不動産リースバックと通常の不動産売却を徹底比較。どちらを選ぶべき?

man
「不動産リースバックと通常の不動産売却は何が違うのですか?」
「不動産リースバックと通常の不動産売却のメリットデメリットを教えてください。」
「私は、不動産リースバックと通常の不動産売却のどちらを選ぶべきですか?」

マイホームを持っていて、資金が必要になる状況では「不動産リースバック」と「通常の不動産売却」が選択肢に上がることが少なくありません。では、不動産リースバックと通常の不動産売却は何が違うのか?どちらを選ぶべきなのか?を比較しながら、丁寧に解説します。

不動産リースバックと通常の不動産売却の仕組み

不動産リースバックとは

マイホームをリースバック業者に売却して、売却金を受け取り、その後、リースバック業者から元自宅を賃貸契約で借りるサービスのこと

を言います。

売却して、資金調達をしながらも、マイホームに住み続けることができるサービス

です。

不動産リースバックの特徴

  • 所有権は、リースバック業者に移る
  • 住宅ローンの残債よりも、リースバック業者の買取査定が高くないと利用できない
  • 利用時に、売却金額が手に入る
  • 売却金額は、市場価格の5割~7割が相場
  • 利用後は、賃貸契約で元自宅に住み続ける
  • 利用後は、家賃の支払いが発生する
  • 利用後は、所有権がなくなるため、固定資産税や保険料(火災保険・地震保険・家財保険)、修繕費の負担が不要になる
  • 買戻し(再購入)ができる

通常の不動産売却とは

マイホームを不動産会社に依頼して売却すること

を言います。

シンプルな売買であり、不動産会社に売却を依頼すると、HOME’SやSUUMOに掲載され、買い手を見つけて、売却する形となります。

通常の不動産売却の特徴

  • 市場価格で売却できる
  • 所有権は、買い手に移る
  • 売却希望額をこちらから指定できる
  • 売却希望額と市場価格にズレがあると買い手が見つかるまでに時間がかかる
  • 売却後は、買戻しができない

不動産リースバックと通常の不動産売却比較

比較項目 リースバック リバースモーゲージ
利用者 持ち家を持っている方で、住宅ローンの残債よりも物件の評価額が高い方 持ち家を持っている方で、住宅ローンの残債よりも物件の評価額が高い方
一定の年齢以上の方
※その他収入条件があるケースがある
資金調達可能額 物件の評価額の5割~7割 物件の評価額の7割~8割
資金調達方法 売却時に一括受取 借入時に一括借入
カードローンで自由なタイミングで借入
年金タイプで毎月一定額を借入
契約期間 売却時のみ売買契約
その後は賃貸契約が2年ごとに更新
終身
物件の所有権 所有権なし
リースバック業者に移行
所有権あり
利用後の返済 家賃の支払いが発生 ローンの利息返済が発生
死亡時に全額の一括返済が必要
利用後の選択肢 住み続ける
退去する
買い戻す(再購入する)
死亡時に一括返済
担保の任意売却による返済
配偶者による借り換え
相続人による返済
審査 甘い やや甘い
リースバックよりは厳しい設定
資金使途 自由 自由
※事業性資金、投資資金を除く
提供主体 リースバック業者(大手企業が多い) 銀行
諸費用 事務手数料
不動産仲介手数料
登記費用
印紙税
事務手数料
担保管理料
登記費用
印紙税
利用後、負担する費用 家賃(リース料) 利払い型の場合はローン返済
固定資産税
火災保険料、地震保険料、家財保険料
修繕費
価格下落リスク なし あり
金利変動リスク なし
※家賃の見直しリスクあり
あり

不動産リースバックと通常の不動産売却の大きな違い

違い1.売却後に住み続けられるかどうか?の違い

不動産リースバックの特徴は

売却した自宅に住み続けられること

です。

契約形態は

所有者として住む → 賃貸人として住む

に変わるのですが

実体としては

自宅に住む → 元自宅に住む

ので、何も変わりません。

自宅に住み続けられるメリット

  • 家族、親戚、ご近所に売却したことをばれずに済む
  • 愛着のある家に住み続けられる
  • 愛着のある町に住み続けられる
  • 引っ越しの必要性がない
  • 転勤、転校の必要性がない
  • 友達や仲の良いご近所との関係が変わらない

