代位弁済後にリースバックはできる?抵当権を外せるかが分かれ目。競売になったときに残る6か月

保証会社から代位弁済の通知が届いたあとでも、自宅に住み続ける方法を探すことはできます。ただし、この段階でリースバックが成立するかどうかは、売却価格や業者の姿勢より前に、登記に付いている抵当権を外せるかどうかで決まります。外せないまま賃借人になると、その賃借権は競売で効力を失い、手元に残るのは民法395条の6か月だけになります。どこで何が決まるのかを、条文の順に並べます。

この段階で先に確かめること

代位弁済をした保証会社は、民法499条により債権者に代位し、501条1項によって抵当権を含む一切の権利を行使できます。相手が銀行から保証会社に替わっただけではありません。

リースバックの前提は抵当権を抹消できることです。売却代金で債権を完済できないなら、債権者の同意を取り付ける交渉が必要になります。

抵当権に対抗できない賃貸借は、競売の売却により効力を失います(民事執行法59条2項)。

その場合に残るのは、買受けの時から6か月の引渡し猶予だけです(民法395条1項)。しかも使用の対価を払わなければ猶予は外れます(同条2項)。

代位弁済で、相手と請求の形が変わる

住宅ローンの返済が滞ると、契約で定めた一定の期間を過ぎたところで期限の利益を失います。民法137条は破産手続開始の決定を受けたときなど法律上の喪失事由を挙げていますが、実際の住宅ローンでは、これに加えて滞納があった場合の喪失が契約条項として置かれているのが通常です。期限の利益を失うと、残りを分割で払っていくという前提そのものが無くなります。

そのあと保証会社が銀行へ残債を支払います。これが代位弁済です。民法499条は「債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する」と定め、501条1項は、代位した者が債権の効力および担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使できるとしています。つまり銀行が持っていた抵当権は消えず、保証会社の手に渡ります。委託を受けた保証人であれば、民法459条1項により、支出した財産の額について主たる債務者に対する求償権も持ちます。

図1:代位弁済のあと、誰が何を持っているのか

STEP 1

期限の利益の喪失

滞納が続き、契約で定めた条件に当たると、残債を分割で払う前提が失われる。民法137条は法律上の喪失事由を定めており、住宅ローンではこれに加えて約定の喪失事由が置かれるのが通常。

STEP 2

保証会社が銀行へ代位弁済

保証会社が残債を支払う。民法499条により、保証会社は債権者に代位する。

STEP 3

抵当権が保証会社へ移る

民法501条1項により、代位した者は債権の効力および担保として債権者が有していた一切の権利を行使できる。抵当権はここに含まれる。あわせて民法459条1項の求償権を持つ。

STEP 4

抵当権の実行(担保不動産競売)

回収の見込みが立たないと判断されれば、抵当権に基づく競売が申し立てられる。担保不動産競売には、民事執行法188条により不動産執行の規定が準用される。

リースバックが成立するかどうかは、抵当権を外せるかで決まる

抵当権は、被担保債権が消えたときに初めて消えます。買主となる事業者から見れば、抵当権が付いたままの建物を買うことは、いつ競売にかけられるか分からない物件を買うことと同じです。そのため、売買の実行と同時に抵当権を抹消できることが条件になります。

売却代金が債権額を上回るなら、その場で完済して抹消できます。問題は下回る場合です。抵当権者が抹消に応じる義務はありません。残った債権をどう扱うかを含めて合意を取り付ける必要があり、これは任意売却の交渉と同じ場所に立つことを意味します。リースバックは、その任意売却の買主が「売主に貸し戻す事業者」であるという一つの形として位置づけられます。

売却代金と債権額の関係 抵当権の抹消 リースバックとして成立するか
代金が債権額を上回る 完済によって抹消できる 賃貸借の条件が折り合えば成立しうる
代金が債権額に届かない 抵当権者の同意が要る。応じる義務はない 同意が取れた範囲でのみ成立する。任意売却の交渉と一体で進む
同意が取れない 抹消できない 成立しない。抵当権付きのまま賃借人になっても競売で賃借権が失効する
すでに競売の開始決定がある 取下げには申立債権者の判断が要る 代金納付までの期間内に合意が成立した場合に限られる

