不動産リースバック業者は「普通賃貸借契約」と「定期賃貸借契約」に分かれます。今回は、不動産リースバックの普通賃貸借契約と定期賃貸借契約の違い利用者のメリットデメリットについて丁寧に解説します。
不動産リースバック業者の用意する契約形態
不動産リースバック業者は
- 普通賃貸借契約のみ
- 定期賃貸借契約のみ
- 普通賃貸借契約と定期賃貸借契約が選べる
の3つのタイプの業者があります。
当然、普通賃貸借契約と定期賃貸借契約の違い、双方のメリットデメリットを理解しておかないと選ぶことができません。
個別に内容を解説していきます。
普通賃貸借契約とは
普通賃貸借契約とは
を言います。
普通賃貸借契約の特徴
契約期間
自由に設定が可能
一般的な相場は「2年」です。
また、契約期間を定めない形での契約も可能で
- 契約期間が定められていないもの
- 契約期間が1年未満のもの
- 法定更新が行われたもの
を「期間の定めのない建物賃貸借」と呼びます。
※法定更新とは、相手方に対して「更新をしない旨の通知」「条件を変更しなければ更新をしない旨の通知」をしなかったときは以前と同一条件で契約を更新することを言います。
中途解約
賃借人(入居者)からの中途解約
普通賃貸借契約に特約がある場合は、賃借人(入居者)から中途解約が可能です。
一般的に普通賃貸借契約には、中途解約の特約を入れることが多く、1カ月~2カ月前の解約予告通知で、契約終了(中途解約)をすることができます。
賃貸人(オーナー)からの中途解約
普通賃貸借契約では、賃借人(入居者)が契約継続を希望している場合、賃貸人(オーナー)からの中途解約ができません。
※正当な事由が認められる場合は、6カ月前の解約予告通知で、契約終了(中途解約)をすることができます。
正当な事由は、裁判での判断となり、貸主・借主が土地・建物の使用を必要とする事情、賃貸借に関する従前の経緯、土地・建物の利用状況、立退料の提供などを考慮して判断されます。
契約更新
原則、契約は更新されます。
賃借人(入居者)からの解約希望がなければ、原則契約が更新されます。
※相手方に対して「更新をしない旨の通知」「条件を変更しなければ更新をしない旨の通知」をしなかったときは以前と同一条件で契約を更新したことになります。(法定更新)
家賃の増減
賃料の増減額請求権は認められます。
- 賃借人(入居者) → 家賃の値下げを要求できる
- 賃貸人(オーナー) → 家賃の値上げを要求できる
双方が合意すれば、家賃は変更になりますが、折り合いが使いないときは、裁判で値上げ・値下げの妥当性を判断する形になります。
定期賃貸借契約とは
定期賃貸借契約とは
を言います。
定期賃貸借契約の特徴
契約期間
自由に設定が可能
中途解約
原則、中途解約ができません。
特約によって、中途解約は可能になります。
- ○カ月前の予告期間をもって中途解約できる
- ○カ月経過後は、中途解約できる
など、自由に設定が可能です。
契約更新
原則、契約は更新されません。必ず契約が終了します。
賃借人(入居者)、賃貸人(オーナー)ともに継続を望む場合には「再契約」という形になります。
家賃の増減
賃料の増減額請求権は認められます。
- 賃借人(入居者) → 家賃の値下げを要求できる
- 賃貸人(オーナー) → 家賃の値上げを要求できる
また、定期賃貸借契約の場合、賃料の減額をしない旨の特約も有効になります。ただし、定期賃貸借契約は、あらかじめ契約期間が決まっているため、契約中に賃料を増減させることは少なく、再契約時に賃料の見直しというのが一般的です。
普通賃貸借契約と定期賃貸借契約比較
比較項目 | 普通借家契約 | 定期借家契約 |
---|---|---|
契約成立の要件 | 口頭の契約も有効 | ・一定の契約期間を定める ・「契約の更新がないこととする」特約を定める ・公正証書等の書面により契約をする ・定期借家契約である旨を記載した書面を交付して説明する |
契約期間 | 自由 ・契約期間が定められていないもの ・契約期間が1年未満のもの ・法定更新が行われたもの は「期間の定めのない建物賃貸借」として扱われる |
自由 |
中途解約 | 原則できない 特約があれば賃借人(入居者)からの中途解約が可能 賃貸人(オーナー)からは、「正当の事由」があると認められる場合でなければ解約できない |
原則できない 特約があれば賃借人(入居者)からの中途解約が可能 |