などがあります。

通常の不動産売却の場合は

売却したら、賃貸で借りることはほぼ不可能

です。

基本的に購入する人は

  • 自分で住む
  • 賃借人を探す
  • リノベーション(事務所や民泊)などを行う

など、自分の好きなように運用します。

普通に一般賃貸を考えている方で、売却時に住み続けられるように交渉すれば、賃貸で借りることもできなくはありませんが、可能性は低いと考えておきましょう。

「売却後に住み続けられるかどうか?」が不動産リースバックと、通常の不動産売却の最大の違いと言えます。

違い2.売却価格の違い

通常の不動産売却:市場価格の100%で売却可能
不動産リースバック:市場価格の50%~70%で売却可能

という違いがあります。

なぜ、このような違いがあるかというと

通常の不動産売却の場合は、不動産会社に売却を依頼すると、依頼された不動産会社がHOME’SやSUUMOなどのポータルサイトや店頭、チラシなどで告知し、買い手を見つけて、売却を成立させる手続きとなります。

不動産ポータルサイトなどで掲載されれば、不動産市場に情報が公開されることになるため、市場価格で売却することができます。

市場価格とは
「需要」と「供給」のバランスが一致する価格のことであり、同じ地域、同じ間取り、同じ広さ、同じ築年数、同じ駅からの距離の物件であれば、近い価格で売却できる計算になります。

不動産リースバックの場合は、リースバック業者が買取を行うことになります。

不動産リースバックの場合、リースバック業者は

  • 売却した方に貸さなければならない(物件を自由に使えない)
  • 買戻しを希望されたら応じなければならない(物件を手放すことになる)

という制約がある状態で購入します。

制約がある分、買取額は市場価格よりも安くならざるを得ないのです。

  • 不動産リースバックの相場:市場価格の50%~70%

です。

不動産リースバック業者によっても、この割合の中で、かなり買取額に差が出てきます。

違い3.買戻しの違い

不動産リースバック:買戻しが可能
通常の不動産売却:買戻しがほぼ不可能

という違いがあります。

不動産リースバックの場合は、リースバック業者と契約するときに「買戻し(再購入)」ができる契約をするのが一般的です。売却時点で「買戻し(再購入)価格」も提示されるのです。

不動産リースバックを利用する大半の方は

man
「今は、一時的にお金がないから、リースバックで愛着のある自宅を売却するけど、まとまったお金が貯まったら買い戻そう。」

と考えて、不動産リースバックを利用しているのです。

また、不動産リースバック業者の中には「売却額の一部」をプールしておいて、「買戻し(再購入)価格」に充当するような使い方も可能となっています。1,500万円で不動産リースバック業者が買い取ってくれるけど、300万円の資金しか必要ない方は、1,200万円分は不動産リースバック業者に預けておいて、「買戻し(再購入)価格」に充当することができるのです。

必要な金額だけにコントロールできるのも、不動産リースバックならではです。

「買戻し(再購入)価格」の違いはあっても、不動産リースバックであれば「「買戻し(再購入)」は可能になります。

通常の不動産売却の場合は「買戻し(再購入)」はほぼ不可能です。

  • 購入した方が売る可能性自体が非常に少ない
  • 購入した方が売るとしても不特定多数に売却を依頼するため、元自宅の所有者に売ってくれるとは限らない

ので、基本的に「買戻し(再購入)」はできないのです。

一度、不動産市場に流通してしまったら、よほどのことがないと、買戻しはできません。

違い4.売却までの期間の違い

不動産リースバックの場合は

不動産リースバック業者が査定して、契約して、入金するだけの手続きです。

  • こういう条件で査定する
  • こういう条件なら買い取れる

というのが、不動産リースバック業者の中で明確に決まってしまっているため、「買い取れる」「買い取れない」のジャッジも早く

  • リースバック申込から査定まで:最短3営業日
  • リースバック申込から契約・入金まで:最短1週間

というスピードで自宅の売却が可能になります。

通常の不動産売却の場合は

不特定多数の方に、売却希望条件をポータルサイトで提示し、希望者を募る方式

が一般的です。

買い手の方は、欲しい物件を複数比較しながら購入を決めるため

  • 相場よりも高い売却希望額 → 全然決まらない
  • 相場通りの売却希望額 → 4カ月~6カ月
  • 相場よりも安い売却希望額 → 1カ月~3カ月

ぐらいの時間がかかってしまうのです。

近しい近隣物件がなければ、とりあえず売却希望額で掲載し、反応がなければ、徐々に値下げして、折り合いの付く価格を探ることになります。

また、買い手が実需(自分が住むために買う)目的の方であった場合、一生で一度の買い物になるため、慎重に検討することになり、購入までに時間がかかってしまうのです。購入する条件が明確に決まっている不動産リースバック業者とはまったく違うスピード感になります。