残債と抵当権の関係をひととおり見るにはリースバックと抵当権、任意売却そのものの手続は任意売却とはで扱っています。

抵当権が残ったまま賃借人になると、競売で賃借権は失効する

「抵当権が付いたままでも貸します」という提案は、法律の上では非常に弱い立場を受け入れることを意味します。民事執行法59条1項により、不動産の上に存する抵当権は売却によって消滅します。そして同条2項は、消滅する権利を有する者や差押債権者に対抗することができない不動産に係る権利の取得は、売却によりその効力を失うと定めています。抵当権の設定登記より後に生まれた賃借権は、ここでいう「対抗することができない権利」に当たります。

買受人は代金を納付した時に不動産を取得します(民事執行法79条)。そのうえで裁判所へ引渡命令を申し立てることができます(同法83条1項)。事件の記録上、買受人に対抗できる権原で占有していると認められる者は例外ですが、抵当権に後れる賃借人はこれに当たりません。

資料:民法395条(抵当建物使用者の引渡しの猶予)。買受けの時から6か月を経過するまでは引き渡すことを要しないと定められている
e-Gov法令検索で表示した民法第395条の画面キャプチャ。抵当建物使用者の引渡しの猶予として六箇月と書かれている

そこで残るのが民法395条です。抵当権者に対抗することができない賃貸借によって建物を使用している者のうち、競売手続の開始前から使用している者などは、競売における買受人の買受けの時から6か月を経過するまで、建物を買受人に引き渡すことを要しません。ただし第2項に条件が付いています。買受けの時より後に建物を使用したことの対価について、買受人が相当の期間を定めて1か月分以上の支払を催告し、その期間内に履行がないときは、猶予の規定は適用されません。家賃に相当する額を払わなければ、6か月は守られないということです。

図2:6か月の猶予が効く場面と、効かない場面

猶予が効く

競売手続の開始前から建物を使用または収益していた(民法395条1項1号)。

強制管理または担保不動産収益執行の管理人が、競売手続の開始後にした賃貸借で使用している(同項2号)。

買受けの後の使用の対価を、催告を受けた期間内に支払っている。

猶予が効かない

買受人から1か月分以上の対価の支払を催告され、相当の期間内に払わなかった(同条2項)。

そもそも6か月を過ぎた。猶予はこの期間で終わる。

建物ではなく土地だけの賃貸借。395条は抵当権の目的である建物の使用者についての規定。

抵当権を外して売った場合でも、買主が新たに設定する抵当権との先後は確認してください。建物の賃貸借は引渡しがあれば登記がなくても対抗力を持ちます(借地借家法31条)。一方、買主が購入資金を借りて抵当権を設定すれば、その登記と引渡しのどちらが先かで、将来の競売における立場が変わります。契約の前後に登記事項証明書を取り、抵当権の設定の有無と日付を確かめておくのが確実です。

競売の手続が始まってからできること

開始決定が出たあとでも、代金が納付されるまでは所有権は移りません。その間に合意が成立すれば、申立てが取り下げられる余地はあります。ただし取下げの判断をするのは申立てをした債権者であり、居住者の希望で決まるものではありません。時間の見通しを持つために、手続のどの段階にいるのかを確認してください。

資料:民事執行法83条(引渡命令)。2項で、代金納付日から6か月、民法395条1項の抵当建物使用者が占有していた建物では9か月と定められている
e-Gov法令検索で表示した民事執行法第83条の画面キャプチャ。引渡命令の申立期間が六月、抵当建物使用者が占有していた建物では九月と書かれている
段階 法律上の位置づけ この段階で現実に取りうる動き
代位弁済の通知が届いた 保証会社が民法499条により債権者に代位した状態 債権額と遅延損害金を書面で確認する。抵当権の移転登記の有無を登記事項証明書で見る
競売の開始決定・差押えの登記 担保不動産競売の手続が始まった状態(民事執行法188条で不動産執行の規定を準用) 売却基準価額が決まる前に、抵当権者と抹消の条件を詰める
入札期間・開札 売却の手続が進行中 合意が成立すれば取下げの余地は残るが、判断するのは申立債権者
代金納付 買受人が所有権を取得する(民事執行法79条)。抵当権は消滅し、対抗できない賃借権も効力を失う(同法59条1項・2項) 民法395条1項の6か月の猶予。買受人への対価の支払を怠らない(同条2項)
引渡命令 買受人の申立てにより裁判所が引渡しを命じる(民事執行法83条1項) 申立ては代金納付日から6か月まで。395条1項の抵当建物使用者が占有していた建物では9か月まで(同条2項)