更新 | 原則、更新される | 更新されない 継続を希望する場合は「再契約」が必要 |
賃料の増減額 請求 |
認められる 賃料減額請求権を排除するような特約は無効 |
認められる 賃料減額請求権を排除するような特約も有効 |
不動産リースバック業者の普通賃貸借契約
不動産リースバック業者で普通賃貸借契約を採用している場合は
つまり、退去してもらって、不動産の売却で利益を出すのではなく、長く住んでもらって家賃収入で利益を上げたいと不動産リースバック業者が考えていることになります。
そうなると
→ 家賃(リース料)は高めに設定される
ことになります。
不動産リースバック業者の普通賃貸借契約を選ぶメリット
- 継続して住みたい場合は、拒否されることがない
- 家賃の値上げなどの交渉を受ける可能性が低い
- 再契約などの手間がない
不動産リースバック業者の普通賃貸借契約を選ぶデメリット
- 家賃(リース料)が定期賃貸借契約よりも高くなる可能性がある
不動産リースバック業者の定期賃貸借契約
不動産リースバック業者で定期賃貸借契約採用している場合は
つまり、退去してもらって、建物を解体した上で、土地を売却し、利益を出したいと考えているのです。
そうなると
→ 家賃(リース料)は低めに設定される
ことになります。
しかし、同時に
退去圧力が高くなる
ことになります。
早く出ていって欲しいのですから、定期賃貸借契約の再契約時に
- 今までよりも家賃が高く設定される
- 高い家賃に同意しなければ、再契約ができないので退去しなければならなくなる
など、不利益を被る可能性が出てきます。
不動産リースバック業者の定期賃貸借契約を選ぶメリット
- 家賃(リース料)が普通賃貸借契約よりも安くなる可能性がある
不動産リースバック業者の定期賃貸借契約を選ぶデメリット
- 再契約をしなければならない
- 再契約時に借入条件が悪くなる可能性がある
- 再契約の条件に同意ができなければ、退去しなければならない
- 再契約なしという不動産リースバック業者もある
主要な不動産リースバック業者の賃貸借契約の状況
セゾンファンデックス/リースバック
上場 | 非上場※セゾングループ |
対応エリア | 全国 |
実績 | - |
査定スピード | 最短即日 |
資金化までの日数 | 最短2週間 |
査定・審査手数料 | 0円 |
事務手数料 | - |
査定額 | - |
設定賃料(リース料) | - |
年齢 | 20歳以上 |
保証人 | 原則不要 |
SBIスマイル/ずっと住まいる
上場 | 非上場※SBIグループ |
対応エリア | 全国 |
実績 | - |
査定スピード | 仮査定は最短即日/正式査定は、2営業日~3営業日 |
資金化までの日数 | 2週間~1カ月前後 |
査定・審査手数料 | 0円 |
事務手数料 | 0円 |
査定額 | - |
設定賃料(リース料) | - |
年齢 | - |
保証人 | - |
インテリックス/あんばい
上場 | 東証一部上場 |
対応エリア | 全国 |
実績 | 累計20,000戸以上のリノベーション住宅 施工・販売実績 |
査定スピード | 査定依頼から1週間~10日 |
資金化までの日数 | 半月~1カ月前後 |
査定・審査手数料 | 0円 |
事務手数料 | - |
査定額 | - |
設定賃料(リース料) | 周辺の家賃相場、お客様の支払可能額を考慮して設定 |
年齢 | 20歳以上 |
保証人 | 不要 |
ミライエ/リースバック
上場 | 非上場 |
対応エリア | 北海道・東北・関東・中部 |
実績 | - |
査定スピード | 最短即日~1週間 |
資金化までの日数 | 1カ月以内 |
査定・審査手数料 | 0円 |
事務手数料 | - |
査定額 | - |
設定賃料(リース料) | - |
年齢 | - |
保証人 | - |
一建設/リースバックプラス
上場 | 非上場※東証一部上場飯田グループホールディングスの子会社 |
対応エリア | 全国 |
実績 | 分譲住宅販売戸数日本一の飯田グループホールディングス |
査定スピード | 1日~3日 |
資金化までの日数 | 最短2週間 |
査定・審査手数料 | 0円 |
事務手数料 | - |
査定額 | - |
設定賃料(リース料) | ※定期借家契約の場合は、1年目家賃無料 |
年齢 | 20歳以上 |
保証人 | 不要 |
普通賃貸借契約
不動産リースバックでは、普通賃貸借契約と定期賃貸借契約のどちらを選ぶべきか?