すぐに資金が必要という方にとっては、不動産リースバックの方が早く売却できるため、都合が良いのです。

違い5.退去後の家賃負担が違う

売却後は

不動産リースバック:元自宅に賃貸として住む
通常の不動産売却:賃貸物件を探し、住む

ことになるかと思います。

ここで大きな違いは「家賃」です。

通常の賃貸物件の家賃というのは、周辺の家賃相場によって決まってきます。

広さ、間取り、駅からの距離、築年数などが同じ物件は、同じような家賃設定にしないと、借りる人があらわれないため、同じような家賃設定となるのです。

不動産リースバックの家賃というのは、不動産リースバック業者の投資効率(期待利回り)で決まってきます。

不動産リースバック業者から見た場合に

「売却額」を何年で投資回収するのか? = 期待利回り

で家賃が決定されることになります。

  • 期待利回り:10% → 家賃 = 売却額 / 120カ月分
  • 期待利回り:8% → 家賃 = 売却額 / 150カ月分
  • 期待利回り:6% → 家賃 = 売却額 / 200カ月分

となります。

1,200万円で不動産リースバック業者に売却した場合

  • 期待利回り:10%の業者 → 家賃 = 売却額 / 120カ月分 = 10万円
  • 期待利回り:8%の業者 → 家賃 = 売却額 / 150カ月分 = 8万円
  • 期待利回り:6%の業者 → 家賃 = 売却額 / 200カ月分 = 6万円

となります。

周辺の市場価格とは異なる家賃(リース料)の決め方になるため、近くの同じ条件の賃貸物件を借りるよりも「割高」になるケースが多いのです。

売却後に賃貸物件に住むときのコストは、通常の不動産売却をして、別の賃貸物件を借りる方が安くなるということです。

また、賃貸契約にも違いがあります。

不動産リースバック:定期借家契約が多い(不動産リースバック業者に有利)
通常の賃貸契約:普通賃貸借契約が多い(賃借人に有利)

です。

定期賃貸借契約だと「期間が決まっていて、満了時に再契約する必要がある」「家賃減額請求権がない」「立ち退き料を請求できない」など、デメリットも多いので注意が必要です。普通賃貸借契約の方が借主の権利が守られているものが多く、通常の不動産売却をして、そのあと賃貸物件を借りる方が権利的には有利になります。

不動産リースバックと通常の不動産売却を比較するときは、同時平行で検討すべき!

不動産リースバックと不動産売却には

  1. 違い1.売却後に住み続けられるかどうか?の違い
  2. 違い2.売却価格の違い
  3. 違い3.買戻しの違い
  4. 違い4.売却までの期間の違い
  5. 違い5.退去後の家賃負担が違う

という違いがあります。

簡単に言えば

  • 自宅に住み続けられて、買戻しもできるけれども、売却額が安くなってしまう不動産リースバック
  • 自宅に住み続けられないけれども、売却額が高くなる通常の不動産売却

と言えます。

teacher
この段階で「不動産リースバックか?通常の不動産売却か?」を選ぼうとしても、売却額が出ていないと「どのくらい売却額の差があるのか」がわからず、選ぶことができないのです。

もっとも、良い方法は

  • 不動産リースバック業者複数社に見積もりを取る
  • 不動産査定サイトで「通常の不動産売却」の売却査定額を知る

ということを行った上で

  • 不動産リースバックをした場合の売却額
  • 通常の不動産売却をした場合の売却額

を明確に出したうえで、前述した違いを比較して、「不動産リースバック」「通常の不動産売却」のどちらを利用するのか?選ぶべきなのです。

teacher
売却額が決まらない段階で、どちらかに絞ろうとしても難しいため、まずは「売却金額を明確にする」ことで、選びやすくなるのです。
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