リースバックを安く使いたいと思ったとき、下げたい対象は人によって違います。毎月の家賃なのか、将来の買戻し額なのか、それとも初期の諸費用なのか。この3つは同じ式の上に乗っているため、1つを下げると別の1つが動きます。
この記事では「市場価格の何割」という目安を使いません。比べる相手である市場価格そのものの公的な指数が、いま公表を止めているからです。代わりに、契約の前に実際に動かせる場所だけを4つに絞って並べます。
家賃は買取価格に連動します。月額家賃は買取価格に年利回りを乗せて12で割った額なので、売る金額を半分にすれば家賃も半分になります。受け取る現金も同じだけ減ります。
同じ物件でも会社によって乗せる利回りが違います。年6%と年10%では、同じ買取価格でも月額が約1.7倍違います。比べるのは家賃の額ではなく、逆算した年利回りです。
定期借家で賃料改定の特約を置くと、増減額の請求ができなくなります。借地借家法第38条第9項の扱いです。今の安さと将来の安さは別に見ます。
月額だけを比べると総額を外します。保証料、更新料、共益費、修繕の負担区分が家賃の外にあります。住む年数を掛けた総額で並べてください。
「市場価格の何割」は使えません。国土交通省の不動産価格指数は年間約30万件の取引価格情報をもとに毎月公表されていますが、令和8年9月28日付のお知らせで、令和8年1月から6月までの各月と四半期分の公表延期が続いています。
「安い」には3つの意味があり、同じ式でつながっている
最初に決めるのは、自分が何を下げたいのかです。リースバックでは次の3つが連動するため、全部を同時に有利にはできません。
| 下げたいもの | 下げると起きること | 向いている人 |
|---|---|---|
| 毎月の家賃 | 買取価格を下げるか、利回りの低い相手を選ぶ。前者なら受け取る現金も減る | 長く住み続けたい人。支払いが続くため月額の差が総額に効く |
| 将来の買戻し額 | 買取価格を下げれば買戻し額も下がる。受け取る現金は減る | 数年後に買い戻す前提の人 |
| 初期の諸費用 | 会社ごとに有無が違う。家賃の水準とは別に決まる | 短期で使う人。住む期間が短いほど初期費用の比重が上がる |
上の2つは同じ式から出てきます。月額家賃は買取価格に年利回りを乗せて12で割った額なので、売る金額を動かせば家賃も同じ割合で動きます。3つ目だけが別の軸にあります。
「市場価格の何割」を使わない理由
リースバックの解説では「市場価格の6割から8割」といった割合がよく出てきます。この記事では使いません。比べる相手である市場価格の公的な指数が、いま止まっているからです。
国土交通省は、年間約30万件の不動産の取引価格情報をもとに、全国・ブロック別・都市圏別等に不動産価格の動向を指数化した「不動産価格指数」を毎月公表しています。ところが同省のページには、令和8年9月28日付で次のお知らせが掲げられています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 延期になった回 | 令和8年6月・第2四半期分(令和8年9月30日公開予定だった) |
| あわせて延期中の回 | 令和8年1月〜5月、令和7年第4四半期分、令和8年第1四半期分 |
| 理由 | 算出時のプログラムに不具合が発生し、原因の確認作業を行っているため |
| 新たな公表日 | 日程が決まり次第お知らせするとされている |
| 指数のもとになる件数 | 年間約30万件の不動産の取引価格情報 |
出典は国土交通省「不動産価格指数」のページで、2026年10月14日に表示を確認しました。年間約30万件の取引情報を集めて毎月出している指数でさえ、半年分以上が止まっている状態です。個別の物件について「相場の何割」と言い切れる根拠は、ここからは出てきません。

「相場より安い」こと自体は取引の欠陥ではありません。買主は賃料と将来の売却で回収する前提で値を付けるため、通常の売却と同じ金額にはなりにくい構造です。
問題になるのは、その差がいくらなのかを知らないまま署名することです。割合ではなく、複数社の提示を同じ物差しで並べて判断してください。
実際に動かせるのは4か所
交渉の余地があるのは次の4つです。効き方の大きい順に並べました。1と2は金額で、3と4は契約の条項で決まります。
契約の前に動かせる4か所
- 売る金額を、必要な額まで下げる。いちばん確実に効きます。1,500万円ではなく600万円で足りるなら、家賃も同じ割合で下がります。何にいくら要るのかを先に出しておく必要があります。
- 利回りの低い相手を選ぶ。査定書に利回りは書かれないので、月額家賃に12を掛けて買取価格で割り、自分で出します。会社ごとの数字を1つの列に並べられます。
- 契約の型と改定の条項を確認する。普通借家なら増減額を請求できますが、定期借家で賃料改定の特約があると、借地借家法第38条第9項によりその規定が適用されません。