長期間、不動産リースバックを利用したご自宅に住み続けたい方
→ 普通賃貸借契約の不動産リースバック業者がおすすめ
長く住み続けたいのであれば、契約が自動的に更新され、自分から「中途解約」を言いださなければ、ずっと住み続けることができる「普通賃貸借契約」がおすすめです。
「普通賃貸借契約」の方が、賃借人(入居者)に有利になっている契約なのです。
短期間の不動産リースバック利用で「退去」「買戻し」を検討されている方
→ 定期賃貸借契約の不動産リースバック業者がおすすめ
定期賃貸借契約の場合は、契約期間終了後に再契約になり、再契約の条件がどうなるのかがわからない点がデメリットです。しかし、はじめに設定される家賃は、普通賃貸借契約よりも安くなる可能性が高く、1回目の契約終了までに「退去」「買戻し」を検討されている方にとっては、普通賃貸借契約よりも、定期賃貸借契約の方が都合が良いのです。
例:一建設/リースバックプラス
標準プラン(普通賃貸借契約)
その他の特徴として
- 一建設が持つ建売住宅の在庫への住み替えがリースバックと同条件で可能
- 建売住宅へ住み替え場合、建売住宅の購入価格が徐々に下がっていく
定期プラン(定期賃貸借契約)
その他の特徴として
- 1年目の家賃が無料
- 売却時に当面ご不要な資金を預けることで、家賃を最大50%減額できる
上場 | 非上場※東証一部上場飯田グループホールディングスの子会社 |
対応エリア | 全国 |
実績 | 分譲住宅販売戸数日本一の飯田グループホールディングス |
査定スピード | 1日~3日 |
資金化までの日数 | 最短2週間 |
査定・審査手数料 | 0円 |
事務手数料 | - |
査定額 | - |
設定賃料(リース料) | ※定期借家契約の場合は、1年目家賃無料 |
年齢 | 20歳以上 |
保証人 | 不要 |
一建設/リースバックプラスは、不動産リースバック業者の中でも、新しいサービス設計で、普通賃貸借契約と定期賃貸借契約の両方のプランを用意しています。
プランごとの特徴も
- 長期に住む方 → 普通賃貸借契約
- 短期で住む方 → 定期賃貸借契約
に合わせた、サービス設計となっています。
不動産リースバックの普通賃貸借契約と定期賃貸借契約のよくある質問
不動産リースバック業者に値上げを要求されたら、拒否できるのか?
普通賃貸借契約の場合は、拒否できます。
あきらかに周辺相場が上昇していて、周辺相場よりも著しく安い家賃である場合など、裁判所が認めた場合は、家賃が値上げされる可能性はありますが、基本的には、妥当性があきらかでないと値上げが認められないことが多いです。
また、普通賃貸借契約の場合は、家賃の値上げを拒否しても「退去」を求められるものではないので、安心して拒否することができます。
定期賃貸借契約の再契約は、拒否できません。
定期賃貸借契約の契約中の値上げであれば、拒否も可能ですが、契約期間が終了し、再契約するときに家賃が値上げされた契約を提示された場合には、「拒否 = 契約しない = 退去」という選択肢になってしまいます。
不動産リースバック業者との契約方法は、指定できないの?
できません。
不動産リースバック業者が、どの賃貸借契約を採用するのかは、経営方針によって決まっています。
定期賃貸借契約にするのか、普通賃貸借契約にするのか、で会社の経営数値も変わってしまうからです。小規模な不動産リースバック業者であれば、こちらの要望に応じてくれる可能性もありますが、大企業、大企業グループの不動産リースバック業者では、まず契約方法の変更は、応じてもらえないと思います。
まとめ
不動産リースバックの普通賃貸借契約と定期賃貸借契約の違いは
- 契約期間の違い
- 更新方法の違い
- 中途解約の違い
- 家賃の違い
- 家賃の値上げの可能性
等が挙げられます。
どちらかが明らかに有利というわけではありませんが
- 長期に住む方 → 普通賃貸借契約
- 短期で住む方 → 定期賃貸借契約
をおすすめします。
「不動産リースバックの定期賃貸借契約とは何ですか?」
「不動産リースバックの普通賃貸借契約と定期賃貸借契約の違いは何ですか?」