道府県別の利回りまで出ています。同社は調査結果の転載を認めているため、ここでは公表値を引用したうえで、どこまで読めてどこから読めないのかを整理します。

調査の設計(公表されている内容)

実施は2024年6月、発表は2024年7月30日。実施したのは穴吹興産株式会社で、GMOリサーチ&AI株式会社の協力によるものです。

GMOリサーチ&AIが保有するモニター13,067名でスクリーニングを行い、200名が対象。

プレスリリース本文は対象を「過去に自宅の売却及びリースバックを検討したことがある200名」と書き、同社の詳細記事は「実際にリースバックを利用したことのある200人」と書いています。二つの記述に差があります。

2024年4月に実施した検討者向けの調査に続く第2弾と位置づけられています。

資料:穴吹興産のプレスリリース(PR TIMES、2024年7月30日)。スクリーニング13,067名、対象200名と書かれている
穴吹興産のプレスリリースのページの画面キャプチャ。リースバック利用者200人に満足度等の調査を実施したことが書かれている

公表されている数字

以下はすべて、穴吹興産が公表している調査結果です。転載にあたっては同社の利用ポリシーに従い、出典として同社の記事のURLを本文末尾に記載しています。

項目 公表されている結果
取引の満足度 大変満足20パーセント、満足30パーセント、どちらでもない42パーセント、不満5パーセント、大変不満3パーセント
利用時の住宅ローン残債 約3分の1が「残債なし」
賃貸借契約の種類 全体の3分の1が普通借家契約。比較的短期(1年〜2年)の定期借家契約が41パーセント
検討期間 3か月〜6か月以内が最多。約60パーセントが6か月以内に契約まで至った
検討理由 生活費のため、住宅ローンの完済、老後資金の確保、新居への住み替えが多い。ほかに相続税対策、事業資金、借入金の返済、教育費
検討で重視した点 売却金額、家賃、賃貸借期間。ほかに買い戻し、資金実行の速さ
査定の依頼方法 不動産仲介会社に依頼54パーセント、リースバック会社に直接依頼31パーセント、一括査定で依頼12パーセント
利回り 関東1都3県と関西(大阪府・兵庫県)エリアでは5パーセント台

賃貸借契約の内訳が、この調査でいちばん重い

満足度の数字に目が行きがちですが、判断に効くのは契約の種類の内訳です。普通借家契約が3分の1、1年から2年の定期借家契約が41パーセントという結果は、「リースバックをしたら長く住める」という前提が、実際には半分にも満たないことを示しています。

定期建物賃貸借に更新はありません。期間の満了で終わり、住み続けるには再契約の合意が必要です(借地借家法38条1項)。契約自体を公正証書による等書面で結んだうえで、更新がなく期間の満了で終了する旨を記載した書面をあらかじめ渡し、その内容を説明する必要があります(同条3項)。この説明がなければ、更新がない旨の定めは無効になります(同条5項)。

短い期間を選ぶこと自体が悪いわけではありません。同社の記事も、住み替えなど将来の予定が明確な場合に短期が選ばれていると説明しています。問題になるのは、長く住むつもりで短期の定期借家を結んでしまう場合です。契約の種類による違いは普通借家と定期借家の違い、期間の数え方はリースバックの「3年」は何の3年かにまとめています。

利回りの数字は、自分の提示を検算するのに使える

この調査でとくに実用的なのが、家賃と売却価格から求めた利回りです。関東1都3県と関西(大阪府・兵庫県)で5パーセント台という結果が公表されています。同社は、同じ都心部でも駅からの距離、築年数、一戸建てとマンションの違いによって利回りが大きく異なる場合があり、実際の査定内容が調査結果と異なることがあると注記しています。