- 家賃以外に毎月・毎回かかるものを出す。保証会社の保証料、更新料、共益費、火災保険料、修繕の負担区分。月額が安くても、ここで戻ってくることがあります。
1つ目については、住宅ローンの残債があると完済が前提になるため、そこから下げられません。必要額の出し方が結論を左右します。
2026年10月から、算定の根拠を聞ける土台ができた
2026年10月1日から、リースバックの勧誘には国のガイドラインが効きます。正式には「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」といいます。
借賃の額や支払方法、契約期間と更新、修繕費用の負担区分といった項目を故意に伏せることが、宅地建物取引業法第47条第1号に触れると整理されました。あわせて、売買価額と借賃の額の算定根拠の説明が「対応することが望ましい事項」に挙げられています。
安く使いたい側から見ると、これは「なぜこの家賃なのか」を聞ける土台ができたということです。算定根拠を聞き、複数社の答えを並べれば、どこが下げる余地を持っているかが見えます。
月額ではなく、住む年数を掛けた総額で比べる
安いかどうかは、住む年数を決めないと出ません。同じ月額でも、5年住むのと15年住むのとでは支払う総額が3倍違います。次の5つを自分の数字で埋めてください。
| 出す数字 | 計算 | 注意 |
|---|---|---|
| 手取り額 | 買取価格 − 住宅ローン残債 − 抵当権抹消費用 − 印紙税 − 仲介手数料(かかる場合) | 残債があると、そこまでは下げられない |
| 家賃総額 | 月額家賃 × 12 × 住みたい年数 | 共益費・保証料・更新料があれば足す |
| 差し引き | 手取り額 − 家賃総額 | マイナスになる年数が、受け取った額を払い終える時点 |
| 年利回り | 月額家賃 × 12 ÷ 買取価格 | 会社ごとの条件を1つの数字で並べられる |
| 改定後の家賃総額 | 改定後の月額家賃 × 12 × 残りの年数 | 特約に上限が書かれている場合、その上限で計算する |
同じ条件で出さないと比べられない
- 希望する売却額をそろえる。会社ごとに違う額で出すと、家賃の差が条件の差なのか水準の差なのか分からない。
- 住みたい年数をそろえる。総額の比較はここで決まる。
- 契約の型をそろえる。普通借家と定期借家では、住み続けられる期間の前提が違う。
- 家賃以外の費用を含めるかどうかをそろえる。片方だけ保証料込みだと比較にならない。
- 算定根拠を聞いた答えも並べる。2026年10月から説明が望ましい事項に挙がっている。
リースバックを安くすることについてよくある質問
一番安く使う方法は何ですか
必要な額まで売る金額を下げることです。家賃は買取価格に連動するため、受け取る額を絞れば月々の負担も同じ割合で下がります。ただし住宅ローンの残債がある場合は、完済できる金額が下限になります。
家賃は交渉できますか
交渉の余地はありますが、単独で下げるより買取価格と一緒に動かすほうが話が通りやすくなります。複数社の提示を年利回りに直して並べ、他社の水準を根拠に示す形が現実的です。
買取価格は市場価格の何割になりますか
割合では示せません。買主が乗せる利回りと、その物件を将来どう出口に持っていくかで変わるためです。国土交通省の不動産価格指数も、令和8年9月28日付のお知らせの時点で令和8年1月から6月までの公表が延期されています。
短期で使えば安く済みますか
住む期間が短ければ家賃総額は小さくなります。ただし定期借家で期間を短く区切ると、再契約に応じてもらえるかどうかが別の問題になります。契約の型と期間は、安さとは別の軸で確認してください。
将来の家賃が上がることはありますか
契約の型によります。普通借家では増減額の請求ができますが、定期借家で賃料改定の特約が置かれている場合、借地借家法第38条第9項によりその規定は適用されません。特約の中身がそのまま将来の家賃を決めます。
何社に見積もりを出せばよいですか
本数の正解はありません。大事なのは、希望する売却額・住みたい年数・契約の型という条件をそろえて出すことです。条件が違えば、返ってくる数字は比べられません。
この記事で確認した一次情報
国土交通省 不動産価格指数(令和8年9月28日のお知らせを含む):mlit.go.jp
国土交通省 住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方:mlit.go.jp
e-Gov法令検索 借地借家法(平成三年法律第九十号)第32条・第38条:laws.e-gov.go.jp
家賃の決まり方は家賃の増減請求と38条9項、契約の型は定期借家契約とは、ガイドラインの中身は賃貸借15項目と47条1号で扱っています。