リースバック・任意売却・競売はどこが違うのか

三つは対立する選択肢というより、同じ一本の流れのどこで止まるかの違いです。競売は裁判所が主導して売却まで進める手続で、居住者に選択の余地はほとんど残りません。任意売却は、抵当権者の同意を得て通常の売買として売る形です。リースバックは、その任意売却の買主が売主へ貸し戻す事業者である場合を指します。したがって、代位弁済後のリースバックは「任意売却の一形態」として動きます。

比べる点 競売 任意売却 任意売却としてのリースバック
誰が売却を進めるか 裁判所(民事執行法の手続) 所有者と債権者の合意にもとづく通常の売買 同左。買主が貸し戻しに応じる事業者である場合
抵当権の扱い 売却により消滅する(59条1項) 抵当権者の同意を得て抹消する 同左。抹消できることが前提
売却後の居住 買受人の判断。対抗できない賃借人には395条の6か月のみ 原則として引渡し 賃貸借契約を結んで住み続ける
賃料の定め方 買受人との交渉。定まった仕組みはない 該当しない 売買と同時に結ぶ賃貸借契約で決める
残った債務 配当で回収しきれない分は残る 債権者との協議で扱いを決める 同左。賃料の支払能力もあわせて見られる

手前の段階で選べる手を順番に見るなら住宅ローンが払えないときの選択肢、競売との違いはリースバックと競売の違いにまとめています。売れる状態かどうかの確認は家のリースバックは、その家を売れる状態かで決まるを参照してください。

相談する先を分ける

この段階で必要になるのは、不動産の売買の話と、債務をどう扱うかの話の両方です。窓口はそれぞれ別にあります。債権者との返済条件の話し合いは債務整理の領域で、弁護士や司法書士が扱います。不動産取引の適法性に関する苦情は宅地建物取引業の保証協会や免許行政庁が窓口です。どこへ持ち込むかの整理はリースバックの相談先はどこ?にまとめました。リースバック後に賃料を払えなくなったときに何が起きるかはリースバックの家賃を滞納するとどうなる?で条文まで確認できます。

よくある質問

代位弁済のあとでもリースバックはできますか

抵当権を抹消できるかどうかで決まります。売却代金で債権を完済できるなら抹消できます。届かない場合は、代位した保証会社が抹消に応じるかどうかの交渉になり、任意売却と同じ枠組みで進みます。

抵当権が付いたままでも貸してくれる会社があると言われました

抵当権が残っている状態の賃貸借は、その抵当権に対抗できません。競売になれば売却により賃借権は効力を失います(民事執行法59条2項)。残るのは民法395条1項の6か月の引渡し猶予で、しかも買受人から催告された対価を払わなければ猶予は適用されません(同条2項)。

競売の開始決定が出たあとでも間に合いますか

買受人が代金を納付するまでは所有権は移りません。その間に抵当権者と合意ができれば、申立てが取り下げられる余地はあります。ただし取下げを判断するのは申立てをした債権者です。

保証会社は代位弁済のあと、どこまで請求できますか

委託を受けた保証人であれば、民法459条1項により、支出した財産の額について求償できます。あわせて民法501条1項により、もとの債権者が持っていた担保としての権利、つまり抵当権も行使できます。

6か月の猶予のあいだ、家賃は払うのですか

民法395条2項は、買受けの時より後に建物を使用したことの対価について定めています。買受人が相当の期間を定めて1か月分以上の支払を催告し、その期間内に履行がないときは、猶予の規定は適用されません。支払を続けることが猶予を保つ条件になります。

引渡命令はいつまで申し立てられますか

民事執行法83条2項により、買受人は代金を納付した日から6か月を経過すると申立てができません。買受けの時に民法395条1項の抵当建物使用者が占有していた建物については9か月とされています。

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