図:提示された条件を利回りに直して見る手順

1. 年額の家賃を出す

提示された月額家賃を12倍します。共益費が別なら、その扱いも確かめます。

2. 売却価格で割る

年額家賃を売却価格で割ると、買主から見た利回りになります。これが、この調査の数字と比べられる形です。

3. 差の意味を考える

調査の水準より高ければ、売却価格に対して家賃が重いということです。立地や築年数の違いで説明がつくのか、担当者に聞いてみる材料になります。

4. 複数社で同じ計算をする

1社の数字だけでは高いか安いかが分かりません。同じ条件で提示を受け、同じ式で並べます。

家賃がどう決まるかの考え方はリースバックの家賃はどう決まるか、同じ条件で複数社から出させる手順はリースバックの相見積もりで扱っています。

依頼先の内訳と、仲介手数料の関係

査定の依頼方法は、不動産仲介会社が54パーセント、リースバック会社への直接依頼が31パーセントでした。この二つは、かかる費用が変わります。

宅地建物取引業者が売買の媒介に関して受けることのできる報酬の額は国土交通大臣の定めるところによるとされ、業者はその額を超えて報酬を受けてはなりません(宅地建物取引業法46条1項・2項)。さらに、その額を事務所ごとに公衆の見やすい場所へ掲示しなければなりません(同条4項)。一方、会社が自ら買主になる直接買取では、売買の仲介そのものが入らないため仲介手数料は発生しません。依頼先を決める前に、どちらの形になるのかを確かめてください。費目ごとの根拠はリースバックの仲介手数料にまとめました。

この調査から読めないこと

満足度が高いことは、条件が有利であったことを意味しません。満足度は回答者の主観で、比較対象を持たないまま答えている可能性があります。実際、同社の記事も「利用者はマイナス面を理解して納得した上で取引を行っていると考えられます」と、納得の話として説明しています。

読めないこと 理由
個別の物件で妥当な利回り 都道府県別の平均であり、駅からの距離・築年数・物件種別で大きく変わると同社が注記している
回答者が誰か プレスリリース本文は「検討したことがある200名」、詳細記事は「利用したことのある200人」と書いており、記述に差がある
契約書の条項 賃料改定の特約、中途解約、買戻しの期限といった条項は調査項目に入っていない
その後の経過 2024年6月時点の調査で、契約後に何が起きたかは追跡されていない
市場全体の傾向 1社が実施した調査で、母集団はモニターから抽出された200名である

公的な資料としては、国土交通省が令和4年6月24日に「住宅のリースバックに関するガイドブック」を公表し、契約内容や将来の収支計画について消費者の理解が不十分なままでリースバック契約を締結したことなどを理由とするトラブル事例が見られると述べています。2026年10月1日からは、宅地建物取引業者を対象とした解釈・運用の考え方が施行されます。内容はリースバックに国のガイドラインができたで扱いました。国民生活センターが公表した事例はリースバックのトラブルで何が起きている?にまとめています。

よくある質問

リースバック利用者の満足度はどれくらいですか

穴吹興産の2024年6月の調査では、大変満足20パーセント、満足30パーセント、どちらでもない42パーセント、不満5パーセント、大変不満3パーセントと公表されています。

リースバックの利回りはどれくらいですか

同じ調査で、関東1都3県と関西(大阪府・兵庫県)エリアでは5パーセント台という結果が公表されています。ただし同社は、駅からの距離や築年数、一戸建てとマンションの違いによって大きく異なる場合があり、実際の査定内容が調査結果と異なることがあると注記しています。

どのくらいの人が長く住める契約をしていますか

同じ調査では、全体の3分の1が普通借家契約、比較的短期(1年〜2年)の定期借家契約が41パーセントとされています。定期建物賃貸借に更新はなく、住み続けるには再契約の合意が必要です(借地借家法38条1項)。

査定はどこに頼む人が多いのですか

不動産仲介会社に依頼が54パーセント、リースバック会社に直接依頼が31パーセント、一括査定で依頼が12パーセントと公表されています。直接買取であれば売買の仲介手数料は発生しません。

